酒と蘊蓄の日々

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環境相にはもう少し専門知識のある人間を (その2)

小沢環境相が発表したCO2排出削減のロードマップは軽薄なエコブームの範疇を越えるものではなく、現実を直視できていないという点で問題だらけです。「新車のうちハイブリッドカーを約50%、電気自動車を約7%に」という目標も何十年か先を見据えれば可能かも知れませんが、10年以内ということであれば荒唐無稽といわざるを得ないでしょう。

殊に、電気自動車の7%は昨今のブームにただ乗せられているだけといった印象で、技術的な限界もビジネス面の課題も推進派の楽観論を丸呑みにしている状態といって良いでしょう。逆に、10年くらい前にブームとなり、現在ではすっかり冷めてしまった燃料電池車については触れられていません。

近年ではダイハツが開発した包水ヒドラジンを燃料とするものや、産業技術総合研究所と日本学術振興会の共同開発によるリチウム空気電池を応用した金属リチウム燃料電池など新基軸となりそうな新型燃料電池がいくつか誕生していますから、普及はともかく市販レベルを目指すなどの可能性を触れておいても良さそうなものです。が、大衆メディアが話題にしないとその存在すら気付けないのかも知れません。こうしたところを見てもブームに踊らされている素人臭さを感じてしまいます。

なお、電気自動車の普及が困難であることは当blogでも何度か詳しく検討してきたとおりですので、ここでは繰り返しません。過去の記事をご参照頂きたいと思います。(関連記事:『電気自動車は遠い過去のクルマであり遠い未来のクルマである』『電気自動車の充電スタンドは商売にならない』『インフラは後から付いてくる場合とそうでない場合がある』)

電気自動車の7%に比べればハイブリッド車は採算性も商品力も格段に向上してきましたし、技術的難易度はかなり下がってきたと思われる分だけ可能性もあります。元祖であるトヨタとそれに続くホンダだけでなく、2000年にティーノで限定100台という実験的な市場参入を経験しただけの日産も年内にフーガのハイブリッド仕様を投入し、本格参入が予定されています。が、それでも今後10年で50%はまず無理と見て間違いないでしょう。

このフーガに搭載されるハイブリッドシステムは、比較的シンプルなパラレル式のそれを組込んだFR車用トランスミッションを採用したもので、トランスミッションメーカーのジャトコが供給します。同様に、オートマチックトランスミッションでは世界最大手のアイシンAWも4WD用、FR用、FF用を開発しています

近年、トランスミッションを内製している自動車メーカーは少なくなり、こうしたトランスミッションメーカーから供給されるケースが非常に多くなりました。そのトランスミッションメーカーがハイブリッドシステムを搭載したそれの開発を進めていますから、ハイブリッド車の開発にかかる自動車メーカーの負担は以前と比べものにならないくらい軽減されていると見て良いでしょう。

特に、アイシンのFF用2モーターシステムはホンダがインサイトやシビックハイブリッドで採用している単純なパラレル式よりも高度なもので、小型車用として大いに期待できるシステムだと思います。が、ネックはやはりコスト面ですね。

一般にハイブリッド車はそのシステムを搭載するために工場原価で少なくとも数十万円の追加コストがかかるといわれています。何百万円もする高級車ならそれを付加価値として吸収するのも難しくないでしょう。日産がフーガで参入してくるのもそうしたコスト面のハードルが低くなると考えているからだと思います。が、新車の50%をハイブリッド車にするという目標を達成するには、どうあがいても安価な大衆車にそれを普及させなければ不可能です。

ご紹介しましたように、既にトランスミッションメーカーがハイブリッドシステムを組込んだそれを供給できるようになってきた現在、大概の自動車メーカーは市販レベルのハイブリッド車を作ること自体に大きな技術的障害はないでしょう。それでも多くのメーカーが積極的でないのは、やはり追加コストがビジネス上の問題になっているからだと考えるのが妥当です。

特に大衆車の場合、ただでさえ激しい競争を勝ち抜くためにかなりのレベルでコストダウンを競っています。そうした中で数十万円のコスト増を抱え込むのはマーケットの理解が不可欠です。原価で数十万円ということは、利益率を下げない限り販売価格はさらに高くなります。仮に販売価格で30万円割高になるとしたら、それを全体の50%のユーザーに納得してもらうには明確なコストメリットを示す必要があるでしょう。

30万円もあれば、現在の相場でレギュラーガソリンを2,500Lくらい買うことができます。仮に平均燃費15km/Lでこれを消費すれば、37,500kmも走れてしまう計算になります。ハイブリッド車にして燃費消費を半分に抑えることができたとしても、元を取るのに75,000kmも走らなければなりません。もし、ローンでクルマを買うとしたら、当然のことながら車両本体の差額分30万円にも金利がかかってくるわけですから、元を取れるのがさらに先のハナシになってしまいます。

もちろん、以前のようにガソリンの価格が高止まれば状況は好転するでしょう。逆に、安い状況が続いてしまうとさらに元を取りにくくなります。この辺は相場の変動というリスクがかかってくるわけですね。前述したLED電球のように寿命の長さだけでも確実に元が取れるという製品でさえイニシャルコストの高さは障壁になっています。ランニングコストの安さよりイニシャルコストの安さのほうがユーザーを取り込みやすいという現実は幾つものビジネスモデルが示しています。

例えば、総務省がインセンティブを規制する以前は携帯電話が1円でバラ撒かれたりしました。家庭用プリンタの交換インクや家庭用ゲーム機のソフトが割高だったりするのも、イニシャルコストを抑えてユーザーを取り込もうとする典型的なビジネスモデルによります。ハイブリッド車はその逆を行くうえ、かなりの距離を走る人以外、確実なコストメリットを見出せるようなレベルにないのが現状です。

ハイブリッド車に関しては12年以上に渡って世界の先頭を走り続けてきたトヨタでさえ、海外を含めると全体の5.2%程でしかありません。2番手のホンダに至っては先日お伝えしましたように、インサイトの国内販売台数も急落して先行きが懸念される状況です。高級車などコスト増の吸収が比較的容易なマーケットならばともかく、大衆車にはコストの壁が立ちはだかっているという実態を失念してはいけません。

また、ハイブリッド車を50%、電気自動車を7%としたら、そのどちらにも競争力がないメーカーは残りの43%で勝ち残らなければならないという過酷な状況に追い込まれてしまうでしょう。もしそんなことになれば、日本国内市場から逃げ出し、海外に活路を見出さなければならないメーカーも出てくるかも知れません。

そもそも、ハイブリッド車に固執する意味が私には理解できません。例えば、レクサスLS600hというハイブリッド車の10-15モード燃費は12.2km/Lですが、1000ccのガソリンエンジンだけで走るヴィッツは22.5km/Lですから、45%以上もCO2排出量が少ないといえます。生産時にかかるCO2排出量がどれくらい違うのか明確な資料がありませんから何ともいえませんが、こちらもかなり大きな差があるのは間違いありません。

大衆車の多くは元々燃費が良く、生産時にかかるエネルギー投入量も少ないのですから、LCAで見た場合、ハイブリッド車とそうでないクルマとで生涯のCO2排出量に劇的な差が生じるようにも思えません。とはいえ、そうした部分は明確な資料もありませんので、何とも言い難いところです。国策としてハイブリッド車の普及を目指すというのなら、少なくともその実効性をキチンと調査し、こうした疑問が挿まれないようにしておくべきでしょう。

こうした部分以外を考えても、ハイブリッド車の普及率を上げていくべきなのか疑問は残ります。例えば、ハイブリッド車の走行用電池は車両の寿命に合わせてマネジメントされているといいますが、保証期限は設定されていますから、それを過ぎて不具合が生じれば有償交換ということになります。2代目プリウスの場合、10万kmか5年のうち早いほうが保証期限となっており、有償交換となると部品代と工賃の合計が14万円ほどになるといいます。

ハイブリッド車が増えればこうしたリスクも多くの人が背負うことになるわけですが、当然のことながら新車より中古車のほうがそのリスクは高くなるわけで、経済的弱者にしわ寄せが行ってしまうことになりかねません。ま、それでクルマ離れが進めば保有台数の減少に繋がり、効果的なCO2排出量の削減になるかも知れません。が、それこそ格差の拡大であって、民主党の掲げるイデオロギーに反します。

闇雲にハイブリッド車を増やすより、燃費の悪いクルマに高い租税を課し、逆に燃費の良いクルマの租税を軽減し、ハイブリッド車であるか否かを問わず、より燃費の良いクルマを選ぶよう促すほうが遙かに現実的ですし、メーカーに対する負担も軽く、あまり距離は乗らないからハイブリッド車である必要がないという人たちも巻き込まずに済むでしょう。

マツダのようにハイブリッドではなく、アイドリングストップや従来技術を洗練させることで更なる燃費向上を目指すのもLCAを考慮すれば一方策として正しいといえるでしょう。が、それを43%の中に押し込めてしまうのは大いに問題です。また、ハイブリッド車のほうがより多くの資源を必要としますから、運用時のCO2排出量が少ないという一部分だけに気をとられるのも稚拙といわざるを得ません。

(つづく)

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