酒と蘊蓄の日々

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アメリカではプリウスとインサイトの明暗が分かれた

以前お伝えしましたように、アメリカ市場でのインサイトは当初の販売目標に対して6割程度しか売れていないそうで、少々苦戦しているようです。日本の専門メディアはマニア寄りでメーカーの提灯持ちのような記事が多い傾向にありますから、インサイトの硬めの足回りをスポーティと評価したり、それなりに持ち上げている感じです。が、欧米のメディアの中には散々な評価を下しているところも少なくないようで、特に乗り心地の悪さと後部座席の居住性の悪さがかなりの悪評を買っているようです。

消費者向け情報誌『Consumer Reports』のロードテストでは「小型ハッチバックとワゴン」の部門でブービー賞(22車種中21位)になってしまったそうです。また、イギリスの辛口ジャーナリスト、ジェレミー・クラークソン氏によるレポートがタイム誌の電子版に掲載され、「シートはハムスライサーの上に座っているような酷さで、座っていると骨がだめになってしまいそうだ。インサイトには他にも良くない点がたくさんある」と酷評されています。

なお、クラークソン氏はインサイトの乗り心地が相当お気に召さなかったらしく、別のところでは「恐らく、いま買えるクルマの中で最悪のクルマ」「もう二度と乗りたくない」「試乗中に『木にぶつけてやりたい』と思ったのはこれが初めてだ」とまで語っています。

デトロイトショーで発表されたインサイト
デトロイトショーで華々しくデビューしたインサイトですが
アメリカ市場での売り上げと欧米のメディアによる評価は
あまり芳しくないようです。


日本の自動車専門メディアとしてはかなりの古参(創刊は1962年)で、批評を加えた自動車誌としては日本初とされる『CAR GRAPHIC』は、個人的に比較的硬派な部類ではないかと思います。その電子版にあるブリーフテストでもインサイトに対する評価は辛く、★印による総合評価が5点満点で2点という低いものになっています。特に乗り心地については以下のように熟成の甘さが指摘されています。

さすがホンダだなと思わせるのはスポーティに走らせた時のフットワークの良さだ。ステアリングの効きは素直で、後輪の追従性も理想的。限界はタイヤなりで決して高くはないが、コーナリングそのものを堪能できる味つけとなっている。
しかしながら、乗り心地の粗さは、その代償としても受け入れ難いレベルにあるのも事実である。とにかく走らせている間中、常にヒョコヒョコとした上下動に晒され続けるのは、一体どうしたことなのだろう? 始終浮き足だったような接地感も、どっしり落ち着いた印象を欠く。
率直に表現すれば、安っぽい乗り味。いくらスポーティさ重視でも、もう少しやりようがあるはずだ。


もちろん好みの問題もあるでしょうが、本来インサイトはハイブリッドカーを幅広い層に乗ってもらいたいということを目指したクルマだったハズですから、スポーティな方向に味付けする必然性など全くなかったわけで、そのために乗り心地を犠牲にするのでは本末転倒というべきかも知れません。

現在の技術ならスポーティであっても乗り心地と両立させる方法はいくらでもあるでしょう。が、その辺はコストとの兼ね合いもあります。兎にも角にも安さ第一のインサイトには高いハードルとなっているのかも知れません。ならば、マニアの方向を向くのではなく、一般のユーザーに馴染みやすい乗り心地の良さを取るべきでした。

他にも様々なインプレッションを見て回りましたが、乗り心地や居住性以外に多かった悪評は「内装が軽自動車並みに安っぽい」というもので、フェルディナント・ヤマグチ氏の試乗レポートにもこう書かれています。

インサイトのこれはちょっとどうもなぁ

1: 内装の安っぽさ。この価格で売り出したのだから文句は言えないが、あと5000円、いや1万円出すから内装を何とかして欲しい。コーナーリング時に内装のアチコチから発生するキシミ音が寂しい。それとあの軽自動車的な響きのする軽く薄いドア開閉音。これも何とかならないか。

(後略)


要するに、ハイブリッドカーとして画期的な安さに仕上がったものの、結局は目に見える部分でも、肌で感じられる部分でも、徹底してコストダウンされているということで、全般的に品質と価格を見比べると決して割安になどなっていないということのようです。同じ価格帯の普通のクルマと比較すると明らかに安っぽく、ハイブリッドシステムで割高になった分を別のところで削っているだけということですね。

価格は200万円前後なのに軽自動車と大差ない質感に抑えるようなコスト配分をしているということで、3代目プリウスのようにハイブリッドシステムの根本的な部分に大ナタを振るってコストダウンした(というハナシの詳しくは後日に改めて述べたいと思います)というわけではなさそうです。それで最廉価グレードは装備の違いも考慮すればプリウスのほうがむしろ割安といえる状態ですから、これではマトモな勝負にはならないでしょう。

日本では発売前から予約が5000台に達し、実車を見ないままインサイトを買った人が5000人をかなり超える人数になっているようすが(プリウスはさらにその4倍近く予約で受注しましたが)、世界的に見渡してもここまでクルマを信用買いする国はあまりないでしょう。ブームに踊らされやすい日本人とアメリカ人とでは国民性も違うでしょうし、アメリカでは日本ほどCO2温暖化説が盲信されているわけでもありません。

さらにいえば、日本のような減税や補助金が大々的に導入されているわけでもないでしょう。元々ガソリンの価格も安いですし、実際、原油価格が下落に転じてからアメリカでは低燃費車の売り上げに急ブレーキがかかりました。

追記:このエントリを投稿した直後、アメリカでも低燃費車への買い替えの助成金制度が始まり、当初の予算10億ドルがすぐに底をつき、20億ドルの追加予算が組まれているそうです。ま、いずれにしてもその効果が現れるのは8月以降ということになりますが。

そもそも、アメリカでは金融危機からGMとクライスラーの倒産を経て新車の販売が非常に苦しい状況へ陥っていました。今年1月に前年同月比で約40%も減少していた販売台数は徐々に回復してきましたが、それでも5月は31.1%減、6月も30.6%減という状態だそうです。アメリカ市場でインサイトの売れ行きが悪い要因としては、こうしたことも少なからず影響しているのでしょう。

が、一方のプリウスは爆発的なブームになっている日本と状況は違うものの、アメリカでの6月の販売台数12,998台は前年同月比で6.1%増というまずまずの数字になっているそうです。上述のようにこの不況で全体では30.6%減、ガソリン価格の低下で低燃費車の売り上げが落ち込み、安くなったとはいえ依然として普通のクルマより割高感が残されているハイブリッドカーですから、それを踏まえれば充分に健闘しているといえるでしょう。

といいますか、そもそもプリウスは日本での当初目標を10,000台/月としていましたから、6月に日本国内で22,292台を販売したということはEXの2,000台を除いても何処かから10,000台ほど捻り出さなければならないわけで、そのしわ寄せがアメリカ向けにいっていないとも限りません。ま、アメリカでの受注状況やバックオーダーがどの程度なのか解りませんから何ともいえませんが。

日本ではまだ受注残を抱えているインサイトの受注状況が現在どうなっているのか、ホンダは口をつぐんでしまいました。ま、それは自動車評論家の国沢光宏氏が言うように芳しくない証拠なのだと思いますが、なまじスタートダッシュが強烈だっただけにその惰性で登録台数など外から見える数字では現状が解りづらいところです。

アメリカではマーケットそのものの状況が昨年よりかなり厳しいハズですが、プリウスは前年同月比で6.1%増となっていますから、あちらでは両者の明暗がハッキリ分かれたと見て良いでしょう。日本でも受注残が尽きるであろう数ヶ月後にはインサイトの登録台数が目に見えて減少すると私は読んでいますが(あまり自信はありませんが)、「ただ安くすればよいというものではない」という評価がいずれ日本でも下される日が来るように思います。

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