酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

圧搾空気で走るクルマ

当blogでクルマのネタというと、プリウスかタタに集中してしまって恐縮ですが、かなり妖しげなニュースが飛び込んできましたので、個人的な感想を述べておこうかと思います。

インド・タタ、世界初の空気動力自動車…燃費リッター50キロ
年内にもニューデリーなどに投入

1月に約29万円の低価格車「ナノ」を発表したインドの自動車大手、タタ・モーターズが、フランスのベンチャー企業が開発した世界初の空気動力乗用車「OneCAT(ワンキャット)」の製造、販売を計画していることがわかった。英メディアが伝えた。

 新型車はインド国内で製造し、早ければ年内にも、ニューデリーなど人口過密の都市部の市場に投入。周辺国にも輸出する。

 英公共放送BBC(電子版)などによると、OneCATは、仏ベンチャー、MDIエンタープライゼズ(カロス市)が基本技術を開発。車体のシャシーに設置されたタンクに圧搾空気を満たし、動力とする。

 都市部の短い距離を移動するだけなら圧搾空気だけで間に合うが、長距離走行時にはガソリンなどの燃料でピストンを動かし、圧搾空気を補充する。時速50キロを上回るスピードが出るという。

(後略)

(C) FujiSankei Business i. 2008/2/19


以下要約しますと、GFRP製ボディで350kgまで軽量化し、燃費は50km/Lを豪語、価格も50万円ほどと伝えられています。詳しくはヘッドラインのリンク先をご参照ください。

onecats.jpg

タタが圧搾空気動力車のライセンスを取得したというニュースは昨年の7月にも流れていましたが、その動力システムを開発したフランスのMDIエンタープライゼズなるベンチャー企業はかなり胡散臭い会社なんですね。

5年くらい前に同社のMiniCATsというモデルがエアーカージャパンというところから日本でも発売されるとアナウンスされました。300気圧の圧搾空気を蓄え、それで水平対向ピストンを駆動、連続走行距離約170㎞、最高速度110㎞/hを豪語、エアコンやABSも装備して約90万円の販売価格が示されたうえ、2004年11月には日本国内生産もスタートするとのことでした。

が、間もなくエアーカージャパンのサイトは閉鎖され、話も霧散してしまいました。ね、もの凄く胡散臭いでしょ? だいたい、自動車が170kmも走れるほどのエネルギーを蓄えられるエアータンクがあるなら、野外で圧搾空気を使う業種(例えば建築とか土木とか)でバカ売れするでしょうから、わざわざ自動車なんか作らなくても大儲けできると思います。


実は、電力業界では夜間や休日などオフピークの余剰電力を利用して圧搾空気でエネルギー貯蔵するCAES(Compressed Air Energy Storage)というシステムがすでに実用化されています。ドイツのフントルフ(1978年より稼働)や、アメリカのマッキントッシュ(1991年より稼働)など、商用プラントもいくつかあるんですね。

でも、世界的にはあまり普及していません。特に、高圧空気貯蔵空洞の気密性と安全性を確保しつつ、いかに経済的にこれを建設するかが大きな課題となっているからなんですね。海外の事例ではいずれも地下の岩盤層に貯蔵空洞を作って数十気圧の圧搾空気を蓄える方法がとられています。が、地震国である日本ではまだパイロットプラントの稼働で安全確認のための実験がなされたくらいです。

しかも、CAESはさほどエネルギー効率が良くありません。先進国であるドイツKBB社の施設の場合、これによるエネルギー損失は50%程度だといわれています。つまり、圧搾空気を作って貯蔵し、その圧搾空気から得られるエネルギーは元の半分程度に低下しているということです。通常の余剰電力は貯蔵せずに捨ててしまうケースが殆どですから、半分でも蓄えられるというのはメリットがあるでしょうけど。


さて、タタが実用化すると報道されている圧搾空気動力車ですが、元ネタはBBCの電子版だそうです。イギリスの公共放送ではありますが、MDIのサイトにあるOneCATのスペックと食い違うところも多々ありますので、どこまでアテになる報道なのか現時点では何とも言い難いところです。昨年の報道からタタとMDIとの関係に脈絡がないわけではありませんが、実用化となるとやはり「ホンマかいな?」と思ってしまいます。

上述のCAESは回転運動で動力を取り出すガスタービンによりますが、それでもエネルギー効率は良くありません。さらに損失の多いピストンエンジンでの効率はいかばかりでしょうか? 果たして圧搾空気動力車は本当にエネルギー効率の優れたクルマといえるのでしょうか? 50km/Lと称する燃費は本当に実現可能なのでしょうか? 個人的には大いに疑問です。(といいますか、本心では「嘘こけ」と思っています。)

タタ・ナノ、ヨーロッパへ?(その2)」の結びで「こういう野心的なメーカーにはそれなりの結果を出してほしいと願っています」と書きましたが、それもやり方次第です。このニュースでは詳細がつかみきれませんので、どこかの段階で錯誤があって、振り回されているだけかも知れません。が、その責めがタタにあるのならば、私は彼らを少々過大評価し過ぎたかも知れません。

私の座右の銘は「君子は豹変す」です。自分の読みが誤っていたら速やかにそれを認め、見解を改めるのに抵抗はありません。



2008年5月7日追記

このエントリの内容は不完全な(というより誤った)報道によって生じた誤解を元に書いてしまったようです。後に調べて解った内容を踏まえ、続報というかたちをとらさせて頂きましたので、是非そちらもご一読下さい。→続報「エアカーの実態

テーマ:自動車全般 - ジャンル:車・バイク

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/tb.php/50-68ee09a9
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

まとめ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。