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クライメートゲート事件は大山を崩せるか? (その4)

クライメートゲート事件について積極的に情報を求めておられる方ならご存じかと思いますが、この一件で暴露されたホッケースティック曲線の改ざんに関する疑惑について日本語で書かれたレポートの中で最も具体的な情報が得られるのは12月2日に配信された田中宇氏のメールマガジン『田中宇の国際ニュース解説』でしょう。

地球温暖化めぐる歪曲と暗闘(1)』と題されたそれには具体的な出典を示しながら詳細に書かれていますので、より深く知りたいという方はリンク先をご参照頂くとよいでしょう。ここではアウトラインに私なりの補足を加えた形で纏めてみたいと思います。

ホッケースティック曲線は西暦1000年以降の気温の変化を纏めたものですが、当然のことながら1000年前に信頼できる気温の記録などありませんでした。そのため、前述のように木の年輪や珊瑚、氷柱などに残された痕跡を頼りに当時の気温を復元したとされています。

ガブリエル・ファーレンハイト(華氏は彼が考案した温度の単位です)が純度の高い水銀を用いた温度測定技術を開発した18世紀くらいから気温の測定についても精度が格段に向上しました。とはいえ、当時は地球規模での気温測定などなされておらず、そのデータを参考にしても地域が偏ってしまいますから、そのまま採用することはできません。

こうした古気候曲線を作成するに当たって自然界の痕跡から得られた指標値と実測値を繋ぎ合わせることは決して珍しいことではありません。問題はその継ぎ目をどのように処理するかということになるわけですね。

国立環境研の江守氏も日経Ecolomyに連載しているコラム『温暖化科学の虚実 研究の現場から「斬る」!』で、この事件を『過去1000年の気温変動の虚実』と題して解説していますが、その中で問題の部分を「うまくつながって見えるように研究者がデータを操作していたのではないか、ということのようです」とオブラートを何百枚も重ねたような解釈をしています。しかしながら、田中氏のレポートではもっと生々しいデータ操作の様子が伝えられています。

CRU(イーストアングリア大学気候研究所)所長のフィル・ジョーンズ氏がホッケースティック曲線を作成したマイケル・マン氏に宛てたメールの中には「下落を隠す(hide the decline)」という表現があるそうです。このことから、指標値と実測値の継ぎ目を気温の下降期にあった1960年代に設定し、その下降度合いを小さく見せかけるように操作されたと見られています。

接ぎ木を60年代からではなく40年代からにしていたら「今が世界的に気温の最も高い時期だ」とは言えなくなっていた。


と田中氏は伝えています。余談になりますが、日本のメディアにも取り沙汰されている「trick」よりも、この「hide the decline」というキーワードのほうがネット上では話題になっています。YouTubeにこれを茶化した非常に手の込んだ動画がアップされているのもアチコチで紹介されるようになりました。



田中氏のレポートではこうしたデータ操作についてかなり具体的に触れられています。前述のようにサーバーから持ち出されたのはメールだけではなく、プログラムのスクリプトなども含まれています。データをグラフ化する際に異常値を排除したり数値のない年次を補完する修正がなされる真っ当な処理のほか、結果のグラフが温暖化傾向を示すよう、1960年以降の数値に人為的な処理を加えるスクリプトがいくつか見つかっているそうです。

そのファイルや操作された数値についても具体的に示されていますから、単なる推測ではなく、ちゃんとした根拠を伴っているわけですね。それが本物だと確認されれば、かなり決定的な物証になるでしょう。これまで確認されたメールなどの例からして、持ち出されたスクリプトなどのファイルも本物である可能性が高く、こうしたデータ操作がなされた可能性も高いように思います。これが闇に葬られることがなければ、それこそIPCCの評価報告書の信憑性は地に落ちるかも知れません。

なお、田中氏のレポートでは

「すでにIPCCはホッケーの棒のグラフを採用していないのだから、論争は過去のものだ。温暖化人為説はすでに事実として確立した理論だ。疑問を挟む人は無知な素人か、石油会社の回し者だろう」といった「解説」をするようになった。


とありますが、2007年に発行された(現在のところ最新の)第4次評価報告書「政策決定者向け要約」にホッケースティック曲線は載らなかったものの、同じ第4次評価報告書のフルレポートでは第6章の図6.10に11種の古気候曲線の1つとしてホッケースティック曲線は残されていたんですね。(実は、私も第4次評価報告書では削除されたと思っておりまして、そのようなことを当blogでも過去に書いてしまったことがあります。お詫びして訂正します)。

AR4_古気候曲線1
IPCC第4次評価報告書のフルレポートに採用された古気候曲線
マン氏のホッケースティック曲線の他にも10の古気候曲線が紹介され、
バラツキこそあるものの温暖化していることには違いない
と印象づけるようなグラフが並んでいます。
しかし、中世の温暖期はもっと高温だったとする人も沢山いますので、
この段階でも情報を取捨する作為があった可能性は否定できないでしょう。


AR4_古気候曲線2
解りやすいようにマン氏のホッケースティック曲線だけ色を残し
他をグレイスケールに変換してみました。
その作業をして感じたのは、ホッケースティック曲線のレイヤーは深く、
他のグラフが幾重にも重なって非常に解りにくくなっているということです。
第3次評価報告書ではホッケースティック曲線を単独で載せたにもかかわらず、
第4次評価報告書ではこれを残しつつもあまり目立たないようにしている
という印象です。(あくまでも個人的な感想です。)


IPCCの最新の評価報告書でもマン氏のホッケースティック曲線はまだ生かされているわけで、江守氏や東北大学の明日香氏ら人為説支持派の論客たちは、そのことを理由にマッキンタイア氏のデータを改ざんしたとの疑惑を拭い、マン氏を擁護するような立場をとってきました。彼らにとってIPCCは絶対的な存在ということのようです。

が、いまにして思えば、IPCCはあの一連の論争を経てホッケースティック曲線の信憑性の低さを素直に認め、第4次評価報告書では切り捨てていれば良かったのです。IPCC自身がメンツを保ちたかったのかIPCCにおけるジョーンズ氏らの影響力が強かったのか理由は解りませんが、下手にこれを残してしまったことが却って裏目に出たと見るべきかも知れません。

いずれにしても、今回暴露された情報はホッケースティック曲線だけにとどまらず、様々な部分に波及するものです。例えば、シミュレーションをやっている当人がその精度の甘さを嘆くようなメールも見つかっています。また、懐疑派を「間抜けども」と侮蔑したり、懐疑派の論文の査読や発表を妨害するような工作をしてきたことが窺えるメールも見つかるなど、地球温暖化を既成事実化してきた人たちの悪質さが取り沙汰されています。

ま、それを言ったら明日香氏らも懐疑論を出鱈目だと決めつけ、それに対抗する「懐疑派バスターズ」を結成して懐疑派をまるで害虫のように蔑視してきたわけですから、彼らの心根は同じところに繋がっているのでしょう。懐疑派を代表する槌田氏の論文が気象学会の機関誌に掲載を拒否されたり同学会の定期大会で講演を拒否されるなど、日本にも似たような動きがありました。こうした状況は野党時代の民主党がよく用いていた「数の暴力」という言葉がピッタリと当てはまるように思います。

このクライメートゲート事件がどのような結末に至るのかまだ予断を許すことはできません。が、暴露されたメールやファイルの中身が事実だとして、これが公に認められることになれば、地球温暖化問題そのものの信憑性が疑われ、その根幹が崩れることになるかも知れません。

なお、国立の研究機関に所属する科学者という立場をわきまえず、大した根拠もないまま断言することを躊躇しない江守氏は、日経Ecolomyの連載コラムで今回の事件についても以下のように断言しています。

過去1000年の気温変動に関するIPCCの結論が万が一これに影響を受けたとしても、いわゆる「人為起源温暖化説」の全体が揺らぐわけではまったくないことに注意してください。第1回のコラムで説明したように、「人為起源温暖化説」の主要な根拠は、「近年の気温上昇が異常であるから」ではなく、「近年の気温上昇が人為起源温室効果ガスの影響を勘定に入れないと量的に説明できないから」なのですから。


彼にとって自分たちが創り上げてきたシミュレーションは絶対であると言いたいようです。この10年あまり気温が上昇しなかったこともマトモに予測できなかった極めて精度の低いシミュレーションにしがみつくことしか彼らに生きる道はないということなのでしょう。

(とりあえず、おしまい)

コメント

ホッケーステック

>私も第4次評価報告書では削除されたと思っておりまして
 第3次までの、ホッケースティックの図に批判が多かったので、中世温暖期等について修正を施して掲載したのですから、原図に関しては「削除」で正当だと思われます。 経過は、以下の議事録の座長の発言などを参照。 彼らは、科学的な批判に耐えられない、となると、コッソリ修正したり、データを捏造したりを簡単にします。
スパコンをお札のように奉り、自由自在に「予測」とやらを出しますが、現実の前にあえなく沈没。
http://www.gispri.or.jp/kankyo/ipcc/pdf/NATIONAL_P2_report.PDF
第2 回 IPCC 第4 次評価報告書に向けての国内連絡会準備会 議事録
P6

ストレス解消

クライメートゲート事件について、IPCCバチャウリ議長のコメント:
「友人同士で個人的な会話をする時には砕けたことば遣いになる。(問題とされたメールは)純粋に友人や同僚の間で交わされた私信であり、ストレス解消以上のものではないと思う」

いやはや、ストレス解消で「hide the decline」ですか。データを如何に誤魔化すかで腐心してストレスがたまっていたんでしょうなあ・・・。だから本音を語ってストレス解消したということなんでしょうね。

某勢力がクライメートゲート事件によるダメージを払拭しようとしてか、「ホッキョクグマ共食い」デマまで飛び交う始末。こちらの方は、さすがに、あまりにも有名なホッキョクグマの生態にすぎなかったため、ネット上では、わずか2~3日の間に、デタラメな情報だという認識が広まったようですね。

次は、どんな扇情的な報道がなされるんでしょうかね?

  • 2009/12/12(土) 01:04:08 |
  • URL |
  • わちゃちゃ #JOOJeKY6
  • [ 編集]

>とら猫のイーチさん


>原図に関しては「削除」で正当だと思われます

私の個人的な語感としましては、「削除」というのは「全部撤回」で、「修正」というのは「一部撤回」という風に理解します。田中氏の解説にあるように、ホッケースティック曲線の問題を過去のものにしたいというのなら、やはり「修正」ではなく「削除」で全てを撤回しておかなければなりませんでした。

いずれにしましても、現在の評価報告書にホッケースティック曲線が残されているのは厳然たる事実で、それが大いに疑われる証拠が次々に見つかっている以上、IPCCにはこの問題を解決しなければならない義務が生じます。それはホッケースティック曲線を完全に「削除」しなかった彼らの責任です。そういう意味でも私はホッケースティック曲線は既に「削除」されたものだとは認めず、彼らの責任を追及したいという立場です。


>IPCC 第4 次評価報告書に向けての国内連絡会準備会 議事録

これは大変興味深い資料のご紹介を頂き、有り難うございます。個人的に非常に関心を持ったのは、「SRES シナリオについては小会合において真剣に議論された。結論は、批判する人間を内に入れていくこと、メディア・プレス対応をきちんとすることが重要となった。」というくだりです。

やや深読みになってしまうかも知れませんが、これは裏を返せば公平らしさを演出するために「批判的な人間もとりあえず混ぜておこう」「でも、それは少数意見にとどまるようにして全体はコントロールしてやろう」という意志が働いているように感じました。

少なくとも、初めに結論ありきでなければ「批判する人間を内に入れていく」という発想には至らないでしょう。結論が始めに用意されていないのであれば、「批判する人間」といっても「何に対して批判しているのか」という定義が定まりません。

「批判する人間」というのは、要するに「初めから用意されているシナリオに批判する人間」ということに他ならないでしょう。そういう人間を「内に入れていく」というわけですから、そういう人間が「内に入れられていない」状態でシナリオが策定されたということなのでしょう。

こうした生の声からも地球温暖化問題は「初めに結論ありき」で進められてきたと疑われる事例が一つ増えたように思います。大変貴重な情報を頂きまして、有り難うございます。




わちゃちゃさん>

>「ストレス解消以上のものではないと思う」

パチャウリ議長のこのコメントはプログラムのスクリプトも流出しているという状況を知らず、事件の全容についても全く把握していないということを裏付けるものでしょう。本来、全容を把握できていないならばIPCCが率先して調査に乗り出すというのが常識というものですが、要はもみ消したいだけなのでしょうね。

そもそも、普通の精神構造の人間は本音をぶちまけることでストレスを解消するものです。信念に反する仕事をしなければならないことがあるのは私を含め多くの人に当てはまることだと思いますが、だからこそストレスが溜まり、本音をぶちまけてそれを解消したいということになるわけですね。それが普通の人間の精神構造というものです。

パチャウリ議長の弁でいきますと、正しいことをしているのにストレスが溜まってしまい、みんなしてウソのストーリーをでっち上げ、そうしたメールをやりとりしてストレスを解消していたということになってしまいます。そんな莫迦なハナシを信じろというのでしょうか?


>、「ホッキョクグマ共食い」デマまで飛び交う始末。

元ネタはロイターの↓この記事あたりでしょうね。
http://jp.reuters.com/article/jpEnvtNews/idJPJAPAN-12847320091209

「米国が率いる国際的な科学調査によると、気候変動の影響でホッキョクグマが狩りをする北極圏の氷原が溶け」とありますが、北極海の海氷面積は減っていないんですよね。
http://www.ijis.iarc.uaf.edu/en/home/seaice_extent.htm

ま、海氷面積だけで全てを測ることはできませんが、ホッキョクグマに限らず、共食いというのは多くの種で見られることです。そういう確認を怠って適当な記事を垂れ流したわけですから、ロイターもいい加減なデマを流布するネット掲示板並みに堕したということでしょう。

そうそう、この記事を確認するためにロイターのサイトを見たらトップでこんな記事が載っていました。

COP15のデモ隊が暴徒化、約1000人を拘束
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-12909920091212

環境保護団体やそれに同調する人たちはしばしばヒステリックになるものですが、こうなると何処かのカルト教団と大差ない印象です。

  • 2009/12/13(日) 22:56:56 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

蛇足

>ホッケースティック曲線は既に「削除」されたものだとは認めず、彼らの責任を追及したいという立場です。
これは、私がまいりました。 第3次までの報告書とは、大幅に相違するとはいえ、掲載されているのは事実ですから、ご指摘のように追及することは可能です。 
 また、流失したメール・スクリプト等については、現在、解明が進んでいます。
一部では、証拠も出てきたようです。 全体の資料については、完全に保全するように努力しなければなりませんので、参照先を以下に記しておきます。
http://joannenova.com.au/2009/11/cru-data-cooking-recipe-exposed/
CRU Data-Cooking : Recipe Exposed!

http://www.climate-gate.org/index.php
Climate Gate Document Database
(流失したデータ・メール等全てが参照出来ます。)

とら猫イーチさん>

江守氏や明日香氏などはホッケースティック曲線がIPCCの評価報告書に残されているから懐疑派の批判は当たらないとでも言いたげでしたから、この事件の顛末にもちゃんと責任をとってもらうのが筋でしょうね。

関連サイトのご紹介を頂きまして、ありがとうございます。実は、今回ご紹介頂いた二つのサイトは私も以前からチェックしていたのですが、スラスラと読めるほど英語が堪能ではありませんので、年末の繁忙期が過ぎたらゆっくり見ていきたいと思っています。他にも何か参考になりそうなサイトがありましたら、またご教示頂けると助かります。

  • 2009/12/17(木) 00:11:41 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

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