酒と蘊蓄の日々

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オバマ政権は米自動車産業を何処へ導くのか? (その1)

オバマ大統領は世界的にもそうですが、日本のメディアからもことごとく美化され、英雄視されてきました。が、これまでにも当blogで何度か取り上げてきましたように、彼はメディアが持ち上げるような理想の政治家などではなく、表と裏の顔を使い分け、利権を私的に振り回す何処にでもいるようなタチの悪い政治家であるのは間違いなさそうです。今般のGMやクライスラーの再建計画においても彼の独善的な行動が目立っています。

ご存じのように、昨日(6月10日)クライスラーの優良資産の売却が完了し、フィアットが経営の主導権を担う「新生クライスラー」が発足しました。この売却手続きが完了するまで連邦破産法の適用申請から1ヶ月余りを要したのは、最高裁判所へその差し止めが請求されていたからです。

インディアナ州の年金基金もその一つで、これを預かるマードック財務担当官は「有担保債権者への弁済率が低すぎる」として新会社への資産売却の差し止めを求めました。つまり、同州の年金基金はクライスラーの大口債権者で、政府が提示した弁済率28%、即ち債権額1ドルに対する弁済(今回のケースでは新会社の株式による補填)は僅か28セントですから、これには納得できないとしたわけですね。同様の債権者は沢山おり、インディアナ州の年金基金以外からも300件以上の差し止めが請求されていました。

クライスラー本社
クライスラー本社ビル

さらに問題なのは、彼ら有担保債権者に対する弁済率があの有様なのに、担保権のない劣後債権者であるUAW(全米自動車労働組合)に対する弁済率は遙かに高い43%となっているところです。これは誰がどう考えても滅茶苦茶です。こんな理不尽な依怙贔屓は常識的に考えればあり得ないことです。が、UAWはオバマ政権にとって非常に重要な支持基盤であるという事実を認識すれば、こうした処置に至ったのは何故かという疑問は氷解するでしょう。

クライスラーの債権者たちが資産売却の差し止めを請求したのは当然のことで、それを受けた最高裁はこれまで留保を命じ、判断を延期してきました。が、今月9日に売却を承認したことから翌日に新生クライスラーの発足となったわけです。300件以上にもおよぶ差し止め請求が棄却されたのは、ソトマイヨール最高裁判事がオバマ政権によって指名された人物だったことと関係があったのか否か、私には解りませんが。

私が個人的に許し難いと思ったのは、オバマ大統領本人の発言です。上述のように有担保債権者に対して非常に低い弁済率で債務削減を求めたわけですが、それに応じない債権者に対して彼は「反国家的な態度を取った投資家」と言ってのけました。

普通に考えれば債権者に対して「借金を棒引きにしろ」ということ自体が非常に厚かましいハナシで、それに応じないのは当たり前のことです。そこを説得するために様々な取引材料を提示して理解を得ようと務めるのが常識的な対応というものです。しかし、オバマ政権は自分たちの支持基盤を優遇し、本来保護されるべき債権者を冷遇しました。そのうえ債務削減に応じなかった人たちは反逆者のように罵られたわけです。

彼は大統領選のときも皆保険制度の導入など手厚い社会保障の実現を公約し、それに向けた財源として企業や高所得者層の増税などを掲げました。当然、増税の対象とされた人たちから批判の声が上がったわけですが、彼は「増税に反対する人たちは利己的」と一蹴しました。要するに、オバマ大統領は以前から自分の意に沿わない人たちを「悪」と決めつける傾向があったということですね。まるで独裁者のようです。

こうしてクライスラーの再建計画はオバマ政権の支持基盤をあからさまに優遇する一方、インディアナ州の年金基金に大きなダメージを与えても、同様に多くの債権者の財産が損なわれても、これを顧みることはなく、強引な手法で独善的に進められることになったのです。

(つづく)

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