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ライカのようでハッセルブラッドようでもあるカメラ (その2)

私は外観がさほどキレイではないライカⅢcを持っています。右手にかかる軍艦部のフチのクロームメッキが少し剥げており、ここの部分は下地の真ちゅうが覗いているという年季の入ったものです。ファインダーも実用上は全く問題ありませんが、スカッとクリアな状態ともいえず、60年以上も前に製造されたものであることを考慮すればそれほど悪くはないというコンディションで、コレクターからはあまり相手にされそうもない個体です。

全般的に並品レベルで飾っておくような代物ではありませんが、シャッタースピードは低速もちゃんと精度が出ているようです。新品同様のピカピカな個体だったら勿体なくて使えませんが、この程度の外観でメカは充分に快調といえる状態ですから、実用品としてみれば私にとってこれくらいが丁度良いコンディションだと思います。

このⅢcはオリンパスOMシリーズの生みの親である米谷美久氏が「理想的なサイズ」というⅢfとそんなに変わりません。Ⅲdでセルフタイマーが組込まれ、Ⅲfでストロボのシンクロが装備されたという程度で(Ⅲfの後期モデルではシャッタースピードの刻みが変わりましたけど)、デザインも寸法もメカニズムも基本的に同じものなんですね。

このスクリューマウントのライカは元々映画用だった135フィルムをスチルカメラに応用したウル・ライカという試作カメラ直系の市販カメラになり、その設計者であるオスカー・バルナック氏の名を頂いて「バルナック型」とも呼ばれます。実は、ライカ以前にも135フィルムを用いたスチルカメラは幾つも存在しており、ライカが元祖というのは誤りです。

しかし、この誤った俗説が定説のように語られているのもライカの完成度が極めて高く、決定版として確固たる地位を築いたゆえでしょう。米谷氏が「理想的なサイズ」というのも、その完成度の一部を構成する要素と見るべきで、実際に使ってみると良く解ると思います。

もっとも、OM-1は設計段階で無理矢理このライカの大きさに合わせ込まれたというわけでもなく、総合光学機器メーカーであるオリンパスの様々な機材にも対応できることが最優先されたといいます。顕微鏡や光学医療機器から天体望遠鏡に至るまで幅広く対応できることを前提として44.8mmという大口径のレンズマウントを採用し、最終的に落ち着いたのがこのサイズだったそうです。

実際に両者を並べてみますと外寸はかなり近く、ミラーボックスとペンタプリズムという一眼レフに不可欠な要素についてはそれなりのスペースを必要としていますが、そのボリューム感も最小限に抑えられているといった感じです。

OM-1vs3c.jpg
オリンパスOM-1(左)とライカⅢc(右)
ライカは巻き上げノブやシャッターボタン回りが低いものの、
ペンタプリズム部を除いたOM-1の肩の高さとだいたい同じくらいです。
また、OM-1は一眼レフですからミラーボックスの分だけ厚みがありますが、
それ以外はボディー全般の厚さも大差ありません。


特にOM-1で印象的なのはペンタプリズム部のコンパクトさです。この点について、写真家でありカメラ評論でも著名な田中長徳氏は発売当時のエピソードとしてこんな風に書いています。

私はカメラアート誌の等々力編集長からぴかぴかの小さな小さな一眼レフを見せてもらった。おそろしいほどに小さい一眼レフだった。

一眼レフのシンボルマークであるペンタプリズムの小ささは信じられないほどだった。その小さな三角形は、その下にペンタプリズムを収納する予定なのだけど、それほど小さなものはまだ完成されていないので、とりあえず新型カメラの模型がここにある、という気分を漂わせていた。でもこの新型オリンパスはファインダーを覗くと、ちゃんと京橋の建てこんだ家並みが見えたし、シャッターも静かな音で走った。

(C)カメラジャーナル 16号(1994年8月号)より抜粋


各社からAF一眼が発売されると、ストロボ内蔵が中級機以下ではスタンダードとなり、ペンタックスSFXで初めて採用されたペンタプリズム部にリトラクタブルのそれを被せるレイアウトが常識となりました。そうした流れからコンパクト一眼のペンタプリズムはより小さく纏めるということが不可欠なポイントになっていきました(といっても、そのクラスのAF一眼はガラスから削りだしたプリズムではなく、コストダウンと軽量化のためにダハミラーというミラーを組み合わせたものが一般的です)。

が、OM-1が登場した当時としてみれば、一眼レフは少し大きいくらいのほうが立派に見えて良いというような風潮さえありましたから、このコンパクトさは確かに驚異的だったでしょう。

OM-1vsMX.jpg
オリンパスOM-1(左)とペンタックスMX(右)

発売時期は4年も遅く、ライバルというには世代が少し違う気もしますが、ペンタックスMXがOM-1を強く意識していたのは幅、高さ、厚さが全てOM-1に対してキッカリ0.5mm小さいということからも明らかでしょう。こうしてMXは世界最小の称号をOM-1から奪い取ったわけです。MXは肩の高さがOM-1よりさらに低く、それゆえ手に取るとよりコンパクトな印象ではあるのですが、ペンタプリズム部は二回りくらい大きく感じ、この点でのスマートさはOM-1が数段勝っているというのが私の個人的な(思い入れタップリの)感想です。

OM-1がここまでペンタプリズムを(というよりペンタプリズムを納めるスペースを)コンパクトにできたのは何故かといえば、それは恐らくペンタプリズムそのもののサイズもさることながら、搭載位置を極限まで低くしているからだと思います。その秘密はプリズムの底部を平面とせず、凸レンズ状に加工したところにあると見られます。

念のため、一眼レフの仕組みをザッとおさらいしておきましょうか。レンズを通ってきた光はレフミラーで反射され、その直上にあるフォーカススクリーンに結像します。その状態では左右逆像に(鏡に映したように)なりますが、ペンタプリズムを通してこれを見ると正立正像、要するに上下も左右も正しい普通の像に見えるようになるわけですね。

一眼レフカメラの構造

シャッターボタンを押すとミラーが跳ね上がってシャッターが開き、フィルム(デジカメの場合は撮像素子)に結像します。つまり、ミラーの反射面からフィルム面までの距離とフォーカススクリーンまでの距離は等しくなっているということですね。ファインダーから見える状態がほぼそのままフィルム面に写し込まれるということで撮影結果が予測しやすいなど様々なメリットがあるため、一眼レフがカメラの王者として君臨してきたわけです。

そのフォーカススクリーンとペンタプリズムの間には拡散光を集光させて明るさを向上させたり、接眼光学系で生じる諸収差を補正したり、倍率を整えたりするためにコンデンサーレンズを配置するのが一般的です。が、OM-1はペンタプリズムの底部をレンズ状に加工することでコンデンサーレンズをペンタプリズムに一体化しているんですね。その分だけペンタプリズムの搭載位置を低く抑えることができ、あの驚異的なコンパクトさに仕上げることができたというわけです。

(つづく)

コメント

これは、僕にとってはとても嬉しいエントリですね。楽しく読まさせていただいています。

僕もOM-1で大切に瞬間を収集していきたいと思っています。焦らず、ゆっくり、じっくりと。

  • 2009/10/29(木) 21:58:00 |
  • URL |
  • Ocha #-
  • [ 編集]

Ochaさん>

長いことOMシリーズを愛用されてきたOchaさんにしてみれば私などヒヨッコもいいところですから、「そうだったのか」と思わせるようなことが一つでも書けていれば良いのですが・・・。

ま、新参者なりの視点で書いているという理解で、最後までお付き合い頂ければと思います。

  • 2009/10/30(金) 00:24:04 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

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