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絵に描いた餅 (その2)

「環境保護」を謳うとそれだけで何となく「善行」と見なされてしまうようなところがあります。トヨタの「エコ替え」などは露骨すぎて見透かされた感が否めませんが(トヨタの企業イメージからして解りやすかったのかも知れませんが)、これに乗じて裏で色々な思惑がうごめいていても気付きにくいことが多々あります。それだけに環境問題は悪知恵が働く人たちのターゲットになりやすいような気もします。政策に具体性がなく、中途半端であるほど悪知恵が付け入る隙も多いといえますから、そこのところは十二分に留意しておくべきでしょう。

そこでもう一度、民主党がマニフェストで掲げているCO2等の排出削減のための「具体策」を確認しておきましょうか。

○「ポスト京都」の温暖化ガス抑制の国際的枠組みに米国・中国・インドなど主要排出国の参加を促し、主導的な環境外交を展開する。

○キャップ&トレード方式による実効ある国内排出量取引市場を創設する。

○地球温暖化対策税の導入を検討する。その際、地方財政に配慮しつつ、特定の産業に過度の負担とならないように留意した制度設計を行う。

○家電製品等の供給・販売に際して、CO2排出に関する情報を通知するなど「CO2の見える化」を推進する。


この中でも「地球温暖化対策税の導入」と「国内排出量取引市場を創設」については制度設計や運用の方法次第では問題になりそうな要素を含んでいると見るべきでしょう。

「地球温暖化対策税の導入」はどのように課税してそのカネを何に使うかにもよると思います。が、やはり民主党のマニフェストらしく「特定の産業に過度の負担とならないように留意した制度設計を行う」と述べるにとどまり、具体的には何に対してどのように課税されるのかということすら言及されていません。要するに、具体的な中身は何も決まっていないと見て間違いないでしょう。やはり彼らは「具体策」という言葉の意味を履き違えていると言わざるを得ません。

ただ、このような政策を実行に移したらエネルギーコストの上昇を免れられないということは容易に想像が付きます。「特定の産業に過度の負担とならないように留意した制度設計を行う」といっても、そもそもが多くのエネルギー消費を必要とする電力会社や製造業や運輸業などにとって多大な負担となるのは間違いありません。前回も述べましたように、製造業にあってはCO2の排出源である工場を海外に移転させるだけで根本的な解決に繋がらないケースも多々あるでしょう。

常識的に考えますと、この「地球温暖化対策税」はEU諸国で導入が始まっている「炭素税」に類似するものと考えられます。が、EUの類例と同じく化石燃料に課税するのであればガソリン税や軽油取引税の暫定税率を廃止し、「特に、移動を車に依存することの多い地方の国民負担を軽減する」とした政策と大いに矛盾します。

この暫定税率の廃止を謳った項では「将来的には、ガソリン税、軽油引取税は「地球温暖化対策税(仮称)」として一本化」となっていますが、トータルで国民の負担が増えるのか否か、その税金はどのように使われるのかも一切書かれていません。要するに、これも全くの白紙ということでしょう。こんなことでは現状と変わるのか否かも判断できませんから、政策案として見ても何の意味も持ちません。これで「具体策」など笑止千万です。

自公連立政権時代にも毎年1兆円を超える温暖化対策予算が組まれ、原発関連事業に約3000億円、新幹線や地下高速鉄道の整備に約1000億円、「自動車交通流対策」と称する道路建設関連に100億円程度といったバラマキが毎年行われてきたましたが、こうした使途については野党だった民主党も社民党もメスを入れることはありませんでした。冒頭で述べたような「環境保護=善行」という先入観で監視の目が甘かったのかも知れませんが、こんな彼らが与党となって徴収した税金の使い道をキッチリと管理できるか怪しいところです。

一方の「国内排出量取引市場を創設」という政策も現実を見れば全く期待できません。というのも、ヨーロッパでは既に2005年1月からこうした制度をスタートさせていますが、その効果が現われているようには見えないからです。具体的にいいますと、EU-ETS(EU排出量取引制度)に参加している企業全体で、2005~2007年の3年間にCO2排出量が0.68%増加しています。

2008年は前年比3.06%減だったといいますが、同年前半は原油価格が記録的な高値を付け、後半は100年に1度の大不況に見舞われたのですから、どこまで正味の効果といえるか解ったものではありません。実際、CCX(シカゴ気候取引所)などローカルで民間主導のそれを除いて排出量取引制度が確立していないアメリカでも2008年は石油由来のCO2排出量が前年比6.0%減、全体でも3.6%減となっており、EU-ETS参加企業の全体より減少しているんですね。EIA(アメリカエネルギー情報局)はこうしたCO2排出量の減少はやはり原油高と景気後退によるものと分析しています。

こうしてみても、排出量取引がCO2の排出削減に実効性があるか否かはまだ確認できていないと考えるべきで、これを導入しても公約を守れる見込みとしては非常に不透明と言わざるを得ません。

また、こうした排出量取引制度は経済界の動きを見れば解るように新たな金融商品としてマネーゲームの道具となってしまう恐れも懸念されます。日本の商社や銀行なども既にそういうビジネスを本格的にスタートさせていますが、こうした金融商品化した排出量取引は様々な弊害をもたらす可能性が指摘されています。

私の個人的な見解としましては、「地球温暖化対策税の導入」にも賛成できませんが、「国内排出量取引市場を創設」という政策には大反対です。というのも、このマーケットが大きな規模に成長したら大変なリスクを背負う可能性があるからです。

「排出量取引市場」を創設することで最も懸念されるポイントは、このマーケットが成立していられるのが「CO2温暖化説という単なる仮説が事実に違いないと多くの人が信じている間だけ」だということです。

当blogの「エコロジスト?」のカテゴリーにある過去記事をご参照頂けばお解りになると思いますが、この仮説は沢山の矛盾を抱え、その根拠は不完全なコンピュータシミュレーションのみという、科学的に見て非常に頼りないものです。IPCCが採用した予測ではこの10年間で0.2℃以上上昇していることになっていましたが、実際には0.1℃以上下降しています。こうしたことからも根拠となっているコンピュータシミュレーションの信頼性が低いのは明らかです。

こんな泥船のような仮説に乗っかって(といいますか、乗っかっている人たちは仮説であるという認識すらないのかも知れませんが)巨大なマーケットが形成されてしまうと、この仮説が誤りだったと解った瞬間にマーケットそのものが崩壊し、大変な経済的ダメージを受けることになります。2007年現在で全世界のCO2排出量取引の市場規模は6兆円くらいと見られていますが、この規模は年々拡大しています。将来的には100兆円を超えるという試算もありますが、これが泡と消えたらどれだけ悲惨なことになるのか、考えただけでもゾッとします。

「地球温暖化対策税」もやり方次第だと思いますが、ここまで大きなリスクはないでしょう。しかし、「排出量取引市場」は命脈であるCO2温暖化説という仮説が間違いだと見なされた瞬間に大変な経済パニックに陥る可能性があります。例のリーマンショックが負債総額約64兆5000億円の大型倒産で全世界の株式市場に720兆円の損失をもたらしたといいますから、もし世界の排出量取引市場が100兆円規模に成長したところで崩壊したとなれば、リーマンショックを遙かに上回る損失をもたらすでしょう。もし、そんなことになったら、誰が責任を取るのでしょうか?

せっせと排出権を買い漁っている三菱商事などの当事者たちは、そんなリスクがあるということを全く想定していないのでしょうね。もちろん、民主党の人たちも。

(つづく)

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