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電気自動車の充電スタンドは商売にならない (その3)

10年かそこらの近い将来、電気自動車とその充電インフラが普及するという理想論など現実の壁にぶち当たって木っ端微塵に砕け散るのがオチでしょう。しかし、日産自動車は「2020年には世界の自動車需要の10%が電気自動車になる」などと吹聴しています。彼らが掲げるこのとんでもない数字は、シンクタンクによる予測とされていますが、日産自身が本気でそうなると信じているのか、単に希望を抱かせるネタで盛り上げようとしているだけなのか私には解りません。

が、いずれにしても、こういう予想は電気自動車そのものも、充電スタンドも、補助金なしにビジネスとしての採算ラインが見えてから言うべきことです。補助金に「おんぶにだっこ」状態の電気自動車がたかだか10年少々で世界の自動車需要の10%も占めるなどということは絶対にあり得ませんし、ゴリ押ししてそんな状態をつくってしまったら他の分野にしわ寄せが行くのは確実です。

良識のある企業はこんな無責任でいい加減な予測など口にしないものですが、日産自動車や三菱自動車などはこうして目立っておかないと他に「エコ」や「次世代」といったイメージに繋がる技術的なトピックがないのでしょう。「貧すれば鈍する」とはこのことかも知れません。

日産リーフの発表会にてスピーチするゴーン社長
日産リーフの発表会にてスピーチするゴーン社長
電気自動車は2020年までに世界需要の約10%、
550万~600万台規模のマーケットに成長する
という夢物語のような事業予測をゴーン社長は語っていました。
単なるハッタリでメディアを煽っているだけなのか
本気でそう信じ込んでいるのか、どちらにしても現在の日産は
救いようのないレベルまで堕落してしまったという印象です。


仮に、電気自動車が普通のガソリンエンジン車と同程度の使われ方をすると想定した場合、当然のことながらその分のエネルギーはガソリンから電力へ置き換わります。日本国内の乗用車が消費するガソリンの総量は年間500億L程度になります。日経ビジネスの推計によれば、日本車の平均燃費は10-15モードで15.4km/Lとのことですから、1年間で日本国内の乗用車が走る距離(実走行での距離ではなく10-15モードでの試算)の総合計は7700億km程度となります。

i-MiEVの電力消費率は10-15モードで125Wh/kmとのことですから、日本中の乗用車が全てこのクラスの電気自動車に置き換り、上述の7700億kmを走行すれば1年間に962.5億kWhくらいの電力が必要になります。定格出力110万kWクラスの軽水炉1基を持ち、東京電力と東北電力に電力供給している東海第二原発の年間発電量が最大で96.4億kWhくらいですから、この規模の発電所を10くらい増設して電力を供給しなければ対応できないということになるかも知れません。電気自動車を本気で普及させ、ガソリンエンジン車の代替を目指すということは、こうしたことも考えなければならないということです。

もっとも、電気自動車の充電は夜間の余剰電力を用いるケースが圧倒的に多くなると思われます。そうした使用形態が主流になればエネルギーの有効活用に繋がって良いでしょうし、発電所の増設もあまり大規模に行わずに済むかも知れません。が、そうした状況になるとしたら、それは充電スタンドの利用者があまり見込めないということを意味します。

この電気自動車ブームは政府や地方自治体(特に神奈川県)、三菱自動車や日産自動車といった電気自動車に注力してきたメーカーなどがソースを作ってメディアがそれを大々的に取り上げているに過ぎません。このブームに水を差すような意見は黙殺されるという完全にメディアバイアスがかかった状態であるのは以前にも述べた通りです。

昨年、当blogで取り上げた「空気で走るクルマ」や「水で走るクルマ」など詐欺的なものと電気自動車を比べるのはナンセンスです。が、これを伝えるメディアはソースを発している側のコメントしか扱わず、様々な角度からその情報を精査して矛盾点や問題点がないかといったバランスの取れた報道が全くできていないという部分では空気や水で走るクルマを扱ったときと全く同じです。

「事実をありのまま正確に伝える」というジャーナリズムの基本理念は、ある特定の人たちが語っていることをそのまま受け売りするのとは根本的に違います。情報を精査せずにそのまま垂れ流すようでは、メディアは勢いデマを流布するだけの集団となってしまいます。そこのところを厳粛に捕え、情報の取扱いには慎重を期してかかるのがジャーナリズムに求められる能力です。が、日本の大衆メディアにそれを求めるのは無理なようです。

(おしまい)

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まとめ

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