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東京モーターショーは何処へ行くのか? (その10)

技術屋というのは案外虚しい思いをするものです。技術的には低レベルで取るに足らないものでも、妙に大衆ウケしてしまうことがあるかと思えば、アイデアにしてもそれを実現させるための努力にしても、非常に高いレベルの仕事をしているのに、その内容が込み入っていたり、応用製品として解りやすいカタチになっていなかったりすると世間一般にはあまり理解されず、大して評価もされないということがあります。

今回の東京モーターショーに出品されたものの中でダイハツの新型燃料電池「PMfLFC」は個人的に一番の収穫でした。これはもっともっと大きな注目を浴び、高く評価されてしかるべき技術だと思います。

ダイハツの新型燃料電池PMfLFC
ダイハツの新型燃料電池PMfLFC
実用化に向けての課題など細かい部分はまだよく解りませんが、
概要を見た範囲においては従来の水素燃料電池でネックとなっている
コストやインフラなどの問題を一気に切り崩せるポテンシャルがありそうで
非常に大きな可能性を感じました。


従来の水素と酸素を反応させる燃料電池は水素から電子を奪うため強酸性の環境になります。従って、電極に耐腐食性の高いプラチナなど非常に高価なレアメタルを必要とし、それがコスト高に直結しています。が、ダイハツのPMfLFCは燃料となるのが水素ではなく、抱水ヒドラジン(H2NNH2・H2O)という物質で、これを酸化して電気を取り出します。その反応はアルカリ性環境になり、電極に用いる素材はニッケルなど比較的安価な金属で済みます。

また、従来の水素燃料電池は車載可能な改質器の開発も遅れているため、当初アナウンスされていたようなガソリンやメタノールを改質して水素を得る方式はまだ試作レベルで、リース販売されているものはいずれも水素を気体のままタンクに蓄えておく方式となっています。航続距離を稼ぐため、このタンクはアルミライナーに炭素繊維を巻くことで200~300気圧の超高圧に耐えるよう作られています。こうした贅沢な構造ゆえ、やはり大変なコストがかかります。

一方、ダイハツのPMfLFCが燃料としている抱水ヒドラジンは液体であるため、扱いがガソリン並みに容易です。この部分でも大幅なコストダウンが期待できますし、インフラ整備の面でも圧倒的に有利といえるでしょう。従来の水素燃料電池は旧態依然といいますか、袋小路に迷い込んでいるような印象が拭えませんが、ダイハツのPMfLFCは基本的な部分で好条件が揃っています。

もちろん、実用化までの課題など生々しいハナシには触れられていませんでしたから、手放しでこの技術に期待するのは拙速かも知れません。が、概要を見渡しても従来の水素燃料電池やリチウムイオン電池などのように根源的なネックは見当たらない感じですから、これらよりは期待できるかも知れません。

大衆メディアがこうした画期的な技術を大きく取り上げないのはいつものことだと諦めるしかないのでしょう。が、これを出品したダイハツのプロモーションの仕方も確かに上手ではなかったと思います。このシステムが展示されていた場所は決して悪くなかったと思いますが、普通の人はこうした模式図を立体的にしたような展示にボタンを押せば説明が流れるといったパターンではなかなか食い付いてくれないでしょう。

例のプリウスのハイブリッドシステムを展示していたのはトヨタのブースの一番奥まったところであまり良い場所とは言い難いと思いますが、その知名度ゆえか沢山の人に注目されていました。しかし、PMfLFCはもっと良い場所に展示されていたにも関わらず、驚くほど閑散としており、全くといって良いほど注目されていませんでした。この展示が何を意味しているのか、その場で価値に気付くことができた人は殆どいなかったというわけですね。お陰で私はゆっくりと写真を撮ることができましたが。

大きな可能性を秘めた技術であっても、このようにあまり注目されないことがあります。逆に、こうした技術を理解できるユーザー層が拡大し、メディアもこれを正当に評価できる能力があれば、様々な面で好循環に繋がるでしょう。ユーザーやメディアの認識力を高めることは、巡り巡ってメーカーの技術水準を高めることになるハズです。そうしてより一層のレベルアップを図れば、より高い競争力を身につけていくことになります。

特に近年は新興工業国でもそれなりの技術力を持つようになりました。そこそこの技術で作れる製品の場合、価格面で競争しても太刀打ちできないというケースが増えてきました。子供騙しの技術に詭弁を弄してマーケットを丸め込むようなことを続けていたら、いずれ新しい波に呑み込まれてしまうことになるでしょう。

(つづく)

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