酒と蘊蓄の日々

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誠実な科学者は仮説で断言などしない

昨日(6月21日)、NHKでAM10時からPM5時までの7時間を割いて(途中にニュースなどを挟んでいますが)たっぷりと放送していた『SAVE THE FUTURE』という番組ですが、この種の番組は陳腐な温暖化脅威論を一方的に押しつけ、実効性の乏しい似非エコライフを推奨するというのが常です。なので、見る気などさらさらなかったのですが、何となくザッピングしていたら「日本のアル・ゴア」気取りがすっかり板についた江守正多氏(国立環境研究所地球環境研究センター温暖化リスク評価研究室室長)が地球温暖化問題についていつもの脅迫めいたレクチャーをしていたので、冷やかしでそこだけ見ることにしました。

彼はここ何年か地球の平均気温が下降しているという点について触れていましたが、これは小さな波の一つに過ぎず、全体の流れとしては上昇傾向にあるといった旨を説明し、「温暖化が止まったわけではありません」と確実な根拠も示さずに断言していました。このとき彼が使っていたグラフも1960年代以降のもので、1940年代から1970年代にかけて30年くらい気温が下降を続けていた様子が解らないようなデータを切り出していたのが如何にも作為的で、似非科学がよくやるパターンにはまっていましたね。

また、彼はIPCCが第4次評価報告書で示した予測を抜粋して説明していましたが、これを見ていてもマトモな科学者とは思えない発言が印象的でした。

地上昇温の予測
番組で使われていたグラフと全く同じものではありませんが、
内容としてはこれと同等のものが用いられていました。


地球温暖化の脅威を煽るためにメディアに露出するのも彼にとって重要な仕事ですから、彼が番組で使っていたような「最悪のシナリオ」による予測のグラフは気象庁のサイトにある『IPCC第4次評価報告書第1作業部会報告書政策決定者向け要約』(←リンク先はPDFです)にも載っていません。なので、上図は私が別の素材から合成したグラフになります。

彼は上図の青い線が示している「B1シナリオ(持続発展型社会)」によるグラフを指して「1度から2度程度の上昇なら場所によっては良いこともあるかも知れませんが」と述べ、上図の赤い線が示している「A1F1シナリオ(高度成長型社会)」のグラフを指してこう続けました。「これが4度とか6度になったら悪いことしか起こりません。」

科学者という立場にあって誠実な仕事をしている人は、実験などで証明されない限り、つまり仮説の段階において断言は避けるものです。「・・・であると考えられます」とか、「・・・となっていくものと推測されます」といった言い回しをするのが常識なんですね。しかし、彼はこの気候変動が人為的であるとする証明などなされていないにも関わらず、ことごとく断定的な物言いを繰り返していました。

以前、当blogでは『発掘!あるある大事典2』の捏造発覚から番組打ち切りを受けて朝日新聞の科学欄に掲載されたコラムをご紹介しました。このコラムで述べられていた科学哲学者(科学とは何ぞやという主題を掘り下げる専門家)である伊勢田哲治氏(名古屋大学情報科学研究科准教授)の談話の一部を再録します。

「科学と科学でないものの間には大きなグレーゾーンがあって、線を引こうとしても明確な線引きはできない。ただ『典型的な科学』は存在するし、反対に『典型的に科学でないもの』もあります」

――二つを分けるものは何でしょう。

「仮説の内容というよりは、仮説に対する態度が大きなファクターです。大した根拠のない仮説から研究を始める科学者はいます。科学者であれば単なる仮説として扱いますが、疑似科学をやっている人は、根拠がなくても確立しているかのように言い、不利な証拠が出てきても無視します」


江守氏は昨日の番組でも単なるコンピュータシミュレーションの結果でしかない仮説をあたかも事実であるかのように宣伝し、地球の平均気温が気温が4度以上上昇したらどうなるのか、あくまでも推測でしか語ることのできない領域を「悪いことしか起こりません。」と断言していました。これはおよそ真っ当な科学者のとる態度ではありません。

私も当blogで充分と言い難い根拠を示して語ることはよくありますが、その際には「あくまでも個人的な推測です」といった類の但し書きをしつこいくらい付してきました。中には自信がないからそうしているときもありますが、殆どの場合は「確証のないことを断定的に述べるべきではない」と考えているからです。

ま、私は科学者ではありませんし当blogも個人の趣味として完全非営利で運営しているだけですから、そこまで責任を感じる必要もないのでしょう。が、私のような素人でも守っているマナーを江守氏のような影響力のある立場で守れないのは大いに問題です。

科学者という立場でテレビという非常に影響力の大きなメディアを通じ、一般視聴者に向けた解説をするのであれば、断言して良いこととそうでないことをキチンとわきまえなければなりません。自分の支持する説が正しいと確信していても、証明されていないことはあくまでも仮説として扱い、断定的にそれを語ることは許されません。

また、彼は日経Ecolomyのコラム『人為起源CO2温暖化説は「正しい」か?』でこんなことを述べています。

懐疑論の中には科学的な認識が明らかに間違っていたり、不勉強だったり、決め付けだったり、言いがかりだったりする部分も多いものです。

 だからといって僕らがいちいち目くじらを立てて反論すると、一般の市民からは単なる水かけ論に見えてしまい「ああ、やっぱり温暖化はまだよくわかっていなくて、論争状態にあるのだなあ」と思われてしまう危険性があります。相手が間違っているのに五分五分の論争だと思われるとしたら、僕らにとっては反論するだけ損ですよね。だからといって沈黙していると、今度は「専門家は傲慢で、市民に説明しようという姿勢を見せない」といわれてしまうわけです。どうです、難しいでしょう。


もう滅茶苦茶ですね。そもそも、地球温暖化が人為的なのか否か、まだ論争状態であるのが現実です。彼らはIPCC等を中心にコンセンサスが固まっているかような演出をしていますが、科学的な決着などまだまだ全然ついていないのが実態で、本来であれば「ああ、やっぱり温暖化はまだよくわかっていなくて、論争状態にあるのだなあ」と世間一般にも広く認識されていなければならないのです。むしろ、彼らが人為的温暖化説を既成事実化しようとしていることのほうが遙かに危険です。

また、科学的に証明されている事実に対して間違った認識による異論がぶつけられても、議論の余地など一切ありません。「水掛け論」になるという状況は両者ともに科学的な確証が得られていない状態でしか起こり得ません。「相手が間違っているのに五分五分の論争だと思われる」ということは、どちらか一方でも科学的に疑いようのない裏付けがあればあり得ないことです。科学的に誤りのない確固たる裏付けを以て反論し、完全に論破してしまえば、それを見て「水掛け論」だと思ったり、「五分五分の論争」だと思う人など一般市民でもまずいないでしょう。

こうして見れば江守氏は科学者として失格であるのは明らかです。彼は政府が誘導したがっている危機管理の建前をプロパガンダするスポークスマンに過ぎず、科学者を名乗る資格などありません。

コメント

賛成

はじめまして。
いつも石黒さんの鋭い記事を、楽しく拝見しております。
以前から江守氏については私も同様の見方をしていました。
彼の著書も読みましたが、自己正当化の臭いがぷんぷんして、底の浅いものでしたね。
私も技術畑の者ですが、彼は一緒に仕事をしたくないと思うタイプNO.1ですね。

  • 2009/06/24(水) 12:55:23 |
  • URL |
  • hiro #i5O2Jkho
  • [ 編集]

hiroさん>

初めまして。

>自己正当化の臭い

昨年、ノーベル物理学賞を受賞された益川敏英氏が招かれ、その功績を紹介しながら学生の質問に答えてもらうといった趣向の番組が同じNHKで放送されていました。このとき、益川氏はこんなことを述べていました。

「科学というのは肯定のための否定の連続」

これは本文のほうでご紹介した科学哲学者・伊勢田氏の談話にもあった「反証あってこそ科学」という考え方と一致するものです。

チャールズ・ダーウィンもまた進化論を説いた自著『種の起源』で自説の難点を積極的に取り上げ、検証しようとしているところが科学者として極めて真摯な態度だったと思います。(もっとも、あの時代はキリスト教のドグマに反するこの種の著書を出版するには必要な防衛手段だったのかも知れませんけど。)

仮説は様々な反証に耐え抜いてこそ真実に近づけるものものであって、江守氏のように持説に都合の良いデータばかり並べ立て、異論を唱える人たちに対しては「懐疑派バスターズ」なるチームを作って異端扱いしようとするのは、およそ科学者のやることではありませんね。

若者の理科離れが悲観される昨今ですが、江守氏のように似非科学と何ら変わらない科学哲学が欠如した人物に科学者としての地位を与え、盛んにメディアに露出させることのほうがもっと悲観すべきことです。世間一般にはあたかも事実であるかのように認識されてしまった彼らの仮説が誤りだと解ったら、科学に対する信頼が大きく傷つくことになるでしょう。そうなれば理科離れはよりいっそう加速するハズです。

  • 2009/06/25(木) 00:53:02 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

嘗ては
待ち針の上に天使が何人乗れるか
激論した世界ですからねえ!!
エーテルと似てるかもしれませんし
今 起きてる事も 後数十年経ったら
どうなっているのか?

  • 2011/03/08(火) 06:46:40 |
  • URL |
  • 安 #-
  • [ 編集]

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