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東京モーターショーは何処へ行くのか? (その6)

まだまだ現実性の乏しい電気自動車を普及させるために1台当たり百何十万円という高額な補助金を支給するくらいなら、原付に認められた出力の上限を緩和し、電動バイクにもガソリンエンジンのそれと同程度の動力性能を与え、普及を促すほうが遙かにマトモな政策といえるでしょう。もちろん、その前にLCAによる環境負荷の評価をしておく必要はありますが、電動のほうが環境負荷を低減し、エネルギーの利用効率を向上させられるのであれば、電気自動車などよりずっと現実的といえる電動バイクの普及を優先させるべきです。

今回の東京モーターショーではヤマハだけでなく各社から電動バイクが提案されていましたが、メーカーはこうした基準緩和についてももっと大きな声で叫ぶべきだったと思います。また、メディアも電気自動車のようにまだまだ先行きが不透明な乗り物に入れ込むより、もっと近い将来に可能性が期待できる電動バイクについて、もう少し力を入れるべきでしょう。

特に新聞というメディアにとって原付は配達に不可欠な乗り物といえます。少なくとも、私の家の近所の新聞販売店では自転車など殆ど使っておらず、毎朝4時くらいになると静まりかえった住宅地を彼らのビジネスバイクのエンジン音が行き交って安眠を妨げられることがあります。彼らにしてみればこの問題は決して他人事ではありません。

ビジネスバイクの4サイクルエンジンは比較的静かではありますが、どうあがいても電気モーターには敵いません。新聞販売店の多くは早朝にこれを何台も走らせているのですから、そうした部分も含めてもっと話題にし、真剣に導入を検討していくべきです。ま、本気でCO2を減らしたいというのなら猛烈に非効率な紙媒体などやめてしまい、電子配信へ移行していくべきですけど。

また、日本郵政グループは集配用の二輪車を全国で8万9000台以上保有しているといいます。いきなりこの全てを電動化させるのは無理でしょうし、使用年数の少ないものを代替するのも資源の利用効率を考えるとマイナスになってしまう恐れがあります。仮に代替サイクルを10年として、新車への代替時に電動へ切り替えていくとしても、毎年9000台近い需要が見込めます。かつてヤマハが販売していたパッソル-Lが年産3000台程度だったことを考えれば、日本郵政グループだけでその3倍という数字は侮れないでしょう。

ホンダEV-Cub
ホンダEV-Cub
ホンダもスーパーカブの電動コンセプトモデルを展示して、
ビジネスバイクの分野でも電動化を提案していました。
もっとも、ホイールの意匠などを見てもショーモデル然としており、
市販を臭わす雰囲気はまだまだ感じられませんでしたが。


実は、現在日本全国で何台の原付を保有しているのか、正確な数字は解っていません。以前は国土交通省の自動車交通局が集計していたのですが、2006年で打ち切られているんですね。そもそも、原付には車検がなく、ユーザーが転居などで越境しても登録手続を怠るケースが少なくないといった理由で追跡が困難だったり、保有状況の調査に人員を割けない市区町村が増えて協力が得られなくなってきたなど、データの信頼性が確保できなくなってきたことから調査が打ち切られたのだといいます。

調査が行われていた2006年以前の傾向から推測しますと、第一種原付の保有台数は700万~800万台、第二種は120万台前後といったところでしょうか。第一種だけでも国民16人に1台という割合ですから、減少傾向が続いているとはいえ潜在的なマーケットの規模は決して小さくありません。

200kgにもなるリチウムイオン電池で公称160km、正味はその半分くらいしか走れない電気自動車に対し、電動バイクはたかだか6kg程度のそれで公称40km少々、正味での目減りはそれほど大きくないようですが、半減すると想定しても日常的な用途にはそれなりに対応できるでしょう。

三菱の電気自動車i-MiEVを80%(実用上の満充電)まで30分で充電できる急速充電器と同程度のものを用いれば、バッテリー容量がi-MiEVの1/27程度でしかないヤマハの電動バイクEC-02なら1分少々で充電完了となります。もし、こうしたインフラが整えば、ガソリン車と比べてエネルギーチャージという点でも大きく見劣りすることはなくなるでしょう。もっとも、このレベルの充電器は非常に高価ですから、その普及は容易ではないと思いますが。

EC-02は付属の充電器で約6時間かかるそうですが、これは充電器のコストを抑えるために能力の低いものを付属させているからでしょう。これもi-MiEVに付属する100V電源用と同程度の充電器を用いれば25分足らずで充電できる計算になります(あくまでも単純計算ですが)。i-MiEVを30分で急速充電できるそれは高価なだけでなく、一般的な住宅や商業施設など100V電源しか確保できない状態では対応できないのもネックです。

i-MiEVに付属するものと同程度の充電器ならそこまで高価ではありませんし、家庭用100V電源で使えるものですから、電源の確保については非常に容易です。電動バイクの充電用としては、このレベルの充電器を用いるのが現実的といえるでしょう。こうしてみますと、インフラの整備についても電動バイクならそのハードルは電気自動車ほど高くないと考えて間違いありません。

バッテリー容量が小さくても良いということは、バッテリーの性能の低さに因むデメリットが軽減されるというところへ繋がります。航続距離にしても充電時間にしても製造コストにしても、電気自動車では普及を阻む大きな障壁がいずれもバッテリーの性能の低さに起因しているといっても過言ではないでしょう。が、容量が小さいバッテリーでもそれなりに製品として成り立ちやすい電動バイクは、その障壁がずっと小さいと見て良いでしょう。

物事には順番というものがあります。どの国を見ても乗用車が普及する前段にはほぼ例外なく自動二輪が普及しています。この連載の初回冒頭でもご紹介しましたように、第1回目の東京モーターショーに出品された個人ユーザー向け製品は自動二輪が圧倒していたように、最初の波は二輪車からやってくると見るべきです。

現在急速に経済を発展させているアジア諸国ですが、庶民にとって自動車はまだまだ高嶺の花という国のほうが多いのが実情です。しかし、その一方で自動二輪が爆発的に普及している国は少なくありません。こうした部分を見ても、やはり彼らは日本や他の先進国が歩んできた道を同じように辿っているわけですね。

ガソリンエンジンが電気モーターに置き換わっていくのもまずは二輪車からでしょう。前述のように長い航続距離を求めるユーザーが比較的少ない原付などは、法的な制限によるパワー不足の問題を除いて性能面で現実性を欠いているというほどではありません。価格面でもかつてヤマハから発売されたパッソルなどリチウムイオン電池を奢ったものでも20万円少々に収まっていますから、原付スクーターの上級モデルや一般的なビジネスバイクと同レベルです。

しぶとく生産が続けられているホンダ・モンキーなど、いまや30万円弱というハイプライスになってしまいました。これを考えれば、仮に法規が緩和されてよりパワフルなモーターが与えられ、それで航続距離が短くなってしまわないようにバッテリーの容量をより大きいものにして多少コストアップしても、ランニングコストの安さでメリットをアピールできるでしょう。

ただし、長期の継続使用でバッテリーの交換が必要になった場合はランニングコストのメリットが大幅に損なわれてしまいます。ですから、そうした部分については当面のあいだ政府や地方自治体などが補助金を支給してサポートしたほうが良いかも知れません。それでも電気自動車に支給されるべらぼうな金額の補助金を考えれば遙かに現実的といえるでしょう。

長距離ツーリングを楽しみたいという人にとって、航続距離が短く充電施設も皆無に等しい電動バイクは論外でしょう。しかしながら、日常的なコミューターとして原付を利用している人にとっては、現在の法規上パワー不足になってしまうという不都合を除けば実用上の能力に問題ないというケースも少なくないでしょう。そうした使用条件を想定すれば、電動バイクの普及は電気自動車より遙かに容易だと思われます。

逆にいえば、原付を電動に置き換えていくことすらままならないようでは、電気自動車の普及など夢のまた夢と理解しておくべきでしょう。私は今回の東京モーターショーを見てそうしたことを感じました。が、これを伝えたメディアの殆どは電気自動車にご執心です。こうした物事を見る目のない低レベルなメディアにも現状を悟らせられるような情報が提供されるような場であってくれれば、東京モーターショーに対して私は何も言うことがなくなるでしょう。

(つづく)

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  • 2012/06/15(金) 23:22:03 |
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