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羽田を国際化するならその前に懺悔を

「羽田空港の国際化」というハナシは過去にも何度となく浮かんでは沈むという繰り返しでした。2000年の12月にも当時の運輸相だった扇千景氏が成田との「棲み分けを見直すべき」と発言して千葉県を大激怒させ、わずか4日後には「21世紀の国際空港のあり方として展望を述べた。現状は否定しない」と軌道修正しました。

個人的には羽田空港の国際化・ハブ化は経済的なメリットをはじめ、あらゆる観点からして将来的に進めていくべきことだと思います。が、成田空港を巡るあの凄惨な闘争の歴史を思い起こせば、軽率に語ってはいけない領域だとも思います。

八ッ場ダムの建設中止については民主党のマニフェストにもちゃんと謳われていたことですから、単なる思いつきで動き始めたことではありません。ま、当地の群馬県吾妻郡が属す群馬第5区に民主党は候補を立てず、地元の民意を反映させる機会を与えなかったという意味で少々セコイやり方だったとは思いますが。

一方、羽田空港の国際化は現実問題として八ッ場ダムの建設中止などと全く比べものにならないくらい多くの人が影響を受け、経済効果も桁が大きく違います。これだけ圧倒的な影響力を持つ政策なら、キッチリとマニフェストにも明記しておくべきでした。が、彼らのそれを紐解いても「空港」の「空」の字も出てきません(関係ありませんが、彼らのマニフェストで「空」の字が出てくるのは「空き教室などの活用で保育所を増やし、待機児童解消を目指します」という一文のみです。)

今回の騒動を引き起こした前原国交相は従来から羽田の国際化には積極的な立場だったそうですが、一人の意思で物事を進めてしまうのはやはり問題で、事前にそうしたイデオロギーをハッキリと示しておくべきでした。特に、地元の人たちにしてみれば、やり方次第では死活問題にも繋がりかねないハナシです。マニフェストに明記するなど選挙前にそうした意思を解りやすく示しておくべきで、それを怠ったのはやはり問題です。

千葉県には衆議院の小選挙区が13ありますが、民主党は自民党に対して11勝2敗という圧勝でした。地元の成田市が属す千葉10区も6期務めた自民党の林幹雄氏を民主党の谷田川元氏が破っていますが、成田市民の「裏切られた感」は如何ばかりだったでしょう。少なくとも、この重大な政策を選挙前に知らされていたら、地元の選挙民は全く違う反応を見せたに違いありません。

前原国交相は「説明が足りなかった」とし、「羽田空港のハブ化は成田空港の国際便を羽田空港へ持っていくことではない。(国内線は羽田、国際線は成田とする)内際分離の原則をなくし、ともに国際空港として発展させたい」「成田は成田で現在の(年間発着回数)20万回から最終的には30万回に増えるので、ひとつの大きな国際拠点空港としてより発展してもらう。(2010年10月に)羽田の第4滑走路(D滑走路)ができても成田が中心的な役割だ」と釈明するなど、扇元運輸相同様にかなりの軌道修正をしました。

もっとも、国交省は前政権時代からアジア諸国などの近距離国際線について羽田の増便を計画していました。将来像として近距離を羽田、長距離を成田とする棲み分け方もかなり前から言われていたことで、トーンダウンした前原氏の雰囲気からすると、その流れに従うだけになってしまうかも知れません。となれば、彼の唐突で舌っ足らずな発言はただ世間を騒がせただけということになるでしょう。

詳しくは後述しますが、成田空港を巡るそもそもの過ちは、何の説明もなく地元民をないがしろにプロジェクトをスタートさせたところにあります。ですから、前原氏の突然の発言は地元民にとって「またか」と思わせる非常にデリカシーの欠けたものだったといえます。地元民の感情を憂慮するなら、中央からいきなり「羽田の国際化」という発言は控えるべきでした。例えば、成田空港の今後の在り方について説明会なり公聴会なりを開き、成田の人たちの前で、その目を見ながら最初の一言を発するべきだったように思います。

羽田D滑走路完成予想図
羽田空港D滑走路完成予想図
当初、メガフロート(巨大人工浮島)での建設も検討されましたが、
最終的には従来の埋立と桟橋を組み合わせたハイブリッド構造となりました。
上図手前側にある人工島がD滑走路で、その左の方の白っぽい部分が
198基のジャケットで構成される桟橋です。
桟橋のジャケットの設置は今月13日現在で180基まで完了しており、
進捗状況は順調なようです。
ちなみに、このD滑走路の建設には亀井静香氏と石原慎太郎氏が結託し、
当時の運輸官僚を半ば脅して調査費をブン取ったといわれています。
要するに、この二人は現在の日本で最も羽田を国際化したいと考えている
政治家といって間違いないと思います。


ここで成田空港開港までの経緯をザッと振り返ってみましょうか。

首都圏の空路の要となる新空港の建設が千葉県に決まったのは佐藤栄作内閣時代ですが、地元千葉県出身で当時の自民党副総裁だった川島正次郎氏の圧倒的な影響力によるものと見て間違いないでしょう。当初は富里に予定されていた計画が地元の猛反発で頓挫し、皇室の御料牧場と県有林がある三里塚・芝山地区なら用地の確保が容易に進められると当て込んで計画が変更されました。

しかし、結果はご存じのように血みどろの徹底抗戦となってしまいました。特にいけなかったのは政府が説明責任を全く果たさなかったことです。三里塚・芝山地区を建設予定地として決定する以前に話し合いの機会を用意し、地元の合意を取り付けていれば何の問題もありませんでした。が、実際には話し合いどころか事前説明すらなく、代替地の準備すら怠って強制的に事を進めた政府の横暴があそこまで事態をこじれさせた全ての原因だったといって間違いないでしょう。

こうして事業計画はもつれにもつれ、成田の開港に向けて地元を説得するための苦肉の策として内際分離の原則を掲げたのもご存じの通りです。が、その原則を維持できなくなったということは、要するに事業計画の失敗を意味します。羽田を国際化するというのなら、政府はこの失敗を真摯に認めなければなりません。強引に計画を推し進め、流血の事態にまで至ったことを懺悔し、過去を精算しなければなりません。

もちろん、反対派にも多くの違法行為がありました。新左翼と呼ばれた反政府ゲリラが便乗するようになってからは反対活動が勢い暴力的・破壊的になり、一方的に政府だけが悪かったと責めるわけにもいきません。が、上述のように地元を無視した政府の横暴が原因だったのは間違いありません。

空港建設プロジェクトがスタートしたのは40年以上も前のことですから、キーパーソンの多くは他界しています。自民党政権時代の過ちを民主党政権が陳謝するのは筋違いという人もいるかも知れません。

しかし、亀井静香氏などは警察庁出身で公安畑を邁進してきた人物でした。彼の公式サイトのプロフィールにある「主な経歴及び足跡」の項に「警察庁警備局の極左事件に関する初代統括責任者となり、成田空港事件、連合赤軍あさま山荘事件、日本赤軍テルアビブ空港事件等を陣頭指揮。」と書かれているように、彼はまさに成田闘争の歴史で国家権力を振るった側の人間です。少なくとも亀井氏にとって成田の血塗られた歴史は他人事ではありません。

現政権にもこうした人物がいるうえ、鳩山総理以下主要閣僚の多くは元自民党員ですから、全く無関係だともいえないでしょう。成田問題は自民党政権時代の横暴だとして他人事のように振る舞うのではなく、ここはやはり政府としてケジメを付けるべきでしょう。

成田空港の建設という公共事業は日本政府が行ったそれの横暴と失敗の見本市みたいなものです。その非を認めずに羽田の国際化を進めるというのは、この一件で翻弄された人たちの心情を無視するのに等しく、横暴を重ねることになると私は思います。

コメント

空港公団、警察の違法行為

空港公団、警察は「違法行為、残虐行為、犯罪でっち上げ」を、繰り返した。千葉県警、日本国家、空港公団は「空港の巨大化」を中止するべきです

  • 2010/07/01(木) 10:18:15 |
  • URL |
  • 友愛主義者 #0GVGFQGk
  • [ 編集]

>友愛主義者さん

成田空港の問題は普天間基地などとは別種のものですが、似たような構図があるのも確かだと思います。基地の存在は専ら安全保障などにかかり、空港は経済にかかるものですが、これらによって地元には安全面や環境面などマイナスの要素と経済面でのプラスの要素があるという点でも共通するでしょう。

地元住民に一方的な負担を強いて空港を拡張することは望ましくありませんが、単純に感情論で在り方を決めてしまうのも望ましいことではないと思います。

成田は旅客も貨物も新規乗り入れを希望しても枠が足りず、長々と待たされている海外の航空会社は何社もあります。例えば、ドバイのエミレーツ航空は今年3月下旬にようやく成田~ドバイ便を就航させましたが、実に15年も待たされました。

日本では首都圏の航空輸送能力が明らかに不足しており、長くこの状態が続くことは経済発展という面で不利になる恐れもあります。もちろん、経済発展のために負担を強いるのは良くありませんが、負担を避けるために社会インフラの整備拡張を滞らせ、経済が後退してしまうのも良くないでしょう。何事もバランスが重要ではないかと思います。

>空港公団

細かいことですが、成田空港は6年前に民営化されており、現在は公団ではなく株式会社になっています。

  • 2010/07/06(火) 00:30:41 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

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