酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ライカのようでハッセルブラッドようでもあるカメラ (その4)

前述のようにオリンパスOM-1は機械式シャッターですが、様々な機構が立て込みがちな軍艦部付近にそのメカニズムを押し込むのではなく、ミラーボックスのお陰でスペース的に余裕があるボディ底部にそれを組み込んでいます。シャッタースピードはレンズマウント部に配置されたリング状のダイヤルで設定する方式とし、そのリング下部の内側にラック&ピニオンを設けて直近にあるシャッター機構へその動きを伝えるという極めて巧みな設計になっているわけですね。

しかも、こうして主要な駆動系メカニズムをボディ底部に集中させたレイアウトなら、モータードライブの装着にも機械的な接続が極めて容易になります。OM-1も始めからモータードライブの装着を想定して設計されたそうですが、こうした非常に合理的な構成には思わず唸ってしまいますね。

もちろん、レンズマウントの基部にシャッタースピードダイヤルをレイアウトしているのはOMシリーズが唯一というわけではありません。例えばニコンのニコマートFTなどの類例もあります。ただ、ニコマートFTは速度変換軸がシャッター面と垂直に交わるコパルのスクエアSというシャッターを採用したためにこうなりました。同じシャッターを初めて採用したトプコンRE-2はシャッタースピードダイヤルをレンズと同軸にせず、ボディ正面に独立したダイヤルを設けています(オリンパス・ペンFと同じような搭載方法になります)。

OM-1はシャッター機構の配置やそれに繋がるリング状シャッタースピードダイヤルにしても、コンデンサーレンズ一体ペンタプリズムにしても、合理的で巧みなスペース配分という点で、一頭地を抜いているといって良いかと思います。その4年後に発売されたペンタックスMXの緻密なメカニズムもそれはそれで凄みを感じさせますが、私はOM-1のほうによりスマートさを感じます。(あくまでも個人的な感想です)。

で、このリング状シャッタースピードダイヤルを実際に使ってみて思いました。「これはハッセルブラッドと同じだ」と。ま、ハッセルブラッドにもフォーカルプレーンシャッターを備える2000および200シリーズがありますが、主流はレンズシャッターです。それ用のレンズにシャッタースピードリングがあるのは当たり前なのですが、OM-1もシャッタースピードリングとフォーカスリングと絞りリングがレンズの軸上に並んでいるわけですから、使い勝手は酷似します。

ハッセルブラッドの場合、手前からフォーカスリング、絞りリング、シャッタースピードリングとなり、OMシリーズは手前からシャッタースピードリング、フォーカスリング、絞りリング(ズームレンズなど一部のレンズは絞りとフォーカスが逆のものもあります)と順番は異なります。しかしながら、これは全くの偶然なのでしょうけど、リングを回す方向もハッセルブラッドとOMシリーズは全く同じなんですね。双方とも構えた状態で時計回りに回せばシャッタースピードは遅くなり、絞りは小さくなり、焦点は近くなります。

OM-1レンズ周り

ボディサイズから感じるのはライカに匹敵する軽快感なのですが、撮影時に求められる所作はハッセルブラッドによく似ているというのがOMシリーズよりも前にライカやハッセルブラッドに触れてきた私の感想です。ライカといえば35mm判では圧倒的なブランドバリューを誇るカメラですし、ハッセルブラッドはブローニーフィルムを使うカメラの最高峰というべき存在ですから、この二つに通じる印象を併せ持つOMシリーズというのは何とも贅沢な気分にさせてくれるカメラです。(くどいようですが、あくまでも個人的な感想です。)

さらにいえば、OM-4Ti(およびOM707など)には「スーパーFP発光」と称する長時間発光が可能なF280という専用ストロボが用意され、フォーカルプレーンシャッターの35mm判カメラとしては世界で初めて全速同調を可能にしました。日中シンクロでストロボをフィルライトとして用いる際も高速シャッターが切れるため、絞りを開放にして背景をぼかすといったテクニックが使えるわけですね。当時このようなシステムは類例がありませんでした。

フォーカルプレーンシャッターの場合、中低速時は先幕を開いてから後幕が閉じるタイミングでシャッタースピードをコントロールしますが、高速になると先幕と後幕が作るスリットの幅でシャッタースピードをコントロールするようになります。F280のように長時間発光できない普通のストロボの場合、発光時間はせいぜい1/600~1/4000秒くらいの一瞬でしかありませんから、先幕が開ききって後幕が閉じるまで、即ちシャッターが全開になっている間にストロボを発光させなければなりません。

こうしてシンクロできるのは昔の一眼レフなら1/60~1/125秒くらい、現在のAPSサイズデジタル一眼でも1/250~1/500秒くらいが上限といったところでしょうか。しかし、F280は1/25秒という長時間発光が可能で、先幕と後幕が構成するスリットが走り切るあいだ発光し続けることができます。この長時間発光ができるお陰で1/2000秒の最高速までシンクロさせることができるというわけです。(布幕横走りのOM-4Tiの場合、金属膜縦走りのOM707に比べて幕速が遅いので、最高速時のガイドナンバーは2.6相当というかなりの暗さになってしまいますけどね。)

ちなみに、私が現在メインで使用しているEOS 5D Mk2の場合、FP発光可能なスピードライト580EXⅡを用いても1/200秒まで(APS-HサイズのEOS 1D Mk3との組み合わせでも1/500秒まで)しかシンクロしませんから、いまから丁度20年前に発売されたOM-4TiとF280の組み合わせが如何に特別な存在だったかがお解り頂けると思います。

当時の常識としては、ストロボ撮影で全速同調が必要となれば、レンズシャッター機の独壇場でした。中でもハッセルブラッドはレンズシャッターの老舗ですから、ストロボ全速同調といったらハッセルブラッドの代名詞みたいなイメージもありました。ま、ハッセルブラッドのシャッタースピードは最高1/500秒ですけど、当時はそんなスピードでストロボとシンクロできるフォーカルプレーンシャッターの35mm判カメラはOM-4TiやOM707などオリンパスのF280に対応するモデル以外に存在しませんでした。

ま、些かこじつけっぽくなってきましたが、OMシリーズというのは私の中ではハッセルブラッドに似た使い勝手で、スクリューマウントのライカと同じくらいのスマートさを併せ持っている極めて洗練された一眼レフというイメージなんですね。また、OMシリーズは前述のように同社の顕微鏡や光学医療機器から天体望遠鏡などにも対応していました。「バクテリアから天体まで」と言われた非常に壮大なスケールのシステムを誇っていたわけです。(現在のオリンパスは天体望遠鏡をやめていますし、顕微鏡には専用のCCDカメラユニットを用いるようになってしまいましたが。)

特に顕微鏡といえばライカもカールツァイスもルーツはそこです。両社とも当時の学術研究機材として最先端にあった顕微鏡のアクセサリーとしてカメラボディを接続できるというシステムを構成していました。私がオリンパスに感じていたイメージというのは、こうしたドイツの老舗メーカーにも通じる非常に硬派で知的な部分も大きなポイントになっていました。ま、あくまでも個人的なイメージですけどね。

で、私の悪いクセはこうして思い入れが強くなると少々悪ノリしてしまうんですね。ふと我に返ってみると、こんな状態に手持ちのOMシステムが広がっていました。

My OM system

(おしまい)

コメント

今回の記事は、身近な事もあって、とても楽しく読めました。なんだかユーザーとしてはとても嬉しいエントリですよね。

OM-4を使っていた当時、OM-4Tiが発売されて、その全速同調フラッシュの事を知った時、とても羨ましく思ったのを思い出しました。ただ、キャノンやニコンのフラッグシップに比べれば幾分安いモノの、とても4を買った後で買える値段ではなかったですし、当時ストロボT32(だったかな)を持っていましたが、ストロボ撮影はほとんどしなかったし、何より、たしか当時Tiはブラックがなかったと思います。当時僕はカメラと言えばブラック一色が硬派と勝手に思いこんでいたので(笑)ツートンはあり得ませんでした。今はツートンカラーも好きですが……(事実現在使用中のOM-1はシルバーですし)。

結婚してしばらくして、またカメラをやりたいなぁと思っていたとき、あの時は4Tiのブラックが現役で販売されていました。あの時無理をしてでも買っておけば、今とはちょっと違ったのかなぁと思います。

ちなみに4は売ったりしたのではなくて、修理に出したらお金がなくって取りに行けず、そのまま修理に出した写真屋さんが潰れてしまった、という理由で手元からなくなりました(遠い目

  • 2009/11/01(日) 16:30:26 |
  • URL |
  • Ocha #-
  • [ 編集]

Ochaさん>

今回のエントリは身近な人に話しても誰一人として乗ってくれそうもない分野でした。ま、ライカを知っていてもハッセルブラッドを知っている人なんてそれほど多くありませんし、古いカメラに興味がない人にしてみればメカニカルシャッターのレイアウトなど語られても鬱陶しいだけでしょう。ですから、こうしてコメントを頂くとblogをやっていて良かったなと思います。

上の写真でお解りかと思いますが、つい調子に乗ってOM-4Tiと専用ストロボのF280も手に入れてしまいました。テストで一度だけウチのネコをモデルにして日中シンクロで背景をぼかしてみたり、スローシンクロで動体をブレさせてみたり、スーパーFP発光ならではの画を撮ってみましたが、よくよく考えてみるとこんな写真などこれまでに撮ったことがなく、これからも撮る機会があるか自問してみても頭の中には大きな「?」マークしか出てきませんでした。

ま、カメラに限らずメーカーというのは類例がない特色を付加価値として製品の売り込みに利用して、私のような思い入れが激しく働いてしまうような消費者がまんまとその罠にはまってしまうということがずっと繰り返されてきたわけですね。スローシンクロでの動体ブレは普通のシステムで無理だとしても、冷静に考えれば日中シンクロでの背景ぼかしなんて低感度フィルムを使うとか、NDフィルタで減光するとか、高速シャッターに頼らなくても代わりになる方法はあるんですよね。

OchaさんのOM-4が戻らなかったエピソードは確かOchaさんのblogで拝読した記憶があります。残念ですよね。客から預かったものがあるなら閉店が決まった段階で連絡するのが常識だと思いますが、それも債権処理のために売り飛ばされてしまったのでしょうか?

いまはデジタルに移行するために銀塩カメラを手放す人が多いようで、ライカのように値落ちしないものもありますが、全般的には以前より中古の相場も安くなっている印象です。私のような身分でもハッセルブラッドの良品を手に入れられたのはこうした相場の事情と、ネットオークションという中間マージンが省けるシステムが発達したお陰でしょう。

上の写真のように私が所有しているOMシステムはプレミア付となった40mm/F2を唯一の例外として、いずれもオークションなどで安く手に入れたものです。手元の資料ではOM-4Tiの定価は129,000円となっていますが、40mm/F2を除いた7本のレンズとOM-1およびOM-4Tiのボディ、F280ストロボ全部足してもおつりが来るほど安くなっているんですね。

解放F値が小さくて人気のあるレンズでも40mm/F2ほどのプレミアが付くことは滅多にありませんし、明るさがそこそこでタマ数の多い普通のレンズなら大概は1万円未満で入手可能です。フランジバックが長いOMマウントですから、アダプタを使えばEOS5D2にも問題なく装着できてしまうので、ついつい数を増やしてしまいました。

一時はキリがないと思いましたが、40mm/F2を手に入れて一つの山を越えたという満足感もあり、オークションのチェックをやめました。が、また見始めたらアレもコレもと再び際限がなくなりそうなので自重を続けることにしました。多分、Ochaさんもはまってしまう恐れがありますので、家庭の円満を考えたらオークションは見ないほうが良いと思います。

  • 2009/11/04(水) 01:13:51 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

OM-1についてさらに愛着が湧いてくるような素晴らしいエントリをありがとうございます!

私もOM-1を所有しているのですが、フィルムを巻き上げた状態でシャッターダイアルを回すのは良くないということを聞きました。不躾な質問で恐縮なのですが、その理由が気になっています(笑)。知っていたら教えていただけると嬉しいです。

素晴らしいエントリをありがとうございました!

  • 2010/08/27(金) 22:11:51 |
  • URL |
  • asa #mQop/nM.
  • [ 編集]

asaさん>

殆ど個人的な思い入れで書いた冗長なエントリにお付き合い下さいまして有り難うございます。

当時のカメラは見た目も機械的な構造も現在に比べると各メーカーの特色が強かったように思います。現在でも根強いファンがいると思いますが、ニコンのFシリーズとオリンパスのOMシリーズは特にファン層が厚いような気がします。

これは日本国内だけでなく、世界的にも言えることで、海外でも復刻して欲しい一眼レフカメラの人気投票をすると、FシリーズとOMシリーズ(どちらも一桁シリーズ)がトップ争いをしているそうです。日本ではOM-1のほうが人気がある印象ですが、海外では実用性の高さを求める人が多いようで、むしろOM-2のほうが人気だというところは日本国内と違う感じですが。

ご質問の件ですが、私はそのようなハナシを聞いたことがないので、正直なところよく解りません。こうしたことが言われるとき、問題になるとしたら「メカに負担がかかって故障の原因になる」とか、故障の心配はなくとも「シャッタースピードの精度が低下する」とか、そういうパターンが殆どでしょう。

例えば、この連載にも登場したライカなどはシャッターが動作するとシャッタースピードダイヤルも回転してしまいます。なので、巻き上げ後にシャッタースピードを合わせるような仕様になっているんですね。また、古いソ連製カメラにはフィルムの巻き上げノブとシャッタースピードダイヤルが兼用になっていて、巻き上げ後にシャッタースピードを調整すると精度が落ちるというものもあります。

ただ、OM-1の場合、私の経験では巻き上げ後にシャッタースピードダイヤルを動かしても精度に問題を感じたことはありません。(テスト撮影でネガの濃さをキッチリ確認したとか、そういうことはやっていませんのでので、断言はできませんが。)

もちろん、機械モノですから、使っているうちに摩耗もあります。OM-1で多いメカニカルトラブルは巻き上げ途中でロックしてしまったり、巻き上げが空回りしてしまうというパターンになりますが、いずれも部品の摩耗が原因で、これらはシャッタースピードダイヤルの動きと直接関係のない部分になりますから、因果関係もないと思います。

機械式は色々クセがあるのも確かですが、OM-1は初めからモータードライブ類を装着することも前提として設計されていたハズです。巻き上げてからシャッタースピードを調整すると問題が生じるようでは、モータードライブは使えないということになってしまうでしょう。実際にはプロユースに対応できるシャッターの耐久性を備えており、10万回が保証されていました。それは手動も自動も関係なかったと思います。

気になるようでしたら、巻き上げ後の操作を控えるようにしたほうが良いかも知れませんが、私はシャッターを切ったらすぐに巻き上げるのかクセになっており、殆ど無意識に巻き上げています。しかも、絞り優先で撮ることが多いですから、巻き上げ後にシャッタースピードを調整できないとなると、かなり使いにくくなってしまいますね。

  • 2010/08/31(火) 00:35:50 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

不躾な質問に対して、ご丁寧な回答ありがとうございました!

こんな質問を書いてしまったのは、私もシャッターを切るとすぐに巻き上げるタイプですので、撮影時にもやもやとしたものを感じてストレスだったのです。。。

なるほど、確かにモードラが使えないということになりますよね。因果関係もはっきりしませんし。。そうするとライカをお使いのユーザーさんがカメラの一般的な使い方ということでそういう話をしていたのが、人づてに変化して、OM-1の話として僕の耳に入ってきたのかもしれません。

ありがとうございました!
とてもすっきりとした気持ちです(笑)

  • 2010/09/17(金) 11:38:01 |
  • URL |
  • asa #HfMzn2gY
  • [ 編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/tb.php/496-9c945fbb
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

まとめ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。