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電気自動車は遠い過去のクルマであり遠い未来のクルマである (その5)

リチウムイオン電池のコストだけで300万円にもなるとされる非常に贅沢なi-MiEVですが、東京電力などで行われてきた実証走行試験では期待されるほどの航続距離が得られていません。1回の充電で走れる距離は10-15モードで160kmとメーカーは発表していますが、実際の走行では80kmくらいが目安となるようです。これではごく限られた用途にしか使えないでしょう。

私の場合、会社までの往復でほぼ60kmですから、通勤の足には使えるでしょうが(実際は電車通勤をしていますが)、郊外や地方都市にお住まいの方などはそれすら出来ないというケースも少なくないと思います。いくら139万円の補助金が支給されて320万円ほどで買えるとしても、こんな性能で実際に買おうと思う奇特な人はそう多くないでしょう。急速充電設備もまだ全く整備されていませんし。

i-MiEVに充電する三菱自動車の益子社長
i-MiEVに充電する三菱自動車の益子社長
三菱自動車本社ショールームにある充電器(高砂製作所製)で
メディア向けのデモンストレーションが行われました。
これを使えば80%(実用上の満充電)まで30分で充電可能とのことです。
が、現在は三菱自動車の直系販社にすらこの急速充電設備は
1台も配備されておらず、3相200Vの充電設備(満充電まで7時間)もなく、
一般家庭と同じ100Vの充電設備(満充電まで14時間)しかありません。
(三菱自動車の販売会社の充電設備一覧はコチラ)


ベースは4WDの最高グレードでも160万円に満たない軽自動車ですから、いくら電気代が安く済むといっても差額の160万円あれば現在の相場で13,000Lくらいのガソリンを買うことができます。ベース車の10-15モード燃費は19.2km/Lですが、実走行ではこの40%減と見積もって11.5km/Lで計算しますと、13,000Lのガソリンで15万kmくらい走れることになります。これは普通の人が普通に乗る新車1台分の生涯走行距離をかなり上回ると見て良いでしょう。

i-MiEVのランニングコストの安さを強調したところで、イニシャルコストの差額を相殺できる見込みなど全く立たないと考えて間違いありません。もちろん、これは139万円という高額の補助金を活用した状態でのハナシです。電気自動車にご執心の大衆メディアはこうした点を考慮せず、ただひたすらランニングコストが安いという点を強調しがちです。しかも、それとて何度も述べてきましたようにガソリン税などの租税が免除されているという重要なポイントを完全にスルーしての偏向報道です。

例えば、先月17日付の読売新聞の社説でも「割安な深夜電力で充電すれば、必要な電気代は1キロ走行につき1円ですむ。東京―大阪間を1000円で往復できる計算だ。」としてi-MiEVに期待を寄せていました(この1kmにつき1円という計算は以前検討しましたように正しいとはいえません)。この論説委員はi-MiEVで東京~大阪間を往復するとどんな目に遭うのか想像できる能力がないようです。

実際にi-MiEVで東京~大阪の往復をするなど現代人の普通の感覚では絶対にあり得ないことです。そのためにわざわざ休暇を取って趣味としてやるならハナシは別ですが、普通の人が普通にやるようなことではありません。具体的に検討してみましょうか。

往復1000kmを東京電力の営業車で目安とされた航続距離80km毎の充電で走破するとしたら、途中で最低13回の充電が必要になります。もちろん、現状ではそんなインフラなど整備されていませんから、高速道路会社にお願いしてパーキングエリアなどで特別に充電させてもらうという格好がせいぜいでしょう。しかし、そういうところにある100V電源では実用上の満充電である80%までの充電に11時間強かかりますから、それを13回繰り返すと充電時間だけで6日を超えます。

実際の走行時間をこれにプラスすると、全行程で1週間くらいのスケジュールを組まなければならないというわけですね。よしんば、メーカー公称値として採用しているバッテリー容量を100%使い切って160km走るという数字を用いたとしても、充電時間だけで約4日かかります。i-MiEVで東京~大阪を往復するなど全く現実的ではないという状況に変わりないわけですね。

余談になりますが、江戸時代には樽廻船といって上方から酒荷を江戸まで輸送する船が鮮度を落とさないよう、そのスピードを競っていたそうです。イギリスと中国の間で茶葉の輸送速度を競ったティークリッパー(カティーサークなどが有名ですね)の日本版といったところでしょうか。幕末の平均所要日数は片道10日程度だったといいますが、潮流を上手く利用した最速記録は寛政2年(1790年)に西宮から江戸まで僅か58時間で渡海したというものになるようです。

樽廻船は製造にも運用にも全く化石燃料を用いず、パーフェクトなカーボンニュートラルといって良いでしょう。走行時にだけCO2を排出しないi-MiEVを現状で走らせれば、200年以上も前の船舶に環境性能だけでなく、条件によっては所要時間でも劣ってしまうことがあるというわけです。

将来的に充電スタンドなどのインフラが整備されたとしても、航続距離が伸びなければ充電回数は変わりませんから、長距離移動で現実性が乏しい状況に変わりありません。30分で急速充電できたとしても、それを13回繰り返せば充電時間だけで6時間半です。同じく電気だけで走る新幹線は常に外部から電力を供給されていますから、i-MiEVが充電のために足止めされている時間で東京~大阪を往復できてしまいます。

また、高速道路で急速充電ができるようになったとしても、1時間弱走っては30分の休憩という繰り返しとなると、煩わしくて私は願い下げです。もちろん、急速充電ができない現状では1時間弱走る毎に半日足止めとなりますから、全くの論外です。

電気モーターがエネルギー効率に優れているのは確かですが、現状では外部から常に電力供給を受けられる鉄道での利用が現実的なんですね。常に外部から給電できるなら補助金のような下駄を履かせることもなく、普通に採算が取れるシステムを作って運用することが可能です。

電気自動車がこの世に誕生してから常にネックとなってきた航続距離の短さは今日に至ってもガソリンやディーゼルを代替するレベルには程遠いものです。それは要するに電気エネルギーを高密度で尚かつ安価に、迅速に蓄えておける手段が確立されていないからに他なりません。

(つづく)

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