酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

東京モーターショーは何処へ行くのか? (その9)

技術展示はコンセプトカーに比べると地味な分だけ大衆ウケは今一つです。昔に比べれば次第に数を減らし、その見せ方も昔ほど丁寧ではなくなっているというのが四半世紀以上東京モーターショーを見てきた私の感想です。

こうした状況にあって一筋の光明といいますか、高く評価したいと思ったのが横浜ゴムです。個人的に今回の東京モーターショーの「ベスト出展者」を選ぶとしたら、横浜ゴム以外に考えられません。今回の横浜ゴムは製品展示を二の次とし、「ECOタイヤ研究所」と称するブースに仕立てました。主に転がり抵抗と空気圧について基礎となる知識を丁寧に解説するというもので、実験装置を置き、実演ショーを展開して子供にもそれを理解してもらおうというコンセプトです。

横浜ゴムのブース「ECOタイヤ研究所」の様子
横浜ゴムのブース「ECOタイヤ研究所」の様子
横浜ゴムのブースで行われていた実演の内容は非常に真面目で
説明もシッカリと基本を抑えたかなり理論的なものでした。
しかしながら、小学生レベルを想定した非常に解りやすいものゆえ
ご覧のように子供連れだけでなく、足を止めて説明に聞き入っている
大人だけのグループも少なくありませんでした。
説明を聞いている子供の表情を見ても、その親の表情を見ても、
その内容が非常に優れていたことが伺えます。


実演ショーのMCを務めていたスタッフも白衣を着て理科の先生のような感じで、転がり抵抗について説明したり、空気圧がそれに与える影響を説明したり、様々な工夫を凝らしたパフォーマンスや展示などで理解を深めてもらおうとしていました。内容は非常に知的で真面目ですが、決して堅くなることもなく、小学校の理科の実験のような取っ付きやすい雰囲気を保っていました。実際に興味を示すだけでなく、遊び感覚でそれを楽しんでいる子供も沢山いたようです。

転がり抵抗を理解させる実験道具
転がり抵抗を理解させる実験道具
転がり抵抗については摩擦係数の異なるタイヤを付けた
2台の模型を実際にスロープから転がして到達距離の違いを見せる
という実験で説明していました。
この写真の奥の方に製品であるタイヤも展示されているのが伺えますが、
完全に脇役となっており、技術解説がメインになっている状態でした。


普段からクルマを利用していてもタイヤの空気圧などあまり頓着しないという人は少なくないでしょう。タイヤというのは縁の下の力持ち的な存在で、特に子供から注目を集めるのはなかなか難しいものです。が、今年の横浜ゴムの取り組みは狙い所もその内容も非常に良いところを突いていたと思いますし、写真でもお解りのようにかなり盛況でした。

商売上でいえば、彼らが今回の東京モーターショーで最もアピールしたかったのは「AIRTEX advanced liner」と称する新素材のインナーライナーでしょう。従来のゴムだけのライナーと異なり、特殊樹脂を融合させることによってエア漏れを軽減し、空気圧を調整してから時間が経過しても転がり抵抗が増加していくのを抑えて燃費向上に繋げるというものです。

ま、多くのユーザーが小まめに空気圧をチェックしていればそれほど意味のある性能ともいえません。が、実際には空気圧が低い状態で走っている人も少なくないようですから、そういうユーザーにはある程度の効果が見込めるのでしょう。また、従来のインナーライナーに比べて厚さも1/5で済むことから軽量化にも繋がるといいます。

普通ならこうした素材をPRするとしても、せいぜい素材の特性を示すデモやタイヤのカットモデルなどを展示すると共に説明VTRを流すくらいでしょう。転がり抵抗や空気圧といったところから実演を交えて丁寧に解説するところまで徹底するケースは希だと思いますし、子供でも理解できるような解りやすさを求めるといったことも普通ではあまりないことです。

新素材インナーライナーAIRTEXのデモ
新素材インナーライナーAIRTEXのデモ
従来であればこうした空気漏れの違いを示す比較モデルによるデモや
カットモデルなどを置いて解説VTRを流すくらいだったでしょう。
しかし、今年の横浜ゴムのブースはこれすらも脇役といった感じで、
タイヤの転がり抵抗と空気圧の関係を丁寧に説明するという部分に
重きが置かれていました。


もちろん、過去にも似たような子供向けのパフォーマンスが展開された例はあります。が、今回の横浜ゴムのように製品展示も脇に押しやってブース全体でこれに取り組むといったパターンは記憶にありません。大人でもこうした基本的な知識が整理されていない人は少なくないでしょうから、今回の取り組みはユーザーの知識の底上げにも繋がるもので、大いに評価すべきでしょう。

一方、横浜ゴムとは極めて対照的だったのが同じタイヤメーカーであるピレリのブースで、キレイどころを集めて並ばせ、完全にモデル撮影会と化していました。モーターショーというイベントはクルマやそれに関連する製品や技術などをアピールする展示会であって、女性の写真を撮るためのイベントでないのは言うまでもありません。そういう写真が撮りたいのであれば、その種のイベントを別に催して、そっちで存分にやってもらいたいものです。(あくまでも個人的な希望です。)

モデル撮影会と化していたピレリのブース
モデル撮影会と化していたピレリのブース
人の子の親なら横浜ゴムのブースは積極的に見せたいと思うでしょうが、
こういう状況を我が子に見せたいと思う親はまずいないでしょう。
世の中にはモデルの撮影を目的とした撮影会もあるのですから、
女性の写真を撮りたいのならそういう催しでやって欲しいものです。
特に、縦位置で不自然な影が出ないようにストロボをブラケットに付け、
「視線下さ~い」とか言っているそこのアナタ、場違いですよ。


確かに、こうしたモデルを使うのも広告手段の一つに違いありませんから、私の個人的な趣味で全否定するのは主観の押しつけになってしまうでしょう。ですから、出展者と来場者の利害が一致してこうしたモデル撮影会状態になってしまうのは諦めるしかないのかも知れません。

が、女性スタッフと見れば誰彼構わずカメラを向けるのは非常に見苦しいのでやめてもらいたいものです。インフォメーションカウンターに座っていたり、パンフレットを配っていたりする普通の女性スタッフに対しても写真を撮りたがるカメラ小僧を見ると後ろから蹴り倒したくなります。

モデル事務所やイベントコンパニオンを派遣しているような会社から派遣されていて、写真を撮られるのも業務の一つと始めから割り切っている人にカメラを向けるのはまだ良いでしょう。大手メーカーではそういう人をインフォメーションカウンターに座らせているケースも多いようですから、そこで撮影が始まってしまうのもある程度は仕方ないと思います。

しかし、どう見ても出展している会社の女子社員にしか見えない人までカメラを向けられてしまうことがあります。特に部品メーカーなどのブースでよく見られるパターンですが、ただ接客業務に当たっているだけのスタッフに対してもモデルを撮るのと同じ感覚でカメラを向けるカメラ小僧が結構いるんですね。これはいくら何でもマナー違反でしょう。

相手が客であるという認識から立場上ストレートに拒絶しづらいゆえ、やんわりと断っているのにしつこく拝み倒して写真を撮っていくというのは一種のハラスメントと見るべきです。そういう無節操で迷惑なカメラ小僧をつまみ出すような警備員を配置すべきだと思うのは私だけでしょうか?

ハナシを戻しましょうか。今年の東京モーターショーは全般的に例年のような派手さが抑えられていました。しかし、イメージ先行で上辺だけのエコを標榜し、その詳しい内容については等閑となっている状態は相変わらずといった印象です。そんな中で横浜ゴムはブース全体を使ってその基本となる部分を丁寧に解説していたという点で、非常に素晴らしいコンセプトだったと思います。

もちろん、全ての出展者が今回の横浜ゴムのようになって欲しいとは思いません。が、これまで大手の自動車メーカーは軽薄なコンセプトカーに無駄なカネを使い過ぎ、新しい技術の解りやすい説明という部分に充分な手間とコストを割いてきたようには見えません。本気でユーザーのことを思うのなら、その知識の底上げに繋がるような手助けにもっと積極的な姿勢で取り組むべきです。

確かに、ユーザーの目が肥えてしまうと販売戦略上不都合なことも色々起こってくるかも知れません。が、厳しい目で見られながら商売をしていけば、メーカーの技術水準も否応なく上がっていくものです。こうして鍛えられていけば必然的にメーカーの競争力も増していくでしょうし、それはいずれ良い流れとして巡るようになるものです。

(つづく)

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/tb.php/506-cc3b0ec4
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

まとめ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。