酒と蘊蓄の日々

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インフラは後から付いてくる場合とそうでない場合がある (その6)

日産自動車は12年も前に市販車として世界初のリチウムイオン電池車を発売しました。が、今年7月下旬に三菱自動車がi-MiEVを発売したときのような話題にはなりませんでした。いまにして思えば、トヨタが燃料電池車の量産宣言をしてブームを巻き起こし、「燃料電池は自動車の次代を担う切り札」と誰もが信じ込んでいたタイミングでリチウムイオン電池車を出しても全く注目されなかったのは当然の成り行きだったのでしょう。少々割高感はあったものの充分に現実的といえる価格で初代プリウスが発売されたのも同じ年でしたし。

プレーリージョイEV
日産プレーリージョイEV
市販車初のリチウムイオン電池車であるこれはベースとなったプレーリージョイより220kg程重く、
バッテリーの重量もその前後だと想像されます。
諸元表にある航続距離は「200km以上」となってますが、基準となる走行パターンが明示されておらず、
i-MiEV同様に実際はかなり目減りするものと想像されます。
このクルマもまた自治体や大手法人などを対象とし、リース販売されました。
要するに、電気自動車を取り巻く状況はこの12年間殆ど進歩していないということです。


太陽光発電などもそうですが、高額な補助金を注ぎ込まなければビジネスとして成り立たないような状況で、それが10年単位の長い期間続くようであれば、考え方を改める必要があるでしょう。旧態依然の低レベルな製品を無理に普及させようとするより、その予算を基礎研究に投資して、もっと根本的な技術力の底上げを目指したほうが良いのではないかと思います。

もちろん、事業性が見込めれば民間企業も積極的に投資するようになりますし、業界全体の活性化にも繋がりますから、マーケットの創造を促すような補助金にも意味はあると思います。が、電気自動車には昔から補助金が支給されていました。その規模はともかく同じような状況が延々と続いてきただけで、その過程に大した進歩はありませんでした。現在のリチウムイオン電池の能力では実用的なクルマを成立させるのに桁が一つ足りないのですから、無理もないでしょう。

そんな桁違いに脆弱な電池で動くクルマを普及させるために補助金をバラ撒くくらいなら、実用的な電気自動車を成立させるための次世代バッテリーを開発している人たちにそのカネを使ったほうが良い結果が得られるのではないかというのが私の個人的な感想です。

同時に、充電スタンドはビジネス面から見て悪条件が多すぎますから、これも何とかして改善する方法を本気で検討しておかなければならないでしょう。あるいは、バッテリーそのものもインフラを考慮した構造にしなければならないかも知れません。

例えば、ベタープレイスのようにバッテリーを丸ごと充電済みのものに交換するのではなく、中身の一部を入れ替える方式が提唱されています。具体的には、リチウム空気電池を応用したもので、正極を多孔質炭素の空気端子とし、負極をカセット式の金属リチウム端子とします。正極側に水溶電解液、負極側に有機電解液、両者の間にリチウムイオンだけを通す膜を置いて混合を防ぎ、充電スタンドで正極側の水溶電解液を交換するとともに負極のカセットを交換して金属リチウムを補給するといった具合で、これは新種の燃料電池と見なすこともできます。

リチウム空気電池を応用した金属リチウム燃料電池
リチウム空気電池を応用した金属リチウム燃料電池
産業技術総合研究所と日本学術振興会が開発した新型のリチウム空気電池は
新種の燃料電池と見なすことができます。
正極は多孔質炭素ですが、空気中にある酸素を活性物質とするため
理論的に正極の容量密度は無限となります。
負極のリチウムイオンが正極に向かい、水酸化物イオンと結び付いて
水酸化リチウムになるとともに電流が流れます。
スタンドでは正極側の水溶電解液を交換して水酸化リチウムを回収し、
負極の金属リチウムを補充すれば短時間にエネルギーをチャージできます。
回収した水酸化リチウムを再生して負極の金属リチウムとし、
これを循環させるというシステムです。


こうした方法であれば正極の電解液の入れ替えと負極のカセットを交換するだけで済みますから、それほど時間はかかりません。クルマのパッケージングに大きくかかわるバッテリーの形状や搭載方法についても制約が小さくなるでしょう。さらに、充電スタンドに大仰な機械設備を設ける必要がなく、スペースの利用効率もベタープレイス方式より遙かに優れたものになるでしょう。

もちろん、こうした従来の発想とは全く異なる仕組みを実用化するにはバッテリーそのものの構造から充電インフラの在り方を含め、関係するシステムを総合的に検討しなければなりません。その過程には困難な課題を幾つもクリアしていかなければならないでしょう。しかし、それくらいのことをやらなければ結局は従来の延長線上にとどまり、従来の課題をそのまま引きずる状態が続くかも知れません。

現在のリチウムイオン電池に対して容量は桁を一つ上げ、価格やエネルギーチャージの時間に関しては桁を一つ以上下げなければ一般消費者に買い替えたいと思わせるようなクルマにはならないでしょう。従来から続くやり方の延長線上で桁違いの性能を得るにはよほど奇跡的な大発明でもなければ難しいと思います。ま、発想を大きく転換させ、従来とは全く異なるアプローチをすれば上手くいくという保証もありませんけど。

いずれにしても、電気自動車が売れるようになったら充電インフラも後から勝手に付いてくるなどと高をくくっていては、いつになっても電気自動車が主流になる日は来ないでしょう。電気自動車はこれまでにも何度となく市場投入が試みられてきましたが、その度に挫折を重ねてきました。取り立てて大きな変革もないまま同じようなやり方を繰り返しても、同じ結果をなぞるだけです。清水教授をはじめ、関係者やメディアも早くこのことに気付くべきです。

(おしまい)

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