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愚者は同じ過ちを繰り返す (補足)

ご存じのようにトヨタは新型プリウスを含む4車種のハイブリッド車についてリコールを正式に届出ました。過去にあったABS関連の類例に比べれば決して遅い対応とはいえませんが、これだけメディアの注目を浴びる中での振る舞いとしては無様だったといわざるを得ません。トヨタも日頃からPR会社などの指導を受け、こうしたケースを想定したメディア対応をシミュレートし、心証を害さないようなトレーニングをしておくべきだったかも知れません。

それにしても、フォード・フュージョンおよびその兄弟車であるマーキュリー・ミランのハイブリッド仕様でも新型プリウスと殆ど同じ問題が発生しているのですが、日本の主要なメディアがこれを大きく扱わないのは何故なんでしょう? ここまで偏向報道が徹底されているのは極めて不自然で、単なる無知では済まされない気がします。何らかの意志が働いているようで、少々気味が悪くなってきますね。

さて、先の『愚者は同じ過ちを繰り返す』と題したエントリの後半でリコール制度についてメディアの解釈が間違っていると批判した部分ですが、頂いたコメントを読んで言葉が足りず誤解を与えかねない状態だということに気付きました。取り急ぎ追記させて頂いたのですが、どちらにしてもリコール制度について詳しく触れないままでは舌っ足らずな状態を完全に解消できませんので、補足させて頂くことにしました。

日本における自動車のリコール制度については今なお不充分と思われる状態で、いずれそれを含めてキチンと纏めたエントリを設けようと考えていましたが、ここではリコール制度の概要を踏まえながら、先のエントリで引用した記事などに見られるような報道の問題点を改めてご説明します。

まず、自動車メーカーが国土交通省に届出て改修を行う手続には先にも触れましたように「リコール」と「改善対策」と「サービスキャンペーン」の3種類があります。各々の違いは以下のようになっています。

リコール:自動車の構造、装置または性能が「道路運送車両の保安基準」に適合しないと認められる、もしくは適合しなくなる恐れがあるもの

改善対策:自動車の構造、装置または性能が「道路運送車両の保安基準」に適合しなくなる恐れはないが、安全上もしくは環境保全上看過できないもの

サービスキャンペーン:リコールおよび改善対策に該当せず、品質の改善のために国土交通省へ届出て不具合の改修を実施するもの

道路運送車両の保安基準」(以下、「保安基準」と略します)というのは、道路運送車両法第三章の規定に基づくもので、「公道を走ることのできる自動車の要件」を定めているものとご理解頂けば良いかと思います。私たちが自動車を購入する場合も普通は公道を走ることが前提となりますから、車検を受けてナンバーを取得しますが、そうして登録される自動車は保安基準に適合している必要があります。

「リコール」に該当するということは、要するに「公道を走る自動車として欠格している、もしくはその恐れがある」ということになります。先のエントリで引用した記事もそうですが、多くのメディアが「リコール」について「不具合の原因が設計や製造段階にあったことを認める」といった説明をしており、これは明らかに的外れです。

先のエントリではABSの不具合で「サービスキャンペーン」となった例についても触れましたが、あれも警告灯が誤作動する恐れがあるとか、通常のブレーキとしては問題なく作動するもののABSが働かなくなる恐れがあるといった不具合を解消するための改修が行われました。「改善対策」もまた不具合の原因が設計や製造段階にあったことを認めないというものではありません。

「リコール」と「改善対策」を分ける定義は保安基準を満たさなくなる恐れがあるか否か、「改善対策」と「サービスキャンペーン」を分ける定義は安全上もしくは環境保全上の問題があるか否かということになります。

当初、トヨタは新型プリウスのブレーキ問題を「サービスキャンペーン」として処理しようとしているとの報道もありました。が、制御プログラムに起因するABSの不具合の前例では殆どが「改善対策」となっており、一部が「リコール」として処理されています。

ですから、新型プリウスの場合もこのどちらかに該当し、「サービスキャンペーン」で済まされることはなかったと思われます。トヨタが「サービスキャンペーン」とし、「リコール」に該当しないと主張しても、国土交通省が「リコール」に該当すると判断した場合、最終的にはそれに従わなければなりません。

件の記事では“自主的な改修である「サービスキャンペーン」などがあるが、トヨタの今回の対応には国内でも批判が強まっており、「リコールせざるを得ない」(業界関係者)との見方もある”と書かれており、あたかも批判が強まっていなかったら「サービスキャンペーン」で済まされてしまうように読める書きぶりになっていました。しかしながら、国土交通省が「リコール」に該当すると判断した場合、批判があろうがなかろうが、最終的には「リコール」を届出なければなりません。

今回の新型プリウスの場合、ABSの作動時に回生ブレーキから摩擦ブレーキに切り替わる段階で若干のタイムラグが生じることがあるとされています。そうしたタイムラグの存在が保安基準に適合するか否か判断されるわけで、その結果が「リコール」に該当するか否かに直結します。これが保安基準を満たしていると判断された場合でも安全上看過できるか否かが「改善対策」になるか「サービスキャンペーン」になるかの分岐点というわけです。こうした点でメーカーの見解と国土交通省の見解が食い違ったとしても、最終的には国土交通省の判断に従わなければならないというわけです。

件の記事やそれに類する報道では、まるでトヨタの判断だけで全て決まってしまうような述べかたになっていました。また、その判断について国土交通省の関与を触れているものは私の見聞きした範囲では一切ありませんでした。そうした点が問題だと感じたことから、批判を展開したというわけです。

少々言い訳になってしまいますが、先のエントリでは過去の類例に気付かず新型プリウスの問題だけを大きく扱っている状態がかつて三菱車の火災のみを伝えた偏向報道と同じことの繰り返しであると述べるのが主題で、今回補足した部分はついでに書いたものでした。しかしながら、推敲が足りず、誤解を与える恐れがあったのは確かですので、ここは真摯に反省しなければなりませんね。

コメント

私も自動車メーカーでの勤務経験のあるチャリ好きおやじです。するどい論評いつも楽しく拝見し勉強させてもらっています。プリウスを3月に納車予定なので、あまりのタイムリーさに思わず書きコしました。これからもよろしくお願いします。

  • 2010/02/11(木) 09:48:56 |
  • URL |
  • いがぴ #-
  • [ 編集]

二つ 質問
タイヤが外れた原因の 第一が エアーでの締めすぎと思っています 手で緩められないほど 締めてどうする 事故の後 何か対策がとられたのか 目視では 金属疲労はわからない 車検で対策はしているのか

30年前から カタログにブレーキ性能の表示はしないのかと聞いているが ブレーキがあまい 辛い は何を基準に判断しているのか どこかに表示されているのか 無いなら 何故 しないのか 時速50KMで フルブレーキ A車で何M B車で何M

  • 2010/02/11(木) 18:10:19 |
  • URL |
  • なるさん #-
  • [ 編集]

いがぴさん>

ご愛顧下さいまして有り難うございます。

この記事を投稿した後にも色々調べてみたのですが、トヨタは新型プリウスのブレーキに関するクレームの再現実験をやっていたそうですね。Car Washの記事などは旧型に出なかった症状が何故新型になって出るようになったのかを含め、かなり詳しくレポートできていると思います。
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20100210_348129.html

これを読んだ限り、やはり欠陥というほどのものではなく、当初トヨタが「感覚の問題」と主張していたことに対して「不誠実な対応」と決めつけられるか微妙な気がしてきます。

また、個人でサーキットに持ち込み、実際に雪道でテストされている方もいらっしゃいました。
http://minkara.carview.co.jp/userid/148418/blog/16820811/

これもやはり似たような結果かと思います。

もちろん、これらだけでは全ての状況に応じた確認ができているとはいえませんし、寄せられているクレームも「素人の感覚によるもの」として切り捨てるわけにはいかないでしょう。が、ABSを搭載しているクルマであれば、それが作動する際に必ずコンピュータが介在します。新型プリウス以外のクルマでもこうした制御プログラムが全ての状況で問題なく振る舞える確証はありませんし、実際に問題があってリコールないし改善対策となった類例が過去にいくつもあるのはご紹介したとおりです。やはりプリウスだけが問題視されるのは公平性を欠いているといわざるを得ません。

もしかしたら、最初にご紹介したCar Washの記事にあるような丁寧な説明が初期段階でスムーズに行われていたら、ここまで炎上することはなかったかも知れません。しかし、実際には当初「調査中」としておきながら一夜明けたら「対策済み」でしたから、これでは一気に信頼を失ってしまうのも仕方ないでしょう。トヨタは初期対応で致命的なミスを犯したということなのかも知れませんね。

今後とも宜しくお願いします。




なるさん さん>

申し訳ありませんが、私にはかなり不躾に感じられました。生意気をいうようで恐縮ですが、私だったら人に教えを請いたいと思うとき、言葉遣いにはもう少し留意します。

私はいわゆる「教えて君」に対しても比較的寛容なほうだと思いますし、頂いたコメントに対するリプライは出来るだけ丁寧に応じるよう心がけているつもりですが、今回はご自分でお調べ頂きたいと思います。

  • 2010/02/11(木) 23:15:42 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

二つのレポ参考になりました。ありがとうございます。まぁ、車は毎月変わっていくものですからね(笑)。

  • 2010/02/13(土) 20:34:59 |
  • URL |
  • いがぴ #-
  • [ 編集]

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