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新型プリウスは弱点の克服に注力されたらしい (その3)

3代目プリウスで採用された電動ウォーターポンプはアイシン精機製で、トヨタとしても初採用ですが、日本車でも初めてになるようです。相応のコストアップになるウォーターポンプの電動化ですが、それだけに前回ご紹介した排気熱再循環システムと相まって、プリウスの弱点の一つである冬場の燃費悪化をかなり緩和するものと思われます。

プリウスの電動ウォーターポンプ
これまで、国産車では日産のキャラバンなどで
水冷インタークーラー用に電動ウォーターポンプが採用された
という実績はあるようですが、エンジン冷却水用としては
これが初めてだそうです。


私の経験では、2代目プリウスの場合エアコンを切っていると、かなり寒い日でもエンジン再始動の頻度は格段に減りました。エンジンの始動性を確保するための温度はそれほど高くないのかも知れません。が、いかんせん乗っている人間のほうが寒くて降参してしまいますので、冬場の燃費悪化はなかなか避けられないんですね。

これも以前お伝えしましたが、水温計がないプリウスはその変化を確認することができないため、私は故障診断用のコネクタから車載コンピュータの様々なデータを取り出せるモニタリングシステムを導入しました。私が選んだのはトラストのTOUCHというモデルです

trust_touch.jpg
TRUST GReddy Intelligent Infometer TOUCH

これで観察した範囲において通常の水温は80~90℃くらいになります(この種のデータは絶対値で出力されているとは限りませんので、もしかしたらこのシステムが推定している値になるのかも知れませんが、普通のクルマの適正水温もこれくらいですから、それなりにマトモな値ではあると思います)。冬場にフルオートエアコンを入れっぱなしにしておくと水温を上げるためにエンジンが再始動してしまうわけですが、その温度はこのモニター読みで63℃くらいになります。

これはエアコンの設定温度を低めに抑えても変わらないようで、私はこの63℃に近づくとエアコンをOFFにし、少し寒さを我慢して走行に必要な動力を得るためにエンジンが回っているときに限ってエアコンもONにするといったことを繰り返してみました。すると、燃費はかなり改善されたのですが、これを手動で延々繰り返すのは何より面倒ですし、普通にエアコンを入れっぱなしにしている状態より寒い思いもします。これで浮く幾ばくかのガソリン代を取るか、普通に快適な車内温度を取るかと問われれば、私はやはり後者を選びます。

2代目までのプリウスは機械式ウォーターポンプですからエンジンが停止すればポンプも止まり、走行中でもエンジンが止まっていれば冷却水の循環も止まります。が、エンジンが動いている間はその回転数に比例して冷却水も循環します。本来なら冷やす必要のない温度であっても、ポンプを任意に制御できないゆえ無駄に熱を捨ててしまうことになるわけですね。もちろん、オーバークールも燃費悪化に繋がります。

3代目ではこれを電動化し、稼働状態を任意にコントロールできるようになりました。エンジンが動いている間であっても適正水温の範囲内で冷却水の循環を弱めるなり止めるなりすれば、多少エンジンの停止時間が長めになっても従来より水温の低下を遅らせることができるでしょう。当然、頻繁なエンジンの再始動を抑えられることになるハズです。それに加えてポンプの動きを弱めたり止めたりすれば、それを動かすモーターによる電力消費も抑えられることになりますから、よりエネルギー効率を高めることにもなります。

これはBMWでのテストデータになりますが、ウォーターポンプを電動化すると機械式に比べてその駆動にかかるエネルギーが90%も抑えられ、燃費も2~3%程度向上するといいます。ただし、ラジエータファンの電動化に比べると費用対効果が低いとも評価されています。もっとも、これはハイブリッドカーでの評価ではありませんから、プリウスにそのまま当てはまるものでもないでしょう。特に冬場の水温低下の問題は関係ないでしょうし。

しかしながら、コストがかさむという点においてはただでさえハイブリッドシステムでかなりの追加コストがかかっているわけですから、この電動化はよりシビアな要求になるでしょう。先代までのプリウスにも電動ウォーターポンプの採用は検討されていたと思いますが、3代目で日本初となったのはそうしたコストとの兼ね合いも小さくなかったのではないかと想像されます。

インサイトはコストダウンのためにシビックハイブリッドでも採用されていたエアコンのコンプレッサーの電動化さえも諦め、兼用車よりスペシャルではない何とも微妙なハイブリッド専用車となってしまいました。一方のプリウスは細部にまでより一層の効率アップを徹底したわけで、よく比較される両者も中身を見比べれば方向性が全く違うということが解ります。それで最廉価グレードの価格差がたったの16万円なのですから、ハイブリッドカーとしての完成度とそこへ至るまでの努力を冷静に評価すれば、これは全く勝負にならないでしょう。(あくまでも個人的な感想です。)

余談になりますが、両者の最廉価グレードを比較するとプリウスLのほうがインサイトGタイプより格段に装備が良く、16万円の価格差を逆転してむしろプリウスLのほうがお買い得という意見もよく聞かれます。例えば、プリウスLはアルミホイールですが、インサイトGタイプはスチールホイール+樹脂ホイールキャップですし、プリウスLは運転席・助手席サイドエアバッグ+前後席カーテンシールドエアバッグまでも標準装備としていますが、インサイトGタイプは運転席・助手席のフロントエアバッグのみです。また、プリウスLは対応するドアが運転席のみになりますが、スマートキーも標準装備になります。

いずれもインサイトはオプションで同等以上にできますが、エアバッグが8.4万円、スマートキーは(運転席だけでなく助手席とテールゲートも対応になりますが)6.3万円です。Gタイプではメーカーオプションのアルミホイールを装着できないようで価格は追い切れませんでしたが、エアバッグとスマートキーを装着したら16万円からの残りは1.3万円しかありませんから、ディーラーで純正のアルミホイールも装着するとなれば確実に差額をオーバーします。こうしてみますと、インサイトはやはりプリウスより割高になっていますね。(それ以前に内装の質感などからして明らかに車格が違いますけど。)

ハナシを戻しましょうか。2代目から6年を経てフルモデルチェンジを受けた3代目プリウスですが、担当エンジニアたちは伊達に6年を過ごしてきたわけではなさそうです。チーフエンジニアの大塚氏によれば、ハイブリッドシステムも9割は刷新されたとのことです。元々、トヨタはネガ潰しが上手なメーカーですが、プリウスにもそれが遺憾なく発揮され、これまで弱点とされてきた高速燃費と冬場の燃費悪化もかなり改善されたようです。

ネットを眺めていますと「内外装と排気量以外は大して変わらないビッグマイナーチェンジだ」みたいなことを得々と述べている人も見かけますが、それはカタログ値で10%くらいしか改善されなかった燃費データだけを見て達観した気になっているだけでしょう。

10-15モードもJC08モードもエアコンOFFの状態で測定されるものですから、排気熱再循環システムや電動ウォーターポンプ(後者は通常走行時のフリクション低減にも効果がありますが)によって改善された冬場の燃費は反映されませんし、10-15モードは70km/h以下、JC08モードでも80km/h以下となりますから、高速燃費の向上もあまり大きく影響しません。

要するに、3代目になって克服されてきたこれまでの弱点はカタログ値を見ただけでは殆ど解らないということになります。もっとも、従来の弱点はカタログ値を見たりディーラーの試乗車で少し走ったくらいではあまり実感できるものでもなく、専門誌の長期テストによるレポートや私たちオーナーのクチコミなどで広く知られるようになったのだと思いますけど。

プリウスはこの3代目から専用プラットフォームではなくなり、既存車種との共用を図りました。それは海外での生産も視野に入れたものであることをトヨタも認めています。高速燃費の向上でヨーロッパでも売りやすくなったであろう3代目プリウスは、高い付加価値を望む先進国のマーケットを中心に、グローバル展開がさらに強化されるでしょう。これまでもハイブリッド専用車として孤高の存在だったプリウスですが、その地位は全く揺らいでいないようです。当面の課題は大幅なプライスダウンで低下した利益率を如何にして向上させるかでしょう。

(おしまい)

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