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APS-Cサイズも悪くない (その2)

私のカメラ遍歴も実質的にはズームレンズからスタートしましたが、勉強のためにと思って買った50mmF1.4の単焦点レンズで被写界深度をコントロールする面白さと難しさを知りました。ズームレンズが普及する以前は一眼レフカメラを買うとき、殆どの人がまずこのクラスの単焦点レンズからスタートしていました。そういう意味では敷居が高かったかも知れませんが、そうして洗礼を受けた世代はいまでも作画に対する拘りが深い傾向にあるかも知れません。

また、比較的焦点距離の短いレンズを用い、絞り込んで無限遠まで被写界深度に収まるようにした「パンフォーカス」にしておき、いちいちピント合わせなどしない機動性重視で撮るというテクニックもあります。日本を代表する写真家である故土門拳氏などはこうした手法の使い手として非常に有名ですが、それを真似てスナップを撮る人は少なくありませんでした。私も時々やりますから、いまでもこうした手法で撮っている人はそれなりにいるでしょう。

パンフォーカスに設定するには被写界深度の深さが解らなければなりません。被写界深度を求める計算式もあるのですが、問題は「許容錯乱円」という不確定な要素が入ってきますので、なかなか一筋縄では語れない分野かと思います。ま、普通はレンズの距離目盛のところにある被写界深度目盛を参考にするくらいで厳密な計算などしないでしょうし、あまり深く語っているとキリがありませんので、ここでは概要だけ大雑把におさらいしておきましょうか。

被写体のある一点が結像面に点として像を結んでいるとき、その結像面の前後では点がぼやけた円形になっています。この円を「錯乱円」といいますが、結像面に近いほど錯乱円の直径は小さくなり、点との区別が付かなくなっていきます。「許容錯乱円」というのは、点と区別の付かない最大の錯乱円ということになります。

錯乱円が点に見える範囲ではピンボケを認識できませんが、それが点に見えなくなってくるとピンボケを認識できるようになります。許容錯乱円というのはピンボケになっていると認識できないそのギリギリのポイントを示す指標と理解して問題ないでしょう。

許容錯乱円はどの程度の大きさの画面をどれだけ離れて見るかということに深い関係がありますが、他にも様々な要素が関わりますので、一概にはいえません。銀塩時代には35mm判の許容錯乱円を設定する基準として、キャビネサイズのプリントを30cm程度の距離から見たときといった条件が設定されるケースが多かったようです。

フィルムやイメージセンサなど撮像面上での許容錯乱円の直径は対角線の1/1500前後に設定されるのが一般的なようです。例えば、35mm判の対角線は約43.267mmになりますから、許容錯乱円の直径は0.029mm前後(私が見たことのある資料で最も小さい値は0.025mm、最も大きい値は0.033mmとなっていましたから、0.029±0.004mmくらいでしょうか)に設定されることが多いようです。

一般に被写界深度の前端(近点)は「過焦点距離」の1/2くらいといわれていますので、パンフォーカスで撮影するときはこれを目安に合焦点とF値を設定します。「過焦点距離」というのは、被写界深度の後端(遠点)に無限遠が収まるときの合焦点のことです。

パンフォーカスにした場合の位置関係
パンフォーカスにした場合の位置関係

過焦点距離:H(mm)、レンズの焦点距離:f(mm)、F値:N、許容錯乱円の直径:c(mm)は以下のような関係になっています。

H=f2/N/c

例えば、焦点距離28mmのレンズでF8まで絞り、許容錯乱円の直径を0.029mmとした場合、過焦点距離は3.4mくらいになります。ですから、この条件では1.7mくらいから無限遠までピントが合った(ように見える)パンフォーカスになるというわけですね。

ちなみに、富士フイルムの「写ルンです」に代表されるレンズ付きフィルムの類もこれを応用しています。写ルンですのスタンダードタイプは焦点距離26mmでF11まで絞っていますから、1mくらいからパンフォーカスになっているようです。こうしたパンフォーカスを利用することでピント合わせを不要とするカラクリが携帯電話のカメラやトイカメラなども用いられているのは言うまでもありません。

ちゃんとしたコンパクトデジカメはレンズを駆動してピント合わせを行っていますが、イメージセンサが非常に小さい分だけやはりレンズの焦点距離も短く、被写界深度も全般的に深くなっています。例えば、私が仕事用として普段持ち歩いているパナソニックLUMIX DMC-FX35の場合、イメージセンサは一般的な1/2.33型で焦点距離を35mm判に換算するレートは5.7弱にもなります。

このカメラは35mm判に換算すると25~100mm相当になるズームレンズですが、実際の焦点距離は4.4~17.6mmしかありません。それで明るさがF2.8~5.6です。1/2.33型の撮像素子の対角線は7.7mmくらいですから、許容錯乱円の直径は0.005mmくらいでしょうか。過焦点距離にピントを合わせると、絞り開放でもテレ端で5.5mくらいからパンフォーカスになり、ワイド端では0.7mくらいからパンフォーカスになってしまうわけですね。

これではテレ端はともかく、ワイド端ではAF機構を働かせる意味が薄いような感じになってきます。が、見方を変えればコンパクトデジカメのワイド端でピント合わせを行うのは「被写体に合焦させる」ということより「過焦点距離より前にある被写体に合焦させたとき無限遠がアウトフォーカスになる」ということに意味が生じてくるように思えます。こうしたケースでは背景をぼかすためにAF機構を働かせていると言えるのかも知れません。

APS-Cサイズはこうしたコンパクトデジカメなどに比べればずっと被写界深度が浅くなりますし、単焦点の明るいレンズを駆使すればフルサイズに暗いズームレンズを付けているより浅い被写界深度を得ることも可能になってきます。

例えば、キヤノン場合、EF28mm F1.8 USMというレンズが人気があるようです。それはAPS-Cサイズで使えば35mm判換算で44.8mm相当という標準レンズになり、解放F値が1.8という明るさだからでしょう。このレンズを絞り開放として過焦点距離を計算しますと、24.2mくらいになります。

一方、35mm判フルサイズにF4通しの中口径ズームレンズを付け、絞り開放で焦点距離を同等の44.8mmとして過焦点距離を計算しますと、17.3mくらいになりますから、約7mも近づいてしまうんですね。それだけAPS-Cサイズに明るい単焦点レンズのほうが浅い被写界深度を活用できるというわけです。ちなみに、このケースではF2.8通しの大口径ズームでほぼ同じくらいの過焦点距離になります。フルサイズに大口径ズームとAPS-Cサイズに28mmの単焦点レンズ、各々の組み合わせでどれだけ機動性が違うかは試してみなくても容易に想像が付きます。

画角を変えられるという便利さを失うことになりますが、大きく重いフルサイズより高い機動性と浅い被写界深度が得られるという点では、こうした組み合わせも大いに意味があるでしょう。また、遠景を中心とした風景写真なら被写界深度の浅さに殊更拘る必要もないでしょうし、パンフォーカスで撮るなら被写界深度が深いほうが有利になります。要はレンズの選び方と使い方次第ということですね。

各社ともフルサイズ機は気合いを入れて撮るハイアマチュア向けと想定しているせいか、ボディがやたらに大きく重くなっています。もし、ペンタックスK-7くらいのスペックでフルサイズセンサを搭載したモデルがキヤノンから発売されたら、私は即行でEOS 5D Mk2を売り飛ばしてそれを買うでしょう。APS-CサイズのくせにEOS 5D Mk2より重いEOS 7Dなどは私にとって論外ですが、機動性や肉体的な負担を考慮すれば却って不利な場面も少なくないフルサイズ機に拘るより、軽快に扱えるAPS-Cサイズも良いのでは?と思い直すようになりました。

特に、いつでも速写できるパンフォーカスにしておいて、時にはノーファインダーで情景を撫で斬りにすることもある路上スナップなど、大きく重いボディのフルサイズ機は機動性が悪いだけでなく、個人的には気軽さという心理的な部分でも負担に感じることがあります。そんな風に考えるようになると、かつて旅行や出張の友として活躍してくれたEOS kissの存在が私の中で次第に大きくなっていったのでした。

(つづく)

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