酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

電気自動車は遠い過去のクルマであり遠い未来のクルマである (その2)

三菱自動車が目指している「ユーザーの負担額が200万円を切る」というレベルを実現できれば、i-MiEV程度の電気自動車でもシティコミューター的な近距離の移動には何とか使えそうですし、ガソリン税などの租税が免除されている分だけランニングコストも抑えられますから、そこそこ売れるようになるとは思います。が、こうした補助金や優遇税制で「おんぶにだっこ」状態のクルマを普及させるのは限度というものがあります。もし、無理矢理ゴリ押しして沢山売ってしまったら、それはそれで問題です。

非常に極端なハナシになりますが、仮に1台当たりの補助金をi-MiEVと同じ139万円として日本中の乗用車(2008年末現在で軽自動車を含むと約5,755万台)を全て電気自動車にするとなれば、支給しなければならない補助金の総額は80兆円を越え、日本政府の一般会計予算における歳出1年分に迫ります。クルマに乗らない人も赤ん坊も含めて国民1人当たり約63万円もの負担を強いられることになってしまうわけです。

「若者のクルマ離れで新車が売れない」などと騒がれている昨今ですが、2008年の乗用車の新車販売台数は軽自動車を含めておよそ480万台でした。これに1台当たり139万円の補助金を与えていたら乗用車だけでも1年間に6兆7000億円近い国費(国民1人当たり5万円超)を投じなければならず、およそ現実的とはいえません。139万円という高額の補助金はi-MiEVの初年度計画1400台に対して支払われる約20億円という規模だから許容されるハナシで、この規模が拡大すればするほど財源の確保が難しくなります。

加えて前回にも述べましたように、電気自動車が普及すれば当然のことながらガソリン税などの税収も落ち込みます。こうしたことを考え合わせれば、現在のように台数がごく僅かだからこそ電気自動車の特別扱いも許されるわけです。現状における電気自動車はいわば「みそっかす」そのものというべきでしょう。こんなレベルで本気の普及を目指すとなれば、財政的に支えきれなくなるのは火を見るよりも明らかです。つまり、こうした電気自動車を巡る現在の普及政策は、ありがちなイメージキャンペーンの域を出ていないということですね。

電気自動車の本格的な普及を目指すに当たって補助金と決別できないようであれば、クルマを所有せず、普段はクルマと直接関係のない暮らしをしている人たち、即ちクルマを所有して乗り回している人よりも遙かにエコな暮らしをしている人たちにも大変な負担を押しつけることになります。こんな傲慢で理不尽な政策は許されないでしょう。

本当に環境保護を優先したいのであれば、公共交通機関の充実した大都市圏にあっては脱乗用車社会を目指すべきでしょう。電気自動車に買い替える人ではなく、クルマそのものを手放す人こそ優遇されるような制度を設けるべきなのです。

そもそも、「走行中にはCO2を出さない」などといって電気自動車を「エコカー」として持ち上げていますが、本当に環境負荷の小さい乗り物なのかどうかを運用時に直接生じさせる環境負荷だけで論じるのは全く以てナンセンスです。やはり資源調達から最終処分に至るまでのライフサイクル全般を通じた環境負荷の評価、即ち「LCA」を検討しなければ、本当に環境に与える影響が小さい乗り物なのか否かを結論づけるべきではありません。

また、私は個人的にCO2温暖化説に対してかなり否定的な立場ですので、CO2の排出量が小さいからといってそれが環境負荷の小さい乗り物だとは考えません。逆に、日本の電力供給の約1/3は原子力発電によるものですから、日本で電気自動車を走らせれば、そのエネルギーの約1/3は間接的に核廃棄物の排出を伴います。こうした状況を勘案すれば、本当に「エコ」といえるのか、「事実上1/3は原子力で走っているクルマ」を本当に「エコカー」と呼んでも良いのか、非常に大きな疑問を感じます。

i-MiEVの製造ライン
i-MiEVの製造ライン
i-MiEVの生産は岡山県の水島製作所で行われており、
量産第1号車のロールアウトは今年6月4日だったそうです。
当然のように地元の岡山県庁へも8台納入されるそうです。


電気自動車が抱える数多くの弱点の中でも特に普及を阻む大きな要素は非現実的な価格の高さと並んで「航続距離が恐ろしく短い」というところにあり、それは昔も今も変わりません。最新の電気自動車といえる三菱自動車や富士重工のそれもモーターの効率アップや回生ブレーキなどマネジメント面の向上は見られますが、その航続距離はi-MiEVの160km、プラグイン・ステラの90kmに過ぎません。しかも、これらは10-15モード走行パターンによるものですから、実走行での航続距離はもっともっと短くなってしまいます。

それ以前に、i-MiEVの160kmというスペックは些か不適正で個人的には詐欺的ではないかとさえ思います。というのも、この航続距離はバッテリーを100%充電し、100%使い切った場合の数値になるからです。しかし、実際のところi-MiEVはバッテリーの寿命を延ばすための保護として、20%程度のマージンが設けられたパワーマネジメントがなされているんですね。具体的な内容はよく解りませんが、一般的にリチウムイオン電池は満充電や過放電にすると電極の劣化が早まるといいますから、8分目で自動的にそれ以上の充放電をしないような格好になるのだと思います。

いずれにしても、スペックシート上はバッテリーの容量をフルに使った状態で160kmとなっていますが、実際の運用上はその80%しか使えないという仕様になっており、その状態では10-15モードでも単純計算で128kmくらいしか走らないというわけです。端的にいえば、スペックシートに書かれている航続距離は実用上あり得ないバッテリーの使い方をした場合になるわけで、数字を良く見せかけようとするありがちなトリックといわざるを得ません。

(つづく)

コメント

政府が本当にエコを推進させたいのであれば……

政府が本当にエコを推進させたいのであれば日本を自転車大国にして自転車を使った生活をより充実させたらいいのにね。駅付近に駐輪場をたくさん作り自転車を分解しないでも電車に乗せたりできて自転車専用路を作って……。

でも政府はそんなことは考えていないことでしょう。政府が考えていることはいかに税金を取るかということです自転車からはなかなか税収は期待できませんよね。
もしも今後ハイブリッドカーが普及してエコカーだらけになり皆ガソリン消費しなくなったら、ガソリン税収ガタ落ちですからガソリン税増税は必至ですね。

オートバイも2ストの新車は販売されなくなり4ストのみの販売となりました。騒音規制も厳しくなっていくことでしょう。その点については私は政府の方針に大賛成。
エコカーやガソリン税、高速道路など今後どのように変わっていくのでしょうかね

  • 2009/08/06(木) 12:09:37 |
  • URL |
  • 林 宏 #-
  • [ 編集]

>林 宏 さん

以前、当blogでも話題にしたのですが、ソウル市はエネルギー問題や環境問題に対応した都市計画の一環として自転車専用道の整備をかなり本気で考えているようで、広範に意見を仰ぎ、駅の駐輪施設には汗をかいた身体を洗えるシャワールームの設置も検討されているといいます。これが本当に実現すれば羨ましい限りですね。

日本では本来車道を走らなければならない軽車両である自転車に対し、自動車との接触事故の増加から歩道の通行を認めました。この道交法改正は、あくまでも自転車専用道の整備を前提とした緊急避難的なものでした。しかし、そんなことはすぐに忘れ去られ、そのまま放置されて30年以上が過ぎました。

近年は自転車に乗りながら携帯電話をいじってる大莫迦者が人身事故を頻発させるなど、色々問題になってようやく重い腰を上げ、再び自転車専用道や専用レーンの整備について議論されたり試験的な導入も進められるようにはなりました。が、それも批判を避けることが狙いのような感じで、内容的にはソウル市のようにサイクリスト達の要望を聞いているような印象はありませんね。

(関連記事)
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/blog-entry-265.html
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/blog-entry-302.html

一方、自動車を巡る政策も、今般のいわゆる「エコカー減税」というのは名ばかりで、全然エコじゃない代替でも対象車になっていれば無条件で減税されます。例えば日産車の場合、セレナも減税対象になっています。マーチからこれに乗り替えるのであればむしろアンチエコというべき状態になるわけですが、これも無条件で減税されます。

本気で環境保護を考えるなら、より環境負荷の小さいクルマに乗り替えたときに限って減税なり補助金なりの対象としなければなりません。さらにいえば、環境負荷が小さいクルマに替えるとしても、その代替サイクルが短すぎてランニングで削減できる環境負荷とイニシャルで生じる環境負荷の差し引きで赤字になってしまうことは許されません。減税対象とすべきか否かの条件設定は実効性が伴うようケースバイケースで基準を設ける必要があります。が、その基準を設定するためのアセスメントは膨大な作業になります。

現実にはそんなことなど一切やらず、単純にイメージだけで減税を実施しています。要するに、口先だけの似非エコであって、内容の伴わないものということですね。これは本気で環境保護を考えているわけではなく、自動車業界と結託して新車の販売を伸ばすための方便と見て間違いないでしょう。

ま、こうしたハナシは何も自動車に限ったことではなく、あらゆる分野に通じることです。いま「エコ」というキーワードはそれだけの突破力があります。「エコ」と標榜しさえすれば大概のことは許され、特定の人や団体などの利益にしかならないようなことでも善行と勘違いされることが少なくないように思います。

>今後どのように変わっていくのでしょうかね

今後もこの「エコ」というキーワードを上手く利用した者が様々な利益や権力を得るという状況がしばらく続いていくと思います。

  • 2009/08/07(金) 00:44:50 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/tb.php/448-06766063
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

まとめ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。