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電気自動車の充電スタンドは商売にならない (その2)

コスモ石油の試算によれば、充電スタンドという事業者としての電力供給契約をベースに、電気自動車への充電1回にかかる電気代を見積もると、原価は200円程度にしかならないといいます。これに経費や利益を乗せても、売り上げはガソリンに比べて1桁小さく、事業性がないというのが彼らの結論なんですね。

ま、本来は石油を売る会社ですから電気を売るビジネスはあまり乗り気ではないと考えられなくもありません。が、そうは言っても2008年現在で43,700近くのSSを擁するコスモ石油ですから、電気自動車が普及したときの状況についてキチンと見据えておく必要があります。そういう状況に置かれている彼らが、そういうビジネスのプロとして「事業性なし」と結論づけたのですから、電気自動車推進派の根拠の薄い楽観論よりはリアルな事業予測ではないかと思います。

いずれにしても、200円分の電気をチャージするのにその何倍もの利益を乗せられたのでは普通のユーザーは必要に迫られたときしか寄りつかないでしょう。普段は自宅で充電し、スタンドを利用するのはバッテリーが空になりかけた急場しのぎだったり、長距離ドライブの途中といったパターンのみで、それ以上の需要が殆ど見込めないようでは、市場規模は相当小さくなってしまいます。

かといって高価な急速充電器を数十分使用させても大した料金を徴収できないというのでは、営利事業として独立採算で運営するのは非常に困難なものになるでしょう。そもそも、都内の駐車場は30分停めておくだけで何百円も取られます。目的は駐車させることではなく電気を売ることで、そのために高価な急速充電器を設置しても客単価はそれほど大きくできないというのでは、そんなビジネスは誰もやりたがらないと考えるべきです。

リターンが小さくてもリスクが小さければやろうと思う事業者は現われるかも知れません。が、高価な急速充電器を導入する必要から初期投資の額が大きくなれば、それは即ち大きなリスクを背負うことになります。それで大きなリターンが見込めないというのでは、市場原理からしてそんなビジネスはなかなか成立しないでしょう。企業イメージの向上など別の目的があり、多少の赤字でも広告宣伝費とみなして許容されるといったパターンがせいぜいかと思います。

恐らくローソンが連絡車としてi-MIEVを導入し、フランチャイズのコンビニに充電設備を設置しようという計画も、急速ではない200V用(i-MiEVの100%充電に7時間もかかるタイプ)という実用性の低いものでしかありませんから、そういうレベルにとどまるでしょう。

ローソン向けi-MiEV
ローソン向けのi-MiEV
無粋にもこれ見よがしに「電気自動車」と漢字で書かれているのは、
世代を超えて解りやすくそれをアピールするためなのでしょう。
いずれにしても、電気自動車を連絡車として走らせることより
電気自動車を連絡車として導入していることを世間にアピールし
企業イメージの向上を図ることが本当の目的なのでしょう。


上述のように、ガソリンや軽油で走るクルマと違って電気自動車は普通の住宅でもエネルギーをチャージできます。ということは、スタンドの利用率が著しく低下するのは間違いありません。必然的にマーケットの規模そのものがガソリンスタンドより遙かに小さくなります。

加えて、電気代の安さから利益も上げにくいという悪条件が重なりますから、電気自動車の充電スタンドの置かれる状況は、現代の公衆電話が置かれている状況によく似ているといえそうです。いえ、公衆電話は携帯電話より料金が安いのですから、公衆電話より条件が悪い部分もあると考えるべきでしょう。さらに、前回述べましたように回転率も非常に悪く、急速充電器は非常に高価という四重苦です。

ガソリンスタンドも立地などによっては経営が苦しく撤退を余儀なくされるというのは決して珍しいハナシではありません。ちょっと前までガソリンスタンドだったところが中古車の買い取り業者や消費者金融の営業所に模様替えしているなんてこともザラです。上述のように2008年現在で全国に43,700近いSSを抱えるコスモ石油の場合、5年前には5万以上のSSがありましたから、13%近くも店舗を減らしています。

電気自動車の充電スタンドはそれより基本的な条件がさらに悪くなるのは間違いありません。それを維持しようとなると、やはり補助金として税金の投入が避けられないでしょう。クルマを直接利用しない人たちにも負担をかける歪んだ社会になってしまうというわけです。

実際のところ、既に一部の自治体では充電スタンドの設置に補助金を出す政策を始めていますが、それでも採算の目処が全く立たないことを理由に打診を受けた業者(ガソリンスタンドや駐車場などを経営している業者など)は一様に消極的だといいます。

多くのメディアは充電スタンドの普及で電気自動車は本格的にガソリンやディーゼルエンジン車に取って代わるものになっていくと信じているようです。が、ここで検討したような「ビジネスとしての充電スタンド」というものを現実的に検討しているわけではなく、単に推進派の空論を受け売りしているだけに過ぎません。

ま、こういうハナシは風力発電や太陽光発電なども全く同様で、推進派のいう一方的な理想論ばかりが先行してしまうものです。技術的な問題点だけでなく、ビジネスとして現実の市場構造を見据えた検討もマトモに成されません。逆に問題点を指摘してブームに水を差すような意見の殆どが排除されるというのが常なんですね。

このエコブーム(といってもその多くは似非エコですが)に乗った新しいムーブメントはいつもこうしたバイアスがかかった状態で部分的な情報しか伝わらないものですが、電気自動車を巡るハナシも同様にいつものパターンがスライドしてきて、夢物語がまことしやかに語られているというわけです。

(つづく)

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