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絵に描いた餅 (その3)

民主党のマニフェストには「地球温暖化対策税の導入」や「国内排出量取引市場の創設」といった地球温暖化対策が掲げられています。私の感覚では、こうしたタイトルのようなレベルでは「政策概要」としても不充分で、これらをどのようにして実施していくかを含めて「具体策」というべきだと思うのですが、彼らの感覚は全く違うようです。その具体的な中身が全くカラッポの状態でも「具体策」というのですから、要するに彼らは具体的な政策を練る能力を根本的に欠いているのかも知れません。

いずれにしても、これらはやり方次第で新たな利権に繋がる可能性が否定できない政策ですから、どのような制度設計が成されていくか、注意深く監視しなければならないでしょう。もちろん、知恵のない民主党にそこまで悪知恵を働かせる能力がなかったとしても、こうした制度設計は様々な人間が関わることですから、民主党のように政策策定能力の低い人たちが良いように手玉に取られてしまうといった状況も充分に考え得ることです。

一方、「家電製品等の供給・販売に際して、CO2排出に関する情報を通知するなど『CO2の見える化』を推進する」という政策は家電メーカーなどにとって商品のPR材料になったり、エコカー減税のように海外のメーカーから保護主義的なニュアンスに受け取られてしまう可能性もあります。が、「見える化」したところで大した効果もないでしょうから、大した実害もないでしょう。効かない薬は毒にもならないものです。

これを実施しても大した効果が期待できないと思う理由は、消費者の良識に全てを委ねる政策だからです。CO2の排出量より製品の性能や価格を重視する消費者は沢山います。かく言う私も場合によっては省エネだけど能力の低いモノより、必要な能力を求めてより消費エネルギーが大きいモノを選ぶことがあります。そうしたケースでは「CO2の見える化」など殆ど意味を持ちません。

この「CO2の見える化」という発想自体は随分前からありました。例えば、2007年10月18日に行われた地球温暖化国内対策の7閣僚会合で鴨下環境相(当時)が「家庭での排出量が大幅に伸びていることから、家電製品などを対象にその製造過程でどれぐらいのCO2が排出され、製品を使うことでもどれぐらいが排出されるのかをわかりやすく表示する『CO2見える化』を推進して、省エネ製品への買い替えを促す」との旨を述べていたんですね。

自公連立政権時代から「CO2の見える化」は提唱されており、そのときから環境省で地球温暖化対策推進法の改正に盛り込む準備が進められています。民主党の政策はタイトルからしてそのまま同じところをなぞっただけで、全くオリジナリティがありません。こうした経緯を踏まえれば、この政策を法制化する際には前政権からの引き継ぎである旨はキチンと伝えておくべきでしょう。もし、あたかも民主党のオリジナルであるかのように触れ回るとしたら、それは非常に図々しいハナシです。

で、単に買い換えを促すだけならあの悪名高いトヨタの「エコ替え」と同じですが、鴨下元環境相が述べた構想でポイントになるのは、情報開示の対象に「製造過程」が含まれているところです。これを含めたトータルで評価し、買い替えたほうがより省エネになるのか否かが容易に確認できるような制度になるなら、これはやる価値があると思います。

トヨタの「エコ替え」やJR東海の「新幹線でECO出張」のように運用過程しか取り沙汰せず、製造過程やインフラの整備などにかかる環境負荷は無視するといった都合の良い比較では片手落ちも良いところです。こうしたLCA的な考え方ができていない状態では実効性のある制度づくりも全く期待できません。

そこで民主党のマニフェストをもう一度見直してみますと、開示させるのは「CO2排出に関する情報」としか述べられていないことに呆れます。自民党案では2年も前に製造過程を含めた情報開示の政策が示されていたにもかかわらず、民主党のそれは使用過程だけで良いのか、製造過程や廃棄・リサイクルにかかるそれも含めるのか、たかだか一行で触れられるようなことすら言及されていません。こうした点を見ても具体性を欠いた「具体策」と言わざるを得ないでしょう。

上述のように「CO2の見える化は」消費者の良識に委ねるだけの非常に消極的な政策で、これに比べれば省エネ法の「トップランナー制度」のほうが遙かに積極的な対策といえるでしょう。これは商品化されている製品の中で最も省エネ性能が優れているもの以上に省エネとなるような基準を設定する制度で、基準に達しない製品を正当な理由なく販売し続けた場合は、社名が公表されたり、罰金が科せられたりすることもあります。

より確実な効果を狙うなら、トップランナー制度の対象品目を拡大するなり、トップランナーからさらに10%省エネ性能を向上させなければならないといった感じで基準の引き上げを行うなり、トップランナー制度の強化を図るべきです。もちろん、こうした基準の強化は製品価格の上昇に繋がり、メーカーや消費者の負担も増えるでしょう。やり方次第では中小零細メーカーにとって死活問題に発展する可能性も否めません。が、民主党の掲げた1990年比25%削減という非常に高い目標を達成するにはこれでも不充分かも知れません。

このように、民主党のマニフェストで「具体策」として掲げられている4つの政策のうち、2020年までに1990年比25%削減という目標に直接関わる3つの政策に関してはどれも実効性が疑われるものばかりで、オリジナリティさえありません。特に家電の「CO2見える化」などは前政権で法制化に向けた実務が既に着手されている政策でありながら、それよりも切り込みが甘いという非常に中途半端なものです。

前述のように「地球温暖化対策税の導入」や「国内排出量取引市場の創設」もヨーロッパの猿マネに過ぎません。ま、マネをすること自体は別に悪いことだと思いませんけど。アチラでは何年も前から実施されていることを日本はこれから導入し、ヨーロッパの削減目標(2020年までに1990年比20%削減)をも上回る非常に高いハードルに挑もうというわけです。

仮にこれらの政策に実効性があるとしても、これから導入しようという日本は既に導入済みの国がいくつもあるヨーロッパに比べてかなりの周回遅れというべき状態にあります。民主党の人たちはこうしたヨーロッパと同じようなやり方をマネて、ずっと先行しているヨーロッパを抜き去ることができると本気で思っているのでしょうか?

(つづく)

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