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ラルフ・ミラーの功績を無視するトヨタ (その1)

最初は「新型プリウスは弱点の克服に注力されたらしい」というタイトルで書き始めたのですが、余談としてプリウスのエンジンについて述べていたらいつもの悪い癖が出てしまって、本題よりも長くなりそうな勢いになってきました。そこで、とりあえずプリウスのエンジンが普通のエンジンと違うというところを別に纏めることにしました。

プリウスは高速道路の走行で燃費が悪化します。これは当blogでも以前から何度も触れてきましたし、一般にも広く知られていることだと思います。が、あくまでも「一般道の走行時と比べれば」のハナシです。これを取り違えて「プリウスは高速燃費が普通のクルマより悪い」と勘違いしている人も時々いるようです。

私の場合、状況にもよりますが、一般道で頑張って28~30km/Lくらい、少し意識するだけでも26km/L前後はいける(いずれもアイドリングが多くなりがちな冬場は除きます)のに対し、高速道路ではできるだけ大人しく走るといったことくらいしか頑張りようがありませんから、大抵はクルーズコントロールを使って流しているのですが、100km/h巡航で22km/L前後、首都高のように巡航速度が低いところで24km/L前後といったところでしょうか(コチラは渋滞でもない限りエンジンは停止しませんから、冬場でも悪化しません)。

2代目のプリウスの動力性能は常々2Lクラスとされてきましたから、普通の同クラスのクルマではこの領域までなかなか到達できないでしょう。ウチの社有車のパッソ(1000ccのほう)でも条件が良くて21km/Lくらいが良いところですし。これはプリウスの空力特性が優れているという部分もあるでしょう。が、一番効いているのはエンジンが普通のガソリンエンジンとは異なり、より熱効率の高い特殊なものを採用しているからだと思います。

ご存じのように、レシプロの内燃機関は燃料が燃える際の熱によって燃焼ガスが膨張する圧力をピストンで受け、これを動力として取り出します。一般的なガソリンエンジン(以下、オットーサイクル)は吸気・圧縮行程と膨張・排気行程のピストンストロークが等しく、圧縮比=膨張比となっています。充分な膨張比が得られないと燃焼ガスにまだ大きな圧力が残っていてもピストンが下死点に達して排気バルブが開いてしまい、充分にエネルギーを取り出すことができません。

膨張比を大きく取れればより多くの圧力を動力として取り出せますから、効率の改善が期待できます。しかしながら、オットーサイクルでは膨張比を大きくするとその分だけ圧縮比も大きくなってしまいます。圧縮比が大きくなり過ぎるとノッキングを引き起こしてしまいますから、ここが一つの壁になってしまうというわけですね。

そこで、ジェームズ・アトキンソンというイギリス人が1886年に吸気・圧縮行程より膨張・排気行程のピストンストロークを長くしたエンジンを発明しました。このアトキンソンサイクルは、圧縮比を適度に保ちながら、尚かつ大きな膨張比が得られますから、熱効率の改善が期待できるというわけです。

しかし、このアトキンソンサイクルにはデメリットも多く、結局普及しませんでした。最大の理由はピストンストロークを吸気・圧縮と膨張・排気とで変化させるため、クランク機構に加えてリンク機構を組み合わせ、構造が複雑になってしまったせいでしょう。(アトキンソンサイクルの動作はコチラのフラッシュアニメが解りやすくて良いと思います。)

アトキンソンサイクルエンジン

構造が複雑で信頼性の確保がよりシビアになり、高速回転に向かず、コンパクトに作るのが難しい上に部品点数も増えてしまうことから重量もコストもかさんでしまいます。また、オットーサイクルに比べると同クラスの吸気量のエンジンよりは有利でしょうが、同クラスの排気量のエンジンより出力が小さくなってしまうという点もネックになっていたでしょう。

これを改良したのがラルフ・ミラーというアメリカ人で、1947年に彼が発明したミラーサイクルは従来のオットーサイクルと同じ普通のクランク機構そのまま(つまりピストンストロークはそのまま)で、吸気バルブの遅閉じないし早閉じで実質的な吸気・圧縮行程を短くしてやろうというアイデアです。(ミラーサイクルの動作もコチラのフラッシュアニメをご覧頂いたほうが解りやすいでしょう。)

アトキンソンサイクルのようなピストンストロークそのものを変化させるためにリンクとクランクを併用した複雑な機構を必要とせず、単純に吸気バルブのタイミングをチューニングするだけでアトキンソンサイクルと同じ高膨張比が得られるわけですから、これは実にナイスアイデアです。ただ、これも同じ排気量のオットーサイクルより出力が低く、特に低速でのトルクが得にくいようなんですね。自動車用には何らかの策を講じないとそのポテンシャルを生かすことができなかったようです。

マツダはこのミラーサイクルエンジンを1990年代前半にユーノス800で採用しました。量産車として世界初となったそれは、機械式スーパーチャージャーで加給して出力やトルク特性のデメリットが補なわれていたんですね。もっとも、そのスーパーチャージャーも普通のルーツ式などでは効率があまり良くなかったせいか、より効率の良いリショルム式が奢られていました。それがかなりのコスト増につながっていたらしく、結局ビジネス的に上手くいかずに消え去ってしまったわけです。

(つづく)

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