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インサイトは日本でもジリ貧か? (その4)

本来であればプリウスとインサイトは価格帯もユーザー層も重なる幅はかなり小さかったハズです。業界関係者の間では今回のフルモデルチェンジでプリウスは値上げされるという見方が支配的でしたから、恐らくトヨタも当初はそうするつもりだったのだと思います。2代目も昨秋に値上げして最廉価グレードの「Sスタンダードパッケージ」は226.8万円から233.6万円になっていましたから、仮にこの価格が据え置かれていたとしてもインサイトの最廉価グレードと44.6万円、最上位グレードとも12.6万円の価格差があったハズでした。

これだけの価格差があればインサイトの上位グレードに色々オプションを加えて装備の良さを取るか、プリウスの下位グレードにオプションは最低限として車格と基本性能の高さを取るか、こうした選択を比較的狭いレンジの消費者層に求めるだけで全面的にぶつかることもなく、上手く棲み分けができていたわけです。実際のところホンダ自身もこのように目論見んでいたに違いないでしょう。

プラットフォームでいえば、3代目プリウスはCセグメント以上を担う「新MCプラットフォーム」、2代目インサイトは主にBセグメントを担う「グローバル・スモール・プラットフォーム」と称されるものになります。ま、最近はプラットフォームの共有がかなりの広範囲で進められていますから、昔の感覚では信じられないような車格の跨ぎかたをしています。トヨタの新MCプラットフォームも下はカローラから上はマークXジオやレクサスHS250hに至るものです。一方、ホンダのグローバル・スモール・プラットフォームはフィット系を中心にシビックの欧州専用車などにも採用されています。

こうした点を見ても新型プリウスと新型インサイトは1つ以上車格が異なるわけで、本来であればライバルとして扱うべきではありません。恐らく、最初からそうした見方が普通に成されていたなら、トヨタもここまでインサイト包囲網を狭めることはなかったように思います。が、世間一般はこうした車格の違いをことごとく無視して両者を同列に扱い、ライバルとして扱ってきました。そして、ホンダの低価格路線が大いに持て囃されることになり、先行したインサイトはメディアにもマーケットにも好感を持って迎えられたわけです。

確かに、ホンダとしてみれば「インサイトが安いのはシステムが安物だから」とは言いにくいでしょう。が、「システムをシンプルにしたことが価格を抑えられた理由」といった上手なアピールの方法もあったでしょう。きょうび、マッサージチェアのテレビ通販だって安さの理由を大々的にアピールし、品質と価格のバランスの良さを強調するものですが、天下のホンダが低価格の強調一本槍に近い状態だったのですから、これは頂けません。

こうしたフォローを徹底しなかった結果、メディアの暴走を許し、新型プリウスの発売前(というより発売前の受注状況が伝えられる前)まではより割安なインサイトのほうが優勢ではないかとする論調が出始めるほどでした。かつてヤマハと二輪車の覇権を巡って闘った「HY戦争」に準えた「TH戦争」という言葉まで飛び交うようにもなってしまいました。

勢いに乗っているときは気付きにくいことかも知れませんが、本来はライバル視すべきではない両者をライバルとして「トヨタとホンダの全面対決」といった構図をメディアが作り上げようとしているとき、多少勢いを削ぐ結果になってもホンダはその軌道修正を図るべきだったんですね。ホンダにしてみればトヨタも同程度の価格帯でプリウスを大安売りしてくるとは夢にも思わなかったのでしょうが、メディアの誤解を解かなかったのは結果的にホンダにとって大きなマイナス作用になってしまったと見て良いでしょう。

また、彼らは4月に供給調整によるものと思われる月間販売台数10,481台で1位(軽自動車を除く)を取ったのも、いまにして思えば余計なことだったかも知れません。この結果を受けてメディアは騒然となり、「ハイブリッドカーがトップを取ったのはプリウスにもできなかった快挙」「インサイトはプリウスを超えた」みたいな報道を引き出してしまったことで、トヨタの怒りの炎に油を注いでしまったように思います。

本来ならライバルとすべきではない両者をライバル扱いする無知なメディアにも解りやすく違いを説明する必要があると悟ったトヨタが幼稚園児向けレベルの比較広告を展開したのも自然な成り行きだったかも知れません。ま、こんな広告は知らない人も多いでしょうから大勢に影響はなかったと思いますが、トヨタにしてみればホンダはメディアの勘違いを放置して、あるいはその勘違いに乗じて調子に乗っているようにも見えたのでしょう。日本には馴染まない比較広告をあえて展開したのも、こうした状況にフラストレーションを募らせていたからこそでしょう。

ホンダはメディアを上手く利用してインサイトを勢いに乗せることに成功しました。企業がメディアを利用するなどよくあることですし、それを手助けするPR会社という存在もありますし、こうしたやり方は自体は決して悪いことでもありません。が、ホンダが失敗したのはその手綱をしっかりと握っていなかったことと、先駆者であるトヨタの心情をあまり考慮しなかったことです。

プリウスと競合する気がないのなら、初めから全く違う路線を目指し、それを明確にアピールすべきだったわけですが、その辺がかなり中途半端だったように思います。また、ホンダが意識していたかどうか解りませんが、ハイブリッドカーのパイオニアとしてトヨタが築き上げてきた「専用車の領域」へ兼用車よりスペシャルではない安物の専用車でかき回し始めたのは、トヨタにしてみれば許し難い行為に感じられたかも知れません。

かつて日本人は欧米人の発明を真似て安く作りなおし、マーケットを土足で踏み荒らして大ひんしゅくを買いまくりました。自由経済の下でも一定のビジネスマナーはあるということをこのとき学んだハズなんですね。1980年代にピークを迎えたジャパンバッシングを経験して以来、日本の自動車メーカーは特に北米市場において如何に反感を買わないよう、如何に調子づいていると思われないよう、紳士的に振る舞うかというところに神経を尖らせ続けてきました。

今回のハイブリッド専用車を巡る一連の流れを振り返ってみますと、ホンダにはそうした配慮に欠けていた部分もあったように思います。と同時に、トヨタも大人げなくムキになり過ぎたところがあったと思います。ま、どっちもどっちといったところでしょうか。世界一体力のあるトヨタですから、薄利の商売でも何とでもなるでしょうが、ホンダにしてみればやり方を間違ったような気がします。

ま、まだ新型インサイトが発売されて5ヶ月少々、新型プリウスが発売されて2ヶ月足らずしか経っていませんから、成否を結論づけるのは拙速というものですね。ただ、プリウスのほうは利益率は別として売上で見れば失敗というところへ転落することはあり得ないでしょう。問題はインサイトのほうで、アメリカでの不振が伝えられ、日本でもジリ貧の兆候が見えてきたところで、最終的にどのレベルに踏みとどまるかが注目されます。

私の予想もあまり当たりませんが、それを自覚した上でインサイトの今後を占ってみましょうか。

まず、発売から1ヶ月くらいの時点で公式発表された総受注台数18,000台と、自動車評論家の国沢氏のblogにある情報が正しいとして、5月下旬までの総受注台数42,000台を基準とし、各月の受注台数がなだらかなカーブを描くように減少していくと仮定します。登録台数は6月まで実数が解っていますからそれを採用し、その後も供給能力を現状維持と想定し、受注残に整合するよう数字を合わせてみます。受注残はその月までの総受注台数と総登録台数との差とします。こうして推測に推測を重ねて予想してみますと、以下のようなグラフになりました。

インサイトの販売状況予想
インサイトの販売状況予想(というより妄想?)

ま、あまり自信のない予想ですが、もしこの通りになるとすれば、8月には受注残をほぼ吐き出し、9月くらいから受注台数と登録台数が近づいていくようになるでしょう。ただし、2月にはかなりの台数を試乗車としてディーラーが自社登録しているハズです。それがどの程度の規模になるのか全く解りませんので、この予想には反映させていません。数千台規模の試乗車があるとしたら、受注残を吐き出すのは8月ではなく9月くらいになるかも知れません。

くどいようですが、これはあくまでも推測に推測を重ねた予想ですし、不確定要素もかなり多いでしょうから、当たる自信はあまりありません。(私は誰かさんと違って推測を重ねたシミュレーションでも現実であるかのように吹聴したり、不確定な要素が山のようにある予測でも将来確実に起こることであるかのように断言してしまえるほど厚顔ではありませんので。)

不確定な要素として大きいのは、やはりホンダが受注状況を伝えなくなってしまったため、大部分が想像によるというところです。これに加えて、上述のように試乗車がどれくらい登録されているかもよく解りません。さらに、プリウスの納期は現在でも8ヶ月以上ですが、今後も長くなっていくようであればそれだけインサイトに流れる人も増えていくでしょう。

インサイトはプリウスよりスポーティなイメージが強いと評価されているようです(実際、エアロパーツの装着率はかなり高いといいます)から、タイプRまではいかないにしてもスポーティ仕様車が追加になればプリウスとは別次元のマーケットを開拓できるでしょう。そうしたイメージを牽引するモデルがあれば、それ以外の通常モデルも全般的なキャラクターをプリウスから引き離す方向にシフトしていくことができるかも知れません。

個人的にはハイブリッドのスポーツカーもアリだと思っています。その辺はいずれCR-Zが担うことになるのかも知れませんが、インサイトにもフィットRSタイプかそれ以上のスポーティバージョンをラインナップさせれば俄然面白くなるのではないかと思います。いずれにしても、インサイトは価格面での訴求力を大きく失ってしまったのですから、プリウスとは違うキャラクターを強調していくしかないでしょう。

(おしまい)

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まとめ

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