酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「UD」は永遠に?

日産ディーゼルは2月1日付で社名から「日産」の名称を外し、「UDトラックス」になる見込みだそうです。ただし、正式発表は1月26日の予定で、当の日産ディーゼルはメディアにリークされて慌てて釘を刺すプレスインフォメーションを出しましたが。

思えば、日産ディーゼルは大型商用車メーカー4社(日野、三菱ふそう、いすゞ、日産ディーゼル)の中でシェアが最も小さく、私が前職でその業界に深く関わっていたときは周囲にも「いつ潰れるか」などと陰口をたたく人が結構いました。

国内においては、普通トラック(車両総重量8トン以下クラスのいわゆる中型トラックとそれ以上の大型トラックを合わせたもの)の部門で日野と三菱ふそうがトップシェアを競い、小型トラック(最大積載量2~3トンクラス)はいすゞと三菱ふそうがリードしてきましたが(三菱ふそうはいずれも例のクレーム隠し問題でシェアをそれなりに落としたようですが)、日産ディーゼルは殆どの部門で最下位争いをしており、得意分野はごく限られていました。

現状において日産ディーゼルが強い分野といえば、随分前からライバルが淘汰されていたクレーンキャリア(大型クレーンを架装するベース車)とか、ついに三菱ふそうも撤退が決まって市場を独占することになった除雪専用の総輪駆動車といったニッチなマーケットくらいでしょうか。

日産ディーゼルの販社では小型トラックも扱っていますが、いすゞのエルフをOEMで供給しているだけですので、日産ディーゼル製ではありません。また、近年は中型トラック・バス用エンジンを日野から購入するといった状態です。ま、そのお陰で大型用エンジンの開発に資本を集約でき、「尿素SCR」という窒素酸化物の後処理技術を世界で初めて市販化したのですから、それなりの身の振りかたはできていたのでしょうけど。

元々、日産ディーゼルはエンジン屋でした。1935年に創業した当時の社名は日本デイゼル工業(株)で、当初はドイツのクルップ・ユンカース型上下対向ピストン式2サイクルディーゼルエンジンのパテントを取得し、そのライセンス生産を行っていました。その後、同社はトラックやバスを製造する大型商用車メーカーへと発展し、1953年から日産が資本参加、同時に国内販売拠点の拡充が行われました。「日産」を冠した日産ディーゼル工業(株)への社名変更は1960年のことでした。

それと前後してGMのパテントを取得し、ライセンス生産が行われたユニフロー掃気式2サイクルディーゼルエンジン「Uniflow scavenging Diesel engine」の略称として「UD」を用い、それを示すエンブレムを付すようになりました。つまり、当初「UD」はこの2サイクルディーゼルを搭載していること示すエンブレムだったわけです。が、それがいつの間にかブランド化していったんですね。1974年にUDエンジンの生産を終了した後もこれを使い続けてきたという経緯があります。

ユニフロー掃気式2サイクルディーゼル
ユニフロー掃気式2サイクルディーゼルエンジン
モーターサイクルなどに用いられる一般的な2サイクルエンジン(デイ式)は
ご存じのようにシリンダー側面の吸排気ポートをピストンの往復によって
閉塞/開放することで弁機構を省略した非常にシンプルな構造になります。
この図はGMのものですが、ご覧のようにシリンダヘッドに排気弁が配されています。
吸気はデイ式と同じくシリンダー側面に設けられたポートからになりますが、
弁機構が設けられた筒頂部のポートへ排気する格好になります。
「uni(単)flow(流)」という名の通り、給排気が一方行に流れることから
デイ式のように給排気がぶつかり合ったりその道筋が大きく湾曲して
排気の残留量が大きくなりがちなものよりも燃焼が安定し、効率を高められる
といったメリットがあります。
特にロングストロークで圧縮比が大きいディーゼルエンジンは
このメリットを得るためにこの方式を用いる価値があるといえます。


UDエンジンをやめても「Uniflow scavenging Diesel engine」を謳うのはおかしいということで、現在は「UD」を「Ultimate Dependability (究極の信頼)」の意としています。こうしたパターンは時々ありますね。

例えば、シマノのロード用最高級コンポ「DURA-ACE」も当初はジュラルミン製クランクのブランドとして命名され、最初の1年間の日本語表記は「ジュラエース」だったそうです。いまでも古参ユーザーの中には「ジュラ」と略す人がいるのはその名残でしょう。現在では「DURA」を「durability (耐久性)」の意としています。が、こうして由来を後付けすると、どうあがいても苦しい感じになってしまいますね。

さらに余談になりますが、2サイクルは爆発行程が4サイクルの2倍になりますから、同じ排気量で4サイクルの2倍くらいの出力が得られます。外寸や質量に対して高出力が求められる分野では有利になるわけですね。ですから、現在でもユニフロー掃気式2サイクルディーゼルは大型船舶用や特殊分野で用いられています。例えば、三菱重工の90式戦車に搭載されている10ZG32WT型エンジンもそのひとつで、V型10気筒、総排気量21,500cc、ターボチャージャーによる過給で1,500psという高出力を誇っています。

また、トヨタもかつてルーツブロワーで過給するユニフロー掃気式の2サイクルガソリンエンジンを試作していました。この試作エンジンは東京モーターショーにカットモデルが参考出品され、私も興味津々で見た記憶があります。

ハナシを戻しましょうか。1999年に日産とルノーが提携した折、ルノーも日産ディーゼルへ資本参加しました。ルノーも同様の大型商用車部門を持っていましたから、この提携で部品の共用化が進められるなど、両者は非常に密接な関係になっていくのではないかと周囲はもちろん、当の日産ディーゼルもそう思っていたでしょう。

ルノーが主導権を握って日産ディーゼルはバス車体の生産拠点を集約したり、中型用エンジンの自社開発をやめて日野からの供給に切り替えたり、販社を整理したり、大規模なリストラが敢行されました。カルロス・ゴーン氏の指揮下に収まった日産もそうでしたが、こうしたリストラで日産ディーゼルも経営状態を改善していったようです。

が、ルノーは2001年に自社の大型商用車部門をボルボへ売却、日産ディーゼルの経営再建プログラムが完了すると、その株式も売却を進めました。日産も程なく保有していた日産ディーゼルの株式をボルボへ売却し始め、2006年にはゼロとなりました。このとき半世紀以上続いた両者の資本関係が解消されたわけです(業務提携は現在も続いているようですが)。

その後ボルボはTOB(株式公開買い付け)で日産ディーゼルを完全子会社化する旨を発表、日産ディーゼル側もこれを受諾しました。そしてこの度、社名から完全に「日産」の名称を外すことになったというわけですね。

ま、「UD」はずっとブランドとして用いられてきましたので、社名から「日産」を外すとなればこれが起用されるのは自然な流れだと思います。とはいえ、まさかエンジンの略称として用いられた「UD」が55年後に社名になるとは、当時この略称の採用を決めた人も思わなかったでしょう。UDエンジンの生産をやめた1974年に「UD」の使用もやめていたら、今回の社名変更では全く違う名称が選ばれていたのは間違いないでしょう。運命の糸というのはどこに繋がっているのか解らないものです。



全然関係ありませんが、かつてはヨドバシカメラと新宿駅の東西で覇を競い合った老舗量販店のさくらやが今年2月末で全店閉店するそうですね。私は古くからヨドバシ派でしたが、ホビー館はヨドバシより早くから充実していましたから、ミニチャンプスのスケールモデルなど置き場が困るくらいここで買いあさったものです。非常に残念ですね。

なお、ポイントカードのポイントはJALのマイレージと違って保護されないそうで、親会社のベスト電器に引き継がれるわけではないとのことです。貯まっている方は早めに使い切ったほうが良さそうですね。私は100円くらいですからわざわざ使いに行くのも微妙ですが。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/tb.php/532-004f1492
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

まとめ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。