酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

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ライカのようでハッセルブラッドようでもあるカメラ (その1)

私には悪いクセがありまして、某大手ネットオークションを眺めていて商品のレベルには到底見合わないと思われる安値で出品されていて誰も入札していない物件があると「こんな安値ではモノが泣く」とついつい感情移入してしまい、落札する気などサラサラないのに「どんなに安くても最低これくらいは・・・」と思うような金額を入れてしまうことがあるんですね。ま、大概はそれで落札とはならないのですが、ごく稀に対抗が現われず、そのまま異常な安値で落札してしまうことがあります。

そうして落札してしまったものとしては以前にもご紹介したクルマのタイヤの空気圧を調整するためのエアキャリーなどがあります。アレは出品者が自動車の整備関係ではなく、DIYの汎用エアツール関係に出品していたため、それを求めている人たちの目に触れなかったからではないかと想像されます。要するにカテゴリーの選択を間違ったということでしょう。こうしたカテゴリー間違いのほかにも、物件名の付け方が悪かったり誤字や脱字があったりすると、絞り込みやキーワード検索でヒットしにくくなって人目に触れにくくなることがあるようです。

そんな感じで出品者がツボを大外ししてしまったがために膨大な数の物件の中に埋もれて誰にも気づかれず、異常な安値で落札してしまうケースがごく稀にあるのですが、少し前にもまた同様のパターンでやってしまいました。ま、あえていくらで落札したかここでは言いませんが、とにかく昔から惹かれていて機会があれば手に入れたいと常々思っていたカメラがかなりの安値で私の許へ転がり込んで来ることになりました。

OM-1.jpg
OLYMPUS OM-1
元々はM-1という名で発売されたのは有名なハナシですね。
世界最大の写真関連見本市であるフォトキナで発表された折、
当時のエルンスト・ライツ社がオリンパスのブースを訪れ、
ライカM3をはじめとしたMシリーズとの混同を避けるため
「M」の使用を遠慮して欲しいと申し出ました。
それに対し、オリンパスはその場で了承したといいます。
アルファベット1文字で商標は取得できないため、
突っぱねても法的には問題なかったそうですが、
その辺は先達に対する敬意もあったのでしょう。


私にとってオリンパスといえば、父がミノルタXE(ライカにR3としてOEM供給された一眼レフカメラの姉妹機)を買う前、オリンパス・ペンFを使っていたというのが馴れ初めになります。ペンFはハーフサイズ機ということもあって画質の面で不利でしたし、デフォルトが縦位置というのも馴染みにくかったですし、当時の私はその価値に気付かず、あまり良い印象がなかったんですね。何度か借りたことはありましたが、それは趣味としてではなく、実用の道具としてのカメラでしかありませんでした。

後に父がミノルタX-700を買い、使わなくなったXEを私が譲り受けたこともあり、完全に押し入れの肥やし状態になってしまったペンFは私と1つ違いのいとこが熱烈に欲しがっていたので、彼の許へ行ってしまいました。

私が写真を趣味とするようになったのは大学以降で、そのときになって初めてあのカメラの偉大さに気付きました。中古カメラ店に行けば程度の良いものも並んではいましたが、価格はそれほど安くなかったこともあってなかなか食指は動かせませんでした。それよりもレンジファインダー機のオリンパスXAのほうに惹かれ、それを買ったりしましたが、以降オリンパスとはずっと疎遠状態でした。

社会人になったばかりの頃、メインはAF一眼レフのキヤノンEOSシリーズを使っていました。気が向いたらマミヤのセミ判を持ち出し、さらに気まぐれにライカⅢcや父から譲り受けたミノルタXEを使うという状態でした。他にも沢山持っていますが、手に馴染むカメラというのは徐々に絞られてしまうもので、大して使っていないカメラがドンドン増えていくと家族からの視線もドンドン冷たいものになっていくものです。

そんなある日、カメラ雑誌でM42マウント(いわゆるプラクチカマウント)の古いレンズが紹介されていました(このM42についてはいずれ改めて書こうと思います)。記事にすっかり感化された私はこのレンズとそれを使うためのMF一眼レフが欲しくなってしまいました。いえ、別に手持ちのカメラでも使えないことはなかったんですけどね。

EOSのEFマウントもミノルタのMDマウントもサードパーティのマウントアダプタを使えばM42マウントのレンズを装着することが可能で、後玉やその周辺がミラーやボディ内部に当たるといった相性の問題がなければ充分に使えました。が、電子制御された縦走りの金属膜シャッターは何となくイメージ的に合わないと思ってしまったんですね。

特にEOSのほうは当時の最上級モデルだった1Nも外装がプラスチックでしたし、デザイン的なバランスも良くありません。ミノルタXEは世代的にM42マウントが廃れてから十何年とか、それくらいしか離れていないこともあって見た目のバランスはそれほど悪くない印象でしたが、電子制御で低速でも高速でも変化のない金属膜の乾いたシャッター音は「何か違う」と思ってしまったわけです。(いまではすっかり改心して、デジタル一眼レフのEOS 5D Mk2にマウントアダプタを噛ましてM42マウントのレンズで遊んでますけど。)

当時の私は若気の至りといいますか、妙な思い込みといいますか、カタチから入る拘りみたいなものがありました。こういう古いレンズは低速で「ジィーッ」と鳴る機械仕掛けで、布幕が横に走るあの柔らかいシャッター音のほうが似合うと信じていたんですね(ま、いまでもそういうカメラのほうが似合うとは思いますが)。そこでたまらなく機械式シャッターの一眼レフをM42マウント専用として使うために欲しくなったわけです。

とはいえ、プラクチカをはじめとした純粋なM42マウントのボディは私の好みに合うもので程度もそこそこという個体が簡単には見つかりませんでした。また、目測で露出を合わせる技量が充分でない私にはラチチュードが深いネガフィルムならともかく、カラーリバーサルを使うと生かせるカットがかなり目減りしてしまいますし、かといって単体露出計を使うのが煩わしく感じるときもありますし、とりあえず露出計を内蔵していないものはNGとしました。こうして、あまり一貫性のない勝手な条件が次々に加わっていくことになったわけです。

実は、そのときOM-1も候補の一つに挙がっていたんですね。ブランドイメージにしてもデザインや全体的な佇まいにしても、私の好みとしてはかなり理想に近いものでした。これを設計した米谷美久(まいたに よしひさ)氏は「ライカⅢfが理想的なサイズ」とし、ペンタプリズムを頂くファインダー部のボリュームを最小限に抑え、ボディの全般的なサイズはライカとほぼ同じに作られていたことも惹かれた理由の一つです。

しかし、オリンパスのOMマウントはフランジバック(ボディとレンズの接合面からフィルム面までの距離)が46mmでM42マウントの45.46mmより0.54mm長く、補正レンズなしでは無限遠が出ません。ま、ごく僅かなフランジバックの違いを調整するための補正レンズゆえその影響も極々わずかで、並べて見比べても殆ど解らないといいますから、実用上は全く問題にならないようです。が、こういうモノは気分的な要素が小さくありません。

私の場合、わざわざ古いレンズを使おうというのはその味わいを楽しみたいという気分的なところから始まっていますから、純正には存在しない余計なレンズが介在するというのは「不純物が混ざっている」という印象に繋がり、何か違うような気がしてしまうわけです。

オリンパスはOM-1を発売する1年前にフルサイズの一眼レフカメラを早く発売して欲しいという海外部門(特にハーフサイズが全く普及しなかったアメリカ市場担当)の求めに応じてFTLというM42マウントの一眼レフカメラを発売しているのですが、何せ1年という短命でした(日本国内向けはM-1と同年の発売になりますので、さらに短命だったようです)し、そもそもが海外需要に応えるためのモデルでしたから、タマ数もメチャメチャ少ないようで、私は現在に至るまで現物にお目にかかったことが一度もありません。

ま、OMシリーズに比べても幾らか大柄だそうで、写真で見た限りでもOMシリーズほど洗練された印象はありません。実際、FTLを担当した開発チームにはOMシリーズの計画を明かさず、ごく短い開発期間に突貫工事でやりくりさせたそうですから、致し方なかったというべきでしょう。仮にコレを手に入れるチャンスがあったとしても、食指を動かしていたかどうか個人的にはかなり微妙なところです。

FTL.jpg
OLYMPUS FTL
OM-1に対して幅は4mm、高さは8mm、厚さは3mm大きく、重量は125g重く、
特にペンタプリズム部のボリューム感はまるで比べものになりません。
OM-1と同じメーカーが作ったカメラとは思えないような雰囲気です。
(あくまでも個人的な感想です。)


OM-1は私にとって長年気になるカメラの筆頭でしたが、このときはご縁がなかったということで諦め、ペンタックスMXを購入しました。このへんの詳しいハナシはいずれM42マウントのレンズについて書くときに譲りたいと思いますが、ペンタックスは日本初の35mm判一眼レフであるアサヒフレックスのM37マウント以降、現在のKマウントに至るまでM42と同じフランジバック45.46mmで貫いてきました。しかも、ペンタックスは現在もKマウントをM42マウントに変換する純正アダプタの生産を続けており、ヨドバシカメラなどでも普通に店頭在庫がありますから、いつでも誰でも購入できます。

ペンタックスMXもKマウントですが、純正アダプタでM42マウントのレンズが使えるという点を買い、このときはそれでM42マウントのレンズを楽しみました。OMシリーズとはまた別の機会にご縁があることを祈ったわけですが、あれから10年程でご縁が巡ってきたというわけです。

(つづく)

コメント

いつも主張のある内容楽しく読ませて頂いております.
分かります,その気持ち.私もこんな値段で晒されてはかわいそうだと,ハードオフを巡ってはかわいそうな子達を救出し,同じくOM-1は例のウレタン劣化によるプリズム腐蝕や巻き上げギアの移植のため二個一を繰り返し10台を超えてしまいました.MXはOM対策で0.5mmずつ小さくしたのは有名ですが,このため素人修理は無理とすら思えるほどの凝縮感はすばらしいです.自分はリバーサル派ですが,CCDに比べればリバーサルもハイライト部やシャドーのリニアリティは高いように思います.

続きを楽しみにしております.

  • 2009/10/28(水) 00:50:26 |
  • URL |
  • 色不異空 #mQop/nM.
  • [ 編集]

色不異空さん>

ずいぶんとOM-1に入れ込まれているのですね。私のような新参者が偉そうに蘊蓄を垂れるのが少々気恥ずかしくなってきます。


>OM-1は例のウレタン劣化によるプリズム腐蝕や巻き上げギアの移植

これらはOM-1の持病みたいなもののようですね。実は私が手に入れた個体もホンのごく僅かですが、プリズムの腐食が生じはじめているようです。まだ度合いは極めて浅いようで、気にしなければ気にならない程度ですが、それ以外のコンディションが良いだけに近いうちに何とかしようと思っています。

この個体の場合、プリズム以外は全く申し分ない状態ですから、ひとつのパーツを取るためにOM-1(プリズムはOM-10も互換性があるそうですが)の個体数を減らしてしまうのは憚られますので、メッキの再蒸着を検討しています。調べてみましたら、関東カメラサービスさんで対応できるようですので、コチラにお願いしようと考えています。
http://www.kanto-cs.co.jp/repair/qa/olympus1.html


>MXはOM対策で0.5mmずつ小さくしたのは有名ですが,このため素人修理は無理とすら思えるほどの凝縮感はすばらしいです.

今回の連載は4回になりますが、原稿は数日前にほぼ書き上げ、細かい直しをしながらアップする予定です。MXとの比較でこの点についても触れていたのですが、もたもたしている間に先を越されてしまいましたね。


>CCDに比べればリバーサルもハイライト部やシャドーのリニアリティは高いように思います

フィルムは長い時間をかけて洗練されてきましたから、まだ半導体の撮像素子に勝っている部分は少なからず残されていると思います。ま、デジタルもその特性に関しては撮像素子だけでなく画像エンジンによるところも大きいですし、いずれ表現力が向上してあらゆる面で銀塩を超えるようになっていくのでしょう。

でも、もっと感覚的で「味わい」といった言葉でしか表わしにくい領域については銀塩でなければ得られないものが沢山ありますから、全てをデジタルが凌駕することもないでしょうね。アナログレコードを知らずにCDで育った若い世代の間でもそれが再評価されているように、デジカメで育って銀塩カメラを知らない世代にもその「味わい」を理解する人たちがきっと現れると思います。

  • 2009/10/28(水) 23:35:34 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

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