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東京モーターショーは何処へ行くのか? (その8)

従来の東京モーターショーでは大したことのないライフスタイルやユーティリティを提案するような軽薄なコンセプトカーが幾つも展示されていましたが、今年は大幅に減りました。市販を想定したデザインスタディというべき参考出品車も減ったように思います。そんな中で特に注目度が高かったのはトヨタのFT-86だったと思いますが、逆にこの程度のクルマが注目されていたくらいですから、全般的に参考出品がかなり小粒だったということでしょう。

いきなり脱線しますが、ついでですのでFT-86に対する私見を少々述べておきましょうか。

トヨタFT-86
トヨタFT-86
トヨタグループに入った富士重工お得意の水平対向エンジンとインラインレイアウトを生かし、
そこからフロントアクスルを抜いたフロントエンジン・リヤドライブという構成になります。
全長こそ伝説のAE86より短くなりましたが、ホイールベースと全幅が大きく拡大され、
全般的には全く異なるカテゴリーのクルマになったと見て間違いないでしょう。
AE86の重量は1トンに満たないライト級でしたが、これはどう見てもミドル級以上といった印象です。


このクルマはネーミングからしてあのAE86を強く意識したものであるのは明白です。AE86が発売されたのは今から26年前ですから、当時20代だった人は現在40代後半~50代前半くらいになっています。かつて現役時代のAE86でヤンチャしていた彼らは、子供も手が離れてそろそろファミリーカーを卒業しようといった世代になっていると考えられます。トヨタがFT-86を企画したのは、そうした需要を睨んだマーケティングによるのではないかと想像されます。(あくまでも個人的な想像です。)

ハナシを戻しましょうか。こうして電気自動車を中心としたコンセプトカー以外は全般的に緊縮状態で、注目されるような展示が例年よりも大幅に減っていました。その分だけ技術的な展示品やその解説が書かれたパネルなどを見ている人が例年よりも増えたように思います。これらの技術展示はいつもならちょっと待っていればすぐに人影がなくなってゆっくりと写真を撮ることができたのですが、今年は少しイライラするくらい待たされることが度々ありました。

歴代プリウスのハイブリッドシステムのカットモデルを見る人たち
歴代プリウスのハイブリッドシステムのカットモデルを見る人たち
初代から最新の3代目までそのエンジンとモーターとそれを結ぶシステムと
モーターの制御ユニットやバッテリーユニットがカットモデルで展示されていました。
ご覧のようにこうした地味な展示でも例年以上に興味を示す人が増えた印象です。
特にここでは人が写り込まないタイミングをはかるのが厳しく感じました。


しかし、これは非常に良い傾向だと思います。こうした技術展示は下手なコンセプトカーなどよりずっと低予算でできるハズですが、メカに興味のない人はきらびやかなコンセプトカーに目を奪われる傾向が極めて強く、実際にそういう人のほうが圧倒的に多くなっていたと思います。それだけに最近はこうした技術展示が以前より淡泊になっていました。

例えば、富士重工が世界で初めて実用化した乗用車用の無段階変速機「ECVT」のカットモデルを見たのは、高校1年生のときの東京モーターショーだったと思います。カットモデルといってもただ切って中身を見せただけではなく、実際にプーリーとベルトが動き、どのようにして減速比を無段階で変化させているのかということを示していました。

あの動きを見ればよほど理解力が乏しい人でない限り、その仕組みを理解できないことはないというくらい解りやすく、私もそれを見た瞬間にCVTの仕組みを理解しました。同様に、フォルクスワーゲンが「Gラダー」と称していたスクロールコンプレッサーもどんな説明図より「動くカットモデル」のほうがその動作を理解するのが容易でした。

メルセデスはSクラスなどで導入を始めたばかりのエアバッグを知ってもらうために大仰な装置を使って実際に作動させるという実演を行っていました。インフレーターに火薬を用いているというのもあの「バンッ!!」という耳をつんざく大きな衝撃音を聞けば直感的に誰でも想像が付いたでしょう。余談になりますが、エアバッグを発明したのはアメリカ人でもドイツ人でもありません。日本人の小堀保三郎という人物です。

特に晴海時代はライフスタイルやユーティリティを提案するような軽薄なコンセプトカーよりもこうした技術展示のほうが多かったくらいで、私は東京モーターショーで自動車の技術とその進歩をより深く理解することができました。あの頃は技術展示を見るのが東京モーターショーに行く楽しみの中でも非常に大きな部分を占めていました。

晴海時代にもカメラ小僧的な人はいましたし、家族連れもそれなりにいましたが、全体的には現在よりもずっとマニアックな雰囲気がありました。しかし、幕張に移って規模がどんどん拡大していくとメーカーもあの手この手で来場者の気を惹こうとし、食い付きの良いコンセプトカーや美しいコンパニオンを並べることに力を入れるようになっていった気がします。それに伴って技術展示も実際の動作を再現する凝ったものが減っていき、それがさらに興味を失わせるという悪循環になっていたような気がします。

上掲のプリウスのハイブリッドシステムも動かないただのカットモデルでした。プリウスがハイブリッド車として孤高の存在で、ホンダのようにフライホイールを薄型モーターに差し替えただけの安物のシステムと次元が違うのは、遊星歯車を用いた合理的な動力混合/分割システムにも大きな秘密があります。その仕組みを理解させようとしないのは何とも勿体ないハナシです。

実際にカットモデルないし説明用の模型などで遊星歯車の動きを再現し、ガソリンエンジンと電気モーターの連携を見せれば、どれだけ解りやすかっただろうと思いました。が、あの展示は3世代の動かないそれがただ並んでいるだけでした。切ってその断面に色を塗っただけのカットモデルが並んでいても、よほどメカに明るくなければその仕組みを理解するのは難しいでしょう。

こうした不親切な展示でも軽薄なコンセプトカーが減ったせいか、今年は明らかに見ている人が増えました。ならば、メーカーもカネのかかるコンセプトカーなどより、こうした真面目な展示物にこそ手をかけてその技術を深く理解してもらえるようアピールすべきです。莫迦げた寸劇でホンダとの違いを比喩的に表現した例の比較広告を展開するくらいなら、その具体的なメカニズムの違いを解りやすく解説し、より高度な技術が導入されているということを示すべきです。

(つづく)

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