酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

東京モーターショーは何処へ行くのか? (その2)

かつて、自動車に求められた環境性能は専ら排出ガスに含まれる大気汚染物質(窒素酸化物、硫黄酸化物、粒子状物質、一酸化炭素、炭化水素など)を如何にして減らしていくかといったものでした。

ガソリンエンジンに関しては旧式のディーゼルエンジンに見られた副燃焼室を応用したホンダのCVCCなど特殊な例もありましたが、三元触媒コンバーターの実用化で大幅に前進し、最近は燃焼状態のマネジメントもより高度になり、セラミックス技術の向上で触媒の効率も高まるなど排出ガスの後処理技術にも一層の磨きがかかっているようです。

ディーゼルエンジンもコモンレール式の燃料噴射やDPF(粒子状物質を濾し取って酸化処理するフィルタ)の進歩、あるいは日産ディーゼルが先鞭を付けた尿素SCR(尿素液を用いて窒素酸化物を後処理するシステム)などで浄化が大幅に進みました。

特に粒子状物質に関してはかつて石原都知事がペットボトルに詰めたそれをぶちまけて見せるというパフォーマンスでメディアもこれに食い付き、殊更に注目されました。当の東京都は使用過程車にたった一度だけ規制をかけて終わりでしたが、国の規制は段階的に厳しさを増し、もはや「測定技術が追いつかなくなるのでは?」というレベルまで強化されてきています。

ですから、今回の東京モーターショーもそうした技術については日産がクリーンディーゼルを積極的にアピールしていたのが目立ったくらいで、メディアや多くの来場客が注目しそうな環境性能は明らかにCO2の排出削減に集約されているといった印象でした。各メーカーもそこに最も力を入れて存在感を示そうとしていたといっても過言ではないでしょう。

こうした方向性がより明確になったのはやはり12年前でしょう。1997年といえば12月に京都議定書が採択され、程度の低い仮説に過ぎないCO2の温室効果による地球温暖化というストーリーが世界をまたぐ環境問題としていよいよ既成事実化されました。世論もメディアも企業もさらにそのイメージが深く擦り込まれてしまった年でもあります。プリウスが市販されたのもこの年でしたし、燃料電池車が大いに持て囃され、これを2005年までに量産・市販するとトヨタが宣言したのもこの年でした。

ついでに言えば、日産が世界で初めてリチウムイオン電池で走る電気自動車、プレーリージョイEVを市販したのもこの年でした。が、当時は殆ど話題になりませんでした。それは自動車業界全体が燃料電池ブームに沸き立ち、メディアもこれを大いに煽っている真っ只中だったからではないかというハナシは以前にもしましたね。

結局、この12年間でこの分野に劇的な進歩はありませんでした。リチウムイオン電池もコストやエネルギー密度はそれほど向上していませんし、燃料電池車などいつになったら個人消費者向けの市販レベルまでコストダウンできるのかその目処すら全く立っていません。12年前にはトヨタのメインステージを華々しく飾った燃料電池車は、今年トヨタのブースの端っこにひっそりと佇んでいる状態で、まだ諦めたわけではないということをさりげなく示しておくために展示されていたというような雰囲気でした。

トヨタFCHV-adv
トヨタFCHV-adv
前回は大阪府庁前から東京のMEGA WEBまでの約560kmを
エアコン常時使用のまま途中で水素燃料をチャージすることなく走破した
というトピックがありましたが、今回はその手のネタもなかったようです。
カラーリングも例年より大人しく、そのためのカネも惜しんだという印象です。
トヨタのブースの端っこ(レクサスではなくご覧のようにダイハツ寄り)に
ひっそりと佇んでいるといった風情で、来場客の関心も極めて薄く、
12年前の市販宣言を思い起こせばとても信じられないくらい
ぞんざいな扱いになっているのが現在の燃料電池車が置かれている
その立場を物語っているようでした。


「V Flow FCスタック」と称する独自の燃料電池を搭載したFCXクラリティという専用車を仕立て、燃料電池車には並々ならぬ投資を続けてきたホンダは、今年もメインステージにこれを配置してアピールには余念がありませんでした。様々なマネジメントをリファインさせて航続距離も年々伸ばしているようです。が、やはりネックとなる価格面には何の進歩もないのでしょう。個人向けの販売を臭わせるような要素は微塵も感じられないのは3年前にロサンゼルスオートショーでこのクルマが発表されたときから何ら変わっていません。

ホンダFCXクラリティ
ホンダFCXクラリティ
今年の展示車両を見ても概要説明を聞いても進歩を感じさせる要素は一切なく、
個人向けの販売まで道のりはまだまだ険しいという印象がより強くなりました。
2006年のデトロイトショーでは3~4年以内に市販すると豪語しましたが、
昨年11月から政府機関や企業向けのリース販売を開始しただけです。
これまで内閣府や環境省、帝都自動車交通㈱に納車したほか、
今年新たに出光興産㈱と岩谷産業㈱の2社に納入が決まったくらいで、
個人向けの発売がいつになるのかは全くの白紙状態でしょう。


ま、300気圧に耐えるアルミライナーにカーボンファイバーを巻いたコンポジット構造の超高圧水素タンクだけでも中級車並みのコストだといいます。同様に超高圧タンクを必要とするCNG(圧縮天然ガス)車もここがネックとなっていますが、燃料電池車はさらに高価な燃料電池ユニットが必要ですから、現在のような構成で大衆車レベルまでコストダウンするなど夢のまた夢といったところでしょう。

ちなみに、FCXクラリティのリース料は定期メンテナンスと自賠責保険料込み、消費税込みで毎月84万円というとんでもない金額です。1台当たり年間1000万円超という莫迦げたリース料を内閣府や環境省は支払っているわけですが、これが我々の血税であるのは言うまでもありません。こんなイメージ先行の応用製品に投資するより、燃料電池そのものの基礎研究をもっと支援し、抜本的な技術革新を促すべきです。

当初アナウンスされていたガソリンもしくはメタノールを改質して水素を取り出す方式などいつになったら政府や企業向けにでもリース販売に漕ぎ着けることができるのでしょう? あのブームの最中には10年ほどで目処が立つような口ぶりでしたが、実際に10年以上経った現在は全く混沌とした状態です。

燃料電池車は特に航続距離などで徐々に性能を向上させているのは確かです。が、コスト面では現実的なレベルまで桁が違う状態が続いています。ま、それはリチウムイオン電池車も全く同じ事で、そこそこ現実的といえる航続距離を実現しているテスラ・ロードスターなどもやはり現実的な乗用車のコストと桁が一つ違い、両者の置かれている状況に大きな違いはありません。

今年は多くのメーカーがリチウムイオン電池をメインステージに飾っていましたが、政府による高額な補助金とメディアの偏向報道によって創作されたリチウムイオン電池車ブームに乗っただけと見るべきでしょう。

トヨタFT-EVII
トヨタFT-EVII
トヨタもメインステージにはリチウムイオン電池車を配置し、
今年になって急激にブレイクした電気自動車ブームに乗ったようです。
ちなみに、このコンセプトカーは近距離移動用のシティコミューター
といった位置づけになるようで、現在のバッテリーの性能を考えれば
至極妥当なコンセプトといえます。


もちろん、三菱のi-MiEVや富士重工のプラグイン・ステラなど、既に市販が始まっている電気自動車も大々的にアピールされていましたが、実質的な航続距離の短さと、充電ステーションの少なさと、ベースとなったガソリンエンジン車が丸々買えてしまうほど高額な補助金を受けてもベース車の2~3倍にもなる非現実的な価格という三重苦ですから、この電気自動車ブームが去るのも時間の問題でしょう。このブームが去る前に現実的な電気自動車を成立させられるような次世代バッテリーが実用化されることもたぶんないでしょう。

技術的な確定要素が少ないまま期待感だけが著しく膨らんでいるという現状を冷静に受け止めれば、この電気自動車ブームも12年前の燃料電池車ブームと同じ流れを繰り返すのがオチだと思います。今回のモーターショーで実際に幾つもの電気自動車やその主要技術の展示を見て、旧態依然の状態を再認識した私は、その印象がより強いものになりました。

ま、地球の平均気温もエルニーニョがあった1998年をピークとして、それ以降は上昇傾向が一切見られず、近年はむしろ下降しています。あれだけ地球温暖化問題を煽ってきたBBCも電子版に「What happened to global warming? (地球温暖化に何が起こったのか?)」というタイトルで「最近11年間の地表の平均気温は1998年よりも低く、その原因は太陽活動の減衰期に入ったことで太平洋の海洋循環が寒冷期に入ったため」といった趣旨のレポートを載せたくらいです。

リチウムイオン電池車も燃料電池車も地球の平均気温も、この12年間で状況は殆ど変わっていないというわけです。

(つづく)

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/tb.php/498-e3cb6920
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

まとめ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。