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クライメートゲート事件は大山を崩すのか? (その1)

先日頂いたコメントにもありましたが、欧米の主要メディアはいま地球温暖化問題の根幹を揺るがしかねない「クライメートゲート事件」を盛んに報道しています。

「クライメートゲート」という呼称は、アメリカのニクソン大統領(当時)を辞任に追い込んだ「ウォーターゲート事件」以来、「コリアゲート」や「イラン-コントラゲート」などスキャンダラスな謀略事件に「○○ゲート」といった感じで接尾語のように用いられるようになったそれに倣ったもので、「クライメート」とは「climate」すなわち「気候」を意味します。

ウォーターゲート事件はニクソン政権当時の野党だった民主党本部があるウォーターゲート・ビルに盗聴機を仕掛けようとしたことが明るみに出たスキャンダルでしたが、このクライメートゲート事件は地球温暖化の研究において草分け的な存在で、国連のIPCC(気候変動に関する政府菅パネル)でも中心的な役割を果たしてきたグループがターゲットになりました。

それは、イギリスのCRU(イーストアングリア大学気候研究所)で、そのサーバーに何者かが侵入、外部とやりとりされた1000を超えるメールやプログラムのスクリプトなど3000を超えるファイルが持ち出され、ロシアのFTPサーバにそれが匿名でアップされるとともに、懐疑派のblogやコミュニティサイトなどへその情報が流されたという経緯になります。その中には不正の証拠となるような様々な情報があり、大スキャンダルに発展する可能性があります。

中でも注目されたのが懐疑派の間では常々話題になってきた「ホッケースティック曲線」に関わるものです。今回の事件についてハナシを進める前に、まずはホッケースティック曲線を巡る一連の騒動を振り返っておきましょうか。

当blogでも過去に何度か触れていますが、IPCCが発行した第3次評価報告書に採用された古気候のグラフは木の年輪や珊瑚、氷柱などに刻まれた痕跡から過去の気温の推移を復元したものとされました。が、19世紀以前は微少な変動しかなく、最近の100年くらいに急激な気温上昇を描くのは如何にも不自然で恣意的ではないかと問題視されました。

ホッケースティック曲線
IPCC第3次評価報告書に掲載された過去の気温の推移
このグラフが「ホッケースティック」と俗称されるのは、
形状がそれに似ていることによります。


このグラフはIPCCの評価報告書という地球温暖化問題において圧倒的な影響力を持つ資料に採用されたことから様々なところで引用され、これを以て地球の気温はかつてないほど急激な上昇を続けているという印象がバラ撒かれることになりました。

しかし、従来の古気候学では10世紀から14世紀くらいにかけて「中世の温暖期」と呼ばれる気温の高い時期があり、その後19世紀くらいまで「小氷期」と呼ばれる寒冷期があったと考えられてきました。こうした従来の定説がホッケースティック曲線では異常に過小評価されていたことが論争を巻き起こしたんですね。

そして、このグラフを作成したペンシルバニア州立大学の気候学者マイケル・マン氏に対し、データの出典に関する追求がなされました。アメリカの共和党議員からは元になったデータの公表が請求されましたが、マン氏はこれを拒否し、またアメリカ気候学会や地球物理学連合などは政治の介入を科学者に対する脅迫だとして彼の擁護に回りました。

しばらくして、このグラフはアメリカのスティーブン・マッキンタイアという民間の鉱物研究者が調査したデータを歪曲して作られたものだとされました。また、ドイツのハンブルク大学気象研究所の教授でGKSS研究センター沿岸研究所システム分析及びモデル化担当所長でもあるハンス・フォン・シュトルヒ氏のチームが厳密な計算を行ったところ、マン氏のグラフは19世紀以前の気温の変動が過小評価されていることを確認、その旨が有力科学誌『Science』に発表されました。

シュトルヒ氏はホッケースティック曲線を「ガラクタであり、ゴミだ」と述べたそうです。データを使われたとされるマッキンタイア氏も「マン氏のグラフは私のデータを歪曲して偏向した結論を導き出している」とコメントしました。こうしてホッケースティック曲線は事実を歪曲したものだという認識が広がるに至り、欧米の有力メディアには地球温暖化問題を巡るスキャンダルとして大きく報じられました。

Wikipediaにある「ホッケースティック論争」という項には「マンらの明らかな間違いは結局のところ出典の誤記だけであり、その結論には変わりが無いとされる」と書かれ、あたかもマン氏の論文には問題がなかったように読めてしまう書かれ方がなされています。が、実際には彼が論文を発表したNature誌に対して出典の誤記があったことと結論に変更はないとの旨が自己申告されただけです。このグラフの正当性が立証されたというわけではなく、疑惑が晴れたという事実もありません。

恐らく、普通に新聞やテレビの報道番組を見ているだけの人(つまり、地球温暖化問題に関する情報を積極的得ようとしていない人)でこのホッケースティック曲線を巡る騒動があったことを知る日本人はあまり多くないと思います。それは日本のメディアがこの一件をほぼ完全に黙殺したせいだと考えて間違いないでしょう。

これが政府の圧力によるものだとしたら、日本も中国や北朝鮮並みの情報鎖国ということになり、彼らを笑うことも批判することもできなくなります。が、日本人お得意の「空気を読む」習性から阿吽の呼吸でメディア自身がバイアスをかけ、自主的に排除してしまったのだとしたら、それはそれでむしろタチの悪い問題といえるかも知れません。

いずれにしても、ホッケースティック曲線をめぐる疑惑はあくまでも疑惑であって、それを裏付けるような物証が存在しなかったのも事実です。が、今回のクライメートゲート事件でメールやファイルが公となったことから、不正を暴くかなり有力な証拠が見つかりそうな状況にあるようです。

(つづく)

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