酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

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サイクルモード'09 (その3)

高校時代に「スキー莫迦」というほどスキーに入れ込んでいる級友がいました。彼は18歳になるや普通免許を取得し、高校生の分際で(しかも受験生という立場で)ハイラックスだかパジェロだか車種は失念しましたがSUVを購入し、週末になるとスキー場に入り浸るという凄い生活をしていました。私たちが18歳の冬といえば、ホイチョイ・プロダクションズの映画『私をスキーに連れてって』が公開され、空前のスキーブームがやってきたまさにあの年です。

ふと、彼の上履きを見ると、マジックペンで色々イタズラ描きがしてあったのですが、その中でもひときわ目を惹いたのがルックのロゴでした。当時の私にとってルックといえばビンディングペダルのメーカーというのが一番最初に思い浮かぶイメージでしたが、彼にとってはスキーのビンディングメーカーということで上履きにそのロゴを手描きしていたのでしょう。

ご存じのように、ルックはスキー界で常識となっていたビンディングを自転車のペダルに応用した元祖ですが、そこから転じてフレームも手掛けるようになりました。ルックが自転車界にビンディングを持ち込む以前は、トウクリップとストラップでペダルに足をシューズごと固定するという非常にプリミティブな方法がとられていました。当初はビンディングペダルといわず、「ルックペダル」と呼ばれていましたが、それはトライアスロンやTTで用いられるDHバーが当初「スコットバー」と呼ばれていたのと同じです。

ルックペダルが出てきた当初、ベテランのサイクリストにはどちらかというと色眼鏡で見られていたような感じでした。それはまだシューズ自体の完成度が低く、引き足を使うと甲の生地が伸びがちで浮き気味になってしまい、それを嫌う人はシューズの上からストラップを巻くことで対処したといったこともあったでしょう。が、そもそも昔のサイクリストは保守的な人が非常に多かったんですね。

余談になりますが、シマノが600シリーズ(現在のアルテグラの先祖)で初めてインデックスシステム(シフトレバーにクリックストップを設け、中段のギヤを扱いやすくしたもの)を投入したときも「子供のオモチャ」と酷評する人が結構いましたし、シマノもそうした声を予期していたのか、そのインデックスをキャンセルできる機構も備えていました。

また、クリンチャータイヤ全盛となったいまでは信じられないことかも知れませんが、当時は「チューブラー使いにあらずんば、ロード乗りにあらず」という時代でしたから、クリンチャーなんて使っていたら半人前の初心者と見なされました。ま、昔はこの世界もバリバリの体育会系で、他のスポーツと同じく様式だけでなく、器材に関しても頑固な人が多かったということですね。でも、あのベルナール・イノーが真っ先にルックペダルを使い始めたのは日本のサイクリストにも少なからぬ影響を与えたと思います。

イノーは現役の選手時代から自分の名を冠したフレームを使用し、1985年に5度目のツール・ド・フランス総合優勝を果たしたときもそれを駆っていましたが、程なく彼はルックと密接な関係になっていきました。現在でも同社の技術アドバイザーとしてフレーム開発にも影響力を持っているといいます。

イノーは6年間を過ごしたルノーチームを離れ、1984年に健康食のチェーン店を展開するラ-ヴィ-クレールをメインスポンサーとした同名のチームを立ち上げました。彼が引退した翌年の1987年には東芝・ルック・ラ-ヴィ-クレールと名を変えました。一時代を築いたこのチームを通じてイノーとルックの関係は今日に続く深いものに育まれていったのでしょう。

このラ-ヴィ-クレールのジャージがまた実にハイセンスで、個人的にはこれを超えるデザインは現在に至ってもないと思っています(あくまでも個人的な趣味の問題ですが)。モチーフとなったのはオランダの抽象画家ピエト・モンドリアンの代表作である「Composition with Red,Yellow and Blue」でした。以前、グリコのガムのCM(←リンク先はYouTubeですからいきなり音が出ます)で柴咲コウさんが同様にこれをモチーフとしたワンピースを着て踊っていましたが、ラ-ヴィ-クレールの黄金時代を知っている私としてはこの配色を見るとついつい反応してしまいます。

ですから、今年のサイクルモードに展示された「ルック586モンドリアン」のカラーリングには感慨深いものがあります。

LOOK_586_MONDRIAN.jpg
LOOK 586 MONDRIAN
プレミアムコレクション・スペシャルペイントモデルと書かれていますが、
希望小売価格522,900円(税込)と表示されていましたので、市販されるようです。
ペイント以外では従来の586と大きな違いはなさそうですが、
非常に完成度の高いフレームですから、変えるところがないのでしょう。


ベースはカーボン柄ですし、昔のルックのカーボンフレームとは違ってスコットあたりがやり始めた肉厚は薄く径は太いファットチューブにルックもかなり傾倒してきました。が、この鮮鋭なトリコロールはその名の通りモンドリアンの世界そのもので、あのラ-ヴィ-クレールを彷彿とさせ、私にとっては非常に懐かしく感じます。

さらに余談になりますが、このフレームの前で私の母と同世代と思しき初老の女性が熱く語り合っていました。走り仲間なのでしょうが、一昔前ではちょっと考えにくい光景でしたね。それだけスポーツサイクルのユーザー層が厚くなり、裾野が広がっているのだと思います。

彼女たちの会話のレベルからして近年のブームでロードバイクの魅力に取り憑かれたようで、齢は重ねていてもこのフレームを見て往年の名チーム、ラ-ヴィ-クレールに結び付くことはないのでしょう。ま、このカラーリングから四半世紀も前の光景を思い浮かべ、懐かしさに浸る私は、要するにすっかりオッサンになってしまったということですね。

(つづく)

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