酒と蘊蓄の日々

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ビジネス的にはインサイトのほうがヤバイかも? (その1)

アメリカでは大規模リコールを行ったトヨタに対し、「下取価格が下がった」とするユーザーが集団訴訟を起しているようです。訴訟大国アメリカでこうしたリコールを行えば、必ず同様の訴訟は起こされますから、いつものパターンですね。その一方でABCテレビが行った世論調査では「今後もトヨタ車を買いたいか」との質問に「買う」と答えた人が72%、「買いたくない」と答えた人は22%で、冷静に受け止めている人のほうがずっと多いようです。

ま、GMやフォードだって大規模リコールは珍しいことではありませんし、コンシューマーレポートがフォード・フュージョンのハイブリッド仕様にもブレーキの不具合があったことを伝えましたから、実情を理解して米政府やメディアの過剰な扱いを冷ややかな目で見ている人も少なくないということなのでしょう。日本でもプリウスユーザーの多くは冷静と報じられていますし、祭り状態になったメディアとユーザーとの温度差はかなり大きいように感じられます。

一部には今回のリコールでプリウスの販売に影響が生じるのではないかと推測しているメディアもあります。確かに、あれだけ酷い偏向報道で劣悪なイメージを擦り込まれてしまったら、空気に流されやすい人がそれに乗ってしまっても不思議ではありません。が、日本では相変わらず毎月の供給能力に対して6倍近いバックオーダーを抱えていますから、その影響がすぐに現れることはないでしょう。

納期が半年近いプリウスは、これまでもキャンセルが出れば販売店同士での争奪戦になっていたといいます。なので、仮に今般のリコール騒動で一部の人がキャンセルしても、その影響が見られるようになるのは何ヶ月も先になるでしょう。その頃までには落ち着きを取り戻して影響はかなり薄まっているかも知れません。1月出荷分から既に問題の制御プログラムは変更済みだといいますから、アメリカでのアクセル部品の問題のように対策実施を優先させて販売が途切れるといった心配もありません。

それよりも私が心配しているのはインサイトのほうです。

当blogではインサイトに関してかなりシビアな論評を展開してきましたが、比較的硬派な自動車専門誌の評価も似たような傾向が見られます。インサイトはハイブリッド車だと解りやすくするためにプリウスによく似た専用ボディを与えられただけで、兼用車であるシビックハイブリッドよりもハイブリッド車として作り込まれていない専用車という何とも中途半端なコンセプトが評価を下げているのでしょう。

また、コストダウンを考えた場合もそうですが、スペースユーティリティという点でもボディだけの専用車などに寄り道せず、素直にフィットのハイブリッド仕様をリリースしていたほうが良かったのではないかという意見もときどき耳にします。実際、インサイトの購入を考えてディーラーへ行ったものの、フィットに流れてしまったという人は結構いるそうです。

インサイトは後部座席の天井が低く、フィットより乗降性が劣りますし、そんなつくりですからヘッドクリアランスも充分とはいえません。その点はプリウスも同様ですが、3代目ではルーフの曲線の頂点となる部分を2代目より後方へずらし、多少は改善されています。が、2代目プリウスを横目で見ながらデザインされたと思われるインサイトは、後部座席に座ると天井に頭を抑えられているような圧迫感がありますし、座高が高い人は髪が天井に触れてしまうこともあるようです。

3rd-prius_vs_2nd-insight.jpg
インサイトとプリウスの側面シルエット比較
青が2代目インサイト、赤が3代目プリウスの側面シルエットになります。
ボンネットやルーフの曲率が異なり、インサイトは低めに抑えられていますが、
全般的なフォルムやエンジンコンパートメントとキャビンのバランスなど
多くの部分に共通性が見られると思います。
(外寸図を加工したものですので、多少の誤差はあるかも知れません。)


後部座席を畳んだときの積載効率なども、初代からそれを熟慮して作られたフィットに比べるとインサイトはかなり見劣りします。車両本体の価格差と実燃費の差を比較検討した場合、インサイトにはコストメリットがなく、ユーティリティの高さと小回りの利くボディ外寸などからフィットのほうがバランスがよいと判断する人も少なくないといいます。

ホンダは当初、価格の安さを前面に打ち出してインサイトの広告を展開していました。が、PR会社にそそのかされたのかどうか解りませんが、メディアの利用の仕方が結果的にトヨタの神経を逆撫でしてしまったと見られます(関連記事『インサイトは日本でもジリ貧か? (その3)』)。インサイトの最廉価グレード189万円に対してプリウスも205万円という低価格で対抗してくるとは、ホンダの首脳陣は夢にも思わなかったでしょう。

これも何度か触れてきたことですが、この16万円という価格差も装備の違いを考慮すれば割安感が逆転します。プリウスは最廉価グレードでもアルミホイールやスマートキー、サイドエアバッグ類を標準装備しているのに対し、インサイトはいずれもオプションとなっており、全て装着するとプリウスより割高になってしまいます。

それでいてインサイトの内装は軽自動車並みのチープさ、ドアを閉じたときの音なども最近はウエザーストリップの材質や形状などでチューニングするものですが、そこまでコストを裂いていないのがバレバレの安っぽさです。足回りの硬さは乗用車として過剰だと思いますが、あの硬さに見合った仕上げになっていないのもやはりコストダウンを優先させた結果であるように感じました。

ラバーブッシュの硬さでサスペンションコンプライアンスを上手くチューニングしてやれば、多少硬めの足回りでも突き上げ感を幾らかマイルドにできるものです。20年くらい前に私の父が乗っていたBMW525iなどはこの辺が凄く上手でした。硬めで芯のある足なのに突き上げ感はかなり抑えられており、上品な乗り心地なのにコーナーではちゃんとスポーティに走るという見事なセッティングでした。

ま、あのような高級車と比べるのはナンセンスですが、インサイトはコンプライアンスのチューニングもチープな感じですし、ダンパーも廉価な乗用車にありがちな安物を使っている感じです。そうしたコストの足枷があるのならもっと普通の足にして、無理にスポーティを演出するべきではなかったと思いますが、その辺はいわゆる「差別化」なのでしょう。

かくして、インサイトの乗り心地は現代の乗用車の標準からかなり劣る部類になってしまいました。鏡のようにキレイに舗装されたところでは問題ありませんが、轍や段差などで荒れ気味のところを走るとかなり下品な突き上げが来ます。ま、あくまでも短時間の試乗による個人的な感想ですが、イギリスの辛口ジャーナリスト、ジェレミー・クラークソン氏が「木にぶつけてやりたい」と酷評していたほどでもなかったと思います。(関連記事『アメリカではプリウスとインサイトの明暗が分かれた』)

肝心のハイブリッドシステムや効率アップを狙う諸々のハードウェアもプリウスとは全く次元が異なります。もっとも、今回のリコール騒動でプリウスもシステムの詰めの甘さを露呈してしまいましたけど。ついでですから、この辺についてザックリと触れておきましょうか。

初代プリウスの特に前期モデルは回生ブレーキと摩擦ブレーキの切り替えが下手で、制動力の立ち上がりが急峻ないわゆる「カックンブレーキ」だったといいます。つまり、リコールされた3代目のABS作動時ように制動力が一時的に低下してしまうのとは逆に、摩擦ブレーキの利き始めが急激すぎたということなのでしょう。

そうした部分に関しては私が所有する2代目になると全く違和感がないレベルまで煮詰められていたわけですが、電動ポンプやソレノイドからのノイズが微振動としてブレーキペダルに伝わることがある(私は殆ど気になりませんが)という細かい指摘にトヨタは応え、3代目でシステムを変更しました。そこでABS作動時の切り替えに甘さを残してしまったということのようです。

インサイトも停車時にセレクターをPレンジにするとエンジンが勝手に始動してしまうという意味不明な仕様になっています。こうしたところを見ますと、インサイトも充分にシステムが煮詰められているとはいえないかも知れません。ま、制動力に影響が生じることがあるプリウスのそれとは次元の違うハナシではありますが。

で、インサイトが心配ということですが、これまで好調をキープしてきた日本国内の販売台数が先月急激に減少してしまったんですね。理由はよく解りませんが、かなりの落ち込みかたをしています。欧米では初めから大不振だったインサイトが日本でも売れなくなってしまったら、それは引導を渡されたも同然です。

(つづく)

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