酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

絵に描いた餅 (その1)

先の訪米で鳩山首相は内外を問わず注目されましたが、殊に温室効果ガスの排出削減目標については注目度が高く、日本では保守系の読売新聞や産経新聞がこれに批判的な社説を載せていました。

私の個人的な見解としましては、有限である化石燃料の消費削減は必要なことと考えますから、民主党が掲げる政策を全く支持しないわけではありません。しかしながら、その目標を達成するための具体的な根拠が全く存在せず、25%という数字についても「ここから何%」「あそこから何%」といった積算が成された様子もなく、何の裏付けもないまま適当に決められたものにしか見えません。こうした荒唐無稽なものであるというところに全面支持できない部分が残されています。

それ以前に、私はCO2温暖化説などという極めて程度の低い仮説を信じていませんから、CO2の排出量を削減しても地球の気候変動に何ら影響はないと考えています。が、よしんば、CO2温暖化説が正しかったとして、日本が1990年比で25%(2007年比で約31%)のCO2を減らしても、それは全世界の1.5%にも満たず、殆ど精神的な満足であったり、メッセージ性しか持たないような政策だといわざるを得ません。

以前も述べましたように、CO2の排出削減が全世界共通の課題であるというのなら、国を越えて実効性のある対策を実施すべきです。日本のように先進国の中でも1人当たりのCO2排出量が少ない国でさらにそれを絞ろうとするより、アメリカやカナダのように1人当たりのCO2排出量が日本の2倍を超えるような削り代が非常に大きい、減らせる余地がたくさん残されているところから減らしたほうが遙かに高い実効性が見込めるハズです。

地球温暖化問題に関する共通認識として「CO2排出削減は全人類の問題」という部分で全くブレがありません。ですから、本当であれば国境にとらわれることなく最も効率の良いやり方を各国で協力し合って進めていくべきなのです。しかし、現実には協調するどころかCO2の削減義務を巡って国同士が自分たちに都合の良い条件を主張し合うばかりです。

先進国はまだ生活水準が低くエネルギー消費量が比較にならないくらい少ない途上国に対しても削減義務を課そうとし、途上国は先進国こそ大幅な削減をすべきで、削減義務を課すならそのための技術供与と資金提供をすべきだと主張しています。こうしたところに欺瞞が見え隠れしているように感じます。

そもそも、CO2の削減義務を巡っては常に「国別」という枠がはめられてきました。しかし、国別で削減義務を割り振ることの虚しさは先般ご紹介したデンマークのエネルギー政策のようなケースが如実に示しています。国内の火力発電による電力生産を抑え、CO2排出量を減らしたとしても、その帳尻合わせで諸外国のCO2排出量を増やしたのでは全く意味がありません。

もちろん、これはエネルギー部門だけのハナシではありません。例えば、民主党が掲げた厳しい削減目標を実施すれば企業の負担が増えるのは確実ですから、特に海外移転が可能な製造業などはCO2の排出削減義務やそれにかかる租税などが課せられない国へ工場を移してしまうことになるでしょう。そうなれば雇用の流出とともにCO2の排出源も海外へ移転させるだけで、世界全体で見た場合のCO2排出削減には寄与しないことになります。

こうした状況を想定すれば、全世界が足並みを揃えない限り国別で削減義務を策定しても抜け道がいくつも残されてしまうことになります。かといって、生活水準が低い途上国にも排出削減を迫ったところで、そんな不平等なことを受け容れてくれる訳がありません。全世界の足並みを揃えるには全世界の経済格差をなくすことから始めなければなりませんが、それこそ困難なハナシです。

何度も繰り返しになりますが、このような莫迦げた対立状態にあるのは「CO2の削減義務」という名を借りた「化石燃料の消費枠」を縛るためのパワーゲーム、即ちエネルギー資源を巡る国際的な争奪戦というのが裏の顔ではないかと私は疑っています。

先進国は途上国に追い越されることのない地位を守り続けるため、途上国は先進国の足枷を大きくして差を詰め、さらにはカネと技術も手に入れたいという各々に秘めた思惑があり、しかし、そうした本当の思惑は「暗黙の了解」とし、体の良い「環境保護」という美名の下にそれを隠して綱引きを繰り返しているといった印象です。(あくまでも個人的な感想です。)

経済格差をなくさなければ平等なCO2の削減義務(=化石燃料の消費枠)を定めることなど不可能ですが、そもそもが経済格差を維持したいと思っている人たちが途上国にも削減義務を負わせようとして(=自分たちを上回るエネルギーの消費枠を与えないようにするため)この問題を膨らませてきたのではないかと疑われる部分もありますから、現状で合意など得られるわけがないでしょう。

今年の12月にコペンハーゲンで開催される気候変動枠組条約のCOP15(第15回締約国会議)ではポスト京都議定書として現在よりもさらに厳しい削減義務を取り纏め、主要な排出国から合意を取り付けなければならないことになっています。しかし、こうした状況にあっては合意などまず無理なことですし、もし合意に至ったとしてもそれは非常に中途半端な内容にとどまるのは間違いないでしょう。

とはいえ、どちらにしても化石燃料の消費を減らそうということ自体は良いことだと思いますので、多少の痛みを伴うものであっても確実に効果が見込めることならやっていくべきです。問題は、これを道具にして利権を得ようとする不埒な輩が必ず現われるということです。既に民間レベルではトヨタの「エコ替え」に代表される便乗商法もすっかり根付いているくらいですから、民主党が掲げているような実効性が疑われる上に具体的な内容も全く決まっていない政策は、こういう人たちにとって格好の餌食になるということを充分に留意しておかなければなりません。

(つづく)

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/tb.php/483-d08110f7
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

まとめ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。