酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

日本の25%は世界の1.5% (その1)

ご存じのように昨日(9月7日)開催された朝日地球環境フォーラム2009で民主党の鳩山代表が日本の温室効果ガス排出削減の中期目標として2020年までに1990年比で25%削減するという数値を掲げ、各メディアはこれを大きく伝えました。

しかしですね、こうした数値目標は7月27日に発行された民主党のマニフェスト(←リンク先はPDFです)で既に明文化されていたことで、昨日になって初めて出てきたハナシではありません。1ヶ月以上も前から解っていたことを今更メディアが騒ぎ立てたということは、要するに彼らは民主党のマニフェストなどロクに読まず、先の衆議院議員総選挙を煽っていたということです。

朝日地球環境フォーラムでスピーチする鳩山代表
朝日地球環境フォーラムでスピーチする鳩山代表
「我々のマニフェストに掲げた政権公約で、
政治の意思としてあらゆる政策を総動員して
実現を目指していく」と語ったそうです。


念のため、民主党のマニフェストから件の政策を抜粋しておきます。

42.地球温暖化対策を強力に推進する

【政策目的】
○国際社会と協調して地球温暖化に歯止めをかけ、次世代に良好な環境を引き継ぐ。
○CO2等排出量について、2020年までに25%減(1990年比)、2050年までに60%超減(同前)を目標とする。

【具体策】
○「ポスト京都」の温暖化ガス抑制の国際的枠組みに米国・中国・インドなど主要排出国の参加を促し、主導的な環境外交を展開する。
○キャップ&トレード方式による実効ある国内排出量取引市場を創設する。
○地球温暖化対策税の導入を検討する。その際、地方財政に配慮しつつ、特定の産業に過度の負担とならないように留意した制度設計を行う。
○家電製品等の供給・販売に際して、CO2排出に関する情報を通知するなど「CO2の見える化」を推進する。


微妙に違うのはマニフェストが「CO2等」の排出量としているのに対し、件のシンポジウムで鳩山代表が語ったのは「温室効果ガス」の排出量だったわけで、ま、この辺は取るに足りないことでしょう。ただ、少々細かいツッコミになりますが、「温室効果ガス」というと普通はCO2以外の温室効果ガスも全て含めるのが常識で、その場合は基準年の扱い方がやや面倒になるんですね。民主党のマニフェストも昨日の鳩山代表のスピーチも、そうした部分の認識が足りていないというのが私の個人的な感想です。

「温室効果ガスの総排出量」という場合、CO2以外の温室効果ガスの排出量は各々のGWP(CO2を基準としてその何倍の温室効果があるかを定めた係数)を乗じ、全てをCO2排出量に換算して表わすのが常識です。が、ここで問題になるのは京都議定書では温室効果ガスの種類によってその基準年が一定ではないというところです。具体的にはCO2、CH4、N2Oの基準年は1990年(一部の経済移行国を除く)、HFCs、PFCs、SF6の基準年は1995年も選択可能とされており、日本はこれらの基準年を1995年としています。

なので、民主党のマニフェストにあるように「CO2等」という表現の場合はやや微妙ですが、昨日の鳩山代表のスピーチにあったように「温室効果ガスの排出削減」という題目で語るなら、「京都議定書の基準年」とするのが一般的なんですね。環境省が報告書やプレスリリースを出すときも必ずそうしてきましたし。

いずれにしても、彼らは1990年を基準として「温室効果ガスの排出削減」の目標を掲げたわけですから、独自の基準ということになるわけですが、その独自基準の根拠はどこにあるのか全く説明がなされていません。というより、温室効果ガスそのものや基準年の定義についてキチンと理解していないのでしょう。

そもそも、民主党のマニフェストを見ても「具体策」として謳われている内容が全く具体的ではありません。産経新聞の今日の主張でも指摘されているように、この目標は純粋な削減目標なのか排出量取引を併用するものなのか、それすらも説明されない極めて抽象的なものです。またぞろ具体的な根拠をロクに示さない、いつもの大風呂敷を広げたというわけですね。

また、保守系の産経新聞だけでなく、件のシンポジウムを主催した朝日新聞の今日の社説でさえ、このとんでもない目標について見出しで『「25%削減」―実現へ説得力ある道筋を』と釘を刺し、「ガソリン税などの暫定税率廃止や高速道路の無料化など、排出削減に逆行しかねない政策の賢い見直しも忘れないでもらいたい」と注文を付けています。

リベラル系の筆頭ともいうべき朝日新聞は、これまでも環境問題については特に短絡思考に走りがちでした。が、その彼らでさえ民主党の根拠を逸した荒唐無稽な目標は他の政策との矛盾もあり、手放しで受け入れられるものではないという立場をとったわけですね。あの朝日新聞にさえこのような扱い方を受けるということは、要するにマトモな政策ではないという烙印を押されたも同然です。

(つづく)

コメント

せめてのもの救いは、「すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が、我が国の国際社会への約束の前提となる」と述べているところでしょうか。
ついでに、「90年比で80%CO2を増大させているNHKは、現在より約60%CO2を削減する必要があります。」なんて言ってくれれば面白かったのに、と思います。

  • 2009/09/09(水) 00:18:43 |
  • URL |
  • わちゃちゃ #JOOJeKY6
  • [ 編集]

わちゃちゃさん>

>せめてのもの救いは、「すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が、我が国の国際社会への約束の前提となる」と述べているところでしょうか。

仰るとおりですね。この文言は裏を返せば「すべての主要国が参加して意欲的な目標の合意が成されなければ、日本も約束は出来ない」ということになります。このパワーゲームの餌食にはならないという意志を匂わせるポイントになっており、ここだけはまるで別人が考えたような鋭い釘を刺したといった印象です。

>90年比で80%CO2を増大させているNHK

自動車メーカー、とりわけ日産自動車などは海外生産を増やしていまして、1990年から2006年の間に総生産台数を1割程度増やしているのですが、国内生産はほぼ半減しているんですね。しかも、現在は日本国内向けのマーチを神奈川県の追浜工場で生産していますが、来年予定されているフルモデルチェンジに伴ってタイでの生産に切り替え、それを日本に逆輸入する計画になっていますから、さらに海外生産の比率が高まります。その分だけ日産は海外でのCO2排出量を増やし、国内のCO2排出量の削減に貢献しているわけですね。

この傾向は日産だけでなく製造業全般にいえることでしょう。しかし、こうした実情を完全に無視して「日本では産業部門の排出量が減ってきている一方で家庭からの排出量は増えているから、家庭からの排出量を減らせ」というのですから、「莫迦も休み休み言え」と言いたくなります。恐らく、NHKのように海外へ拠点を移すことができない足枷があれば産業部門全般がNHKと同じように排出量を増やしているに違いないと思います。

CO2温暖化説が正しいと仮定して、国内の排出基準が強化されて企業に大きな負担がかかるようなら、可能な分野は勢い基準の甘い国へ拠点を移すことになり、世界全体を見渡したら全く意味がなくなってしまいます。こうした部分を見てもEUが死守しようとしている国別のCO2排出枠などナンセンスだということが解りますよね。

私はこの地球温暖化問題は様々な形のツールとして都合良く利用されていると思っています。各国政府は「CO2の排出枠」という名を借りた「化石燃料の消費枠」を巡って、自国に有利な配分を求めるためにこのパワーゲームを展開しているのではないかと見ています。もちろん、有限である化石燃料の消費削減という有意義な目的もあるのでしょうけど。

特にEUは途上国を途上国のままとし、自分たちは先進国であり続けるためにこのパワーゲームを先導しているように見えます。が、逆に自らにも課した厳しい排出削減義務がアダとなり、特に製造業の主要拠点が排出削減義務のない国へ逃げ出し、国内産業の空洞化が一層進むことになれば彼らの政略は裏目に出ることになるでしょう。

そうした傾向が強まって行けば、さすがに狡猾なヨーロッパ人たちも音を上げてこの莫迦げたパワーゲームを終わらせようとするでしょうね。

  • 2009/09/10(木) 00:07:40 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/tb.php/470-c4edc2ac
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

まとめ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。