酒と蘊蓄の日々

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環境相にはもう少し専門知識のある人間を (その3)

当blogでは何度か不安定電源である風力や太陽光発電、出力調整のできない原子力発電は闇雲に増やせないという現実をご紹介してきました。需要に見合った供給量に調整できなければそれは「電力の安定供給」という電力会社に課せられた絶対的な義務を果たすことはできません。(関連記事:『絵に描いた餅 (その4)』)

しかし、小沢環境相はこうした風力や太陽光発電、原子力発電のように自己完結できない電源を増やそうというわけです。ならば、それを補完するシステムを具体的に示しておかなければなりません。

CO2排出量を削減するからには、出力の調整代として大きな役割を担っている火力発電を減らさなければなりません。利水事業の拡大を否定している民主党政権下は揚水発電を拡大することも許されません。残るは実績の乏しいNAS電池か、効率が悪く地震国である日本には馴染みそうもないCAES(圧搾空気でエネルギーを貯蔵するシステム)くらいしか私には思い当たりませんが、そうした根幹に関わる部分には触れられていません。

少なくとも、風力や太陽光発電、原子力発電を拡大するというのであれば、需要との調整代となるエネルギーストレージの整備は先回りで済ませておかなければ「電力の安定供給」を維持するシステムが破綻してしまいます。リードタイムは僅か10年なのですから、いまの段階でこの辺が具体的になっていなければ全くハナシになりません。

また、くどいようですが、風力発電や太陽光発電の安定化のために揚水発電を導入するくらいなら、初めから同じ自然エネルギーである貯水池式水力発電に集約すべきです。揚水発電には上池と下池、二つの貯水池を確保しなければなりません。深夜の余剰電力で下池から上池へ水を汲み上げ、電力需要のピーク時に上池から下池へ水を流し、それを利して発電を行います。ならば、純粋な貯水池式水力発電として活用したほう遙かに効率的で、莫迦げた二重投資を回避できます。

こうしたロードマップを見ていますと、「電力の安定供給」という重要な問題を真剣に考えているように思えません。推進派の楽観論ばかりに耳を傾け、実際に現場で調整に苦慮している人たちの言葉は完全に無視されています。というより、そういう課題の存在自体をマトモに理解していないようにすら感じられます。

今年1月、朝日新聞に北海道電力の元職員の方が書かれた記事が載っていました。一部を抜粋してみます。

エコ発電 「低品質」のつけは国民に

 風力発電や太陽光発電は地球温暖化を防ぐ救世主のように言われている。だが、一般に「光」の側面だけが強調される一方、「陰」の側面の品質とコストに関する問題点がほとんど無視されている。長く各種の発電方法による電力の購入にかかわってきた立場から一言したい。

 「良品」と「不良品」あるいはそれにもあたらない「くず」の区別ははっきりしている。例えば清掃工場建設に使用する鉄骨はトン何十万円、ごみとして出された金属くずはキロ何円といったように、値段は品質によって大きく違う。だが、「電気」という商品になると区別がぼやける。

 極端に言えば、風力発電などから出てくる電気は、廃棄される金属くずの類といってもいい。そのままでは電気として流通しない。いつでも安定的に使用できる良質な電気ではないからだ。この点を、風力発電を例に説明しよう。

 日本の風力発電の年間利用率は25%。風任せなのでフル発電でも1日6時間しか発電できない。太陽光発電も夜や曇りの時に機能しない。普通の製造業でこんなに働きの悪い機械を使うだろうか。

(中略)

民主党政権はこれら自然エネルギーを電力会社に強制的に買い取らせようとしているが、つけは一般の国民に回ってくる。

 国が自然エネルギーを推進するなら、模範とされるドイツ、デンマーク、米国の料金体系と会社間の料金格差、電力会社がその導入で電力系統内に起きる負荷(需要)の変動をどう吸収しているのかを調査し、投資が国家利益にかなうことを国民に説明する義務があると考える。

(後略)

(C)朝日新聞 2010年1月13日


当blogでも『デンマークは似非エコ先進国?』と題したエントリで彼らの自立できないシステムとそれに対してFEDが「デンマークは恒常的な電力供給を保証できない風力発電を補完するため、近隣諸国で二酸化炭素の排出を増やしただけだ」と酷評していることをご紹介しました。この記事は私の予想以上に反響がありまして、アチコチにリンクが張られているようです。

私はこの分野に関して全くの素人で、全ては独学によります。が、それでも風力、太陽光、原子力を拡大した上で電力の安定供給を維持するのが難しいという高く厚い壁の存在に気付くまであまり時間はかかりませんでした。

北海道といえば日本における風力発電の中心地ですが、そこでその電力を買い付けに関わってきたというプロ中のプロの方とほぼ同じ見識に達していたのは誇らしく思います。が、逆にいえば私のような素人でもすぐに気付けることすら、国策を検討する段階で等閑になっているようでは全くハナシにならないでしょう。

そういう意味でも、もう少し専門的な知識があり、広い視野で物事を考えられる人間にロードマップを組ませるべきです。いえ、そういう人物なら目標設定そのものに無理があると看破するでしょうから、その時点で25%削減などというロードマップが組めなくなるかも知れません。先に荒唐無稽な結論があって、それに無理矢理合わせ込もうとするから過程が出鱈目になってしまうと見るべきかも知れません。

そもそも、「25%」という数字は何処から出てきたものなのでしょうか? その辺についてもキチンとした説明を聞いたことがありませんが、彼らのことですから「ヨーロッパが20%ならそれを上回る25%にしよう」といった極めて安直な発想で決められたものなのだと思います。もしそうだとしたら、最初のステップで勘違いを炸裂させ、国民を巻き込もうとしているわけですから、言語道断です。

小沢環境相の掲げたロードマップはまだ試案だそうですが、それにしても実現可能性の低いものばかりが列挙されているのですから、ほとんど意味を持ちません。少なくとも、風力発電や太陽光発電の推進、原発の増設というエネルギー政策を掲げるなら、それで成り立つ電力供給網全般のロードマップも明確に示さなければなりません。

元北海道電力の職員の方が指摘されているように、ロードマップを実行に移した場合のあらゆる状況について具体的な調査を行い、報告する義務があります。仮に、全て実現できたとしても、LCAで検討して本当に25%削減を達成できるのか大いに怪しいところですから、そうした点も明確にしておかなければなりません。それを怠ってただイメージだけで推進していくなどということは許されません。

現在明らかになっている内容を見た限り、このロードマップは採算予測の甘い箱モノ公共事業のそれにも劣るレベルとしか言いようがありません。こんな低レベルなロードマップを臆面もなく発表できるような人物を環境相にしている段階で期待などできません。夢を語るだけなら幼稚園児でもできることです。

ま、それを言ったら環境省そのものや国立環境研やNEDOなども都合の良い理屈やデータしか取り上げず、逆に都合の悪いハナシは適当に受け流す似非科学のようなことをやっている人たちの集まりですから、一度解体して組織を作り直すべきかも知れません。

(おしまい)

コメント

いつも充実した素晴らしい記事をありがとうございます。

>環境省そのものや国立環境研やNEDOなども都合の良い理屈やデータしか取り上げず、逆に都合の悪いハナシは適当に受け流す似非科学のようなことをやっている人たちの集まりですから、一度解体して組織を作り直すべきかも知れません

 よくぞ堂々と言ってくださいました。ありがとうございます。私もその通りだと思います。石墨様のブログは人気が出てきて閲覧者も増えています。環境省の御用聞き報道するしか能がない既存マスメディアとは一味も二味も滋味が深いネット言論の論客として、今後、石墨様が活躍されるのではないかと期待いたしております。

 環境省・国立環境研究所・NEDOはある種の利権団体化していますね。かつて「環境庁冬の時代」など言われたのですが、地球温暖化問題で環境省に昇格、省益を拡張し天下り法人も増えました。国立環境研の偉い先生は、真理を探究する研究者というよりも、環境省の政策にお墨付きを与える役回りの技術官僚です。NEDOにいたっては環境対策の補助金分配機構と言っても言い過ぎではありません。(補助金の分配窓口は去年から別の団体になりましたが) これらは、いっそのこと解散してもらった方がいいと思います。

 昨年10月に歌手の加藤登紀子さんがリーダーになって風力発電に反対している人々が、経済産業省に要望書を提出したようです。副大臣が面会してくれたらしいのですが、聞く耳が全くなく、理解力も全くなく、民主党の愚かな環境政策を一方的にとうとうとぶち上げるだけだったそうです。反対の陳情団に同行した作家のたくきみつよし氏が、なげいています。
http://abukuma.us/takuki/09/173.htm

 環境省や経済産業省の大臣や副大臣たちは、本来は頭も聡明で能力のきわめて高い人たちだと思うのですが、なぜ、エコ発電のペテンを見抜けないのでしょうかねえ???
それとも百も承知のうえで、なんらかの政治的な思惑でやっているのでしょうか???

  • 2010/03/03(水) 00:32:39 |
  • URL |
  • 山のきのこ #yS2cUgzQ
  • [ 編集]

すみません。訂正です。

作家の たくきみつよし氏 と書きましたが誤りです。

正しくは、たくきよしみつ氏、漢字では 鐸木能光 氏です。

たいへん失礼いたしました。

  • 2010/03/03(水) 00:49:03 |
  • URL |
  • 山のきのこ #-
  • [ 編集]

山のきのこさん>

こちらこそ、大変興味深い記事をご紹介頂きまして有り難うございます。加藤登紀子さんらのグループが風力発電に反対する活動をされているのは知っていましたが、経産省へ要望書を提出していたというのは知りませんでした。

たくき氏の主張は私が当blogで繰り返し述べてきたこととほぼ一致していますし、何より共感したのは「雑感」として綴られていた部分です。

特に「雑感4」として「政治家もそうだが、メディアも出世した上の人ほど問題の本質がまったく見えていない。」と述べられているのは私も常々感じていたことです。社説を書く論説委員というエライ人たちは、たくき氏の仰るとおり「問題の本質がまったく見えていない」という人が圧倒しているように感じます。

また、政治家についても「次の選挙でも当選できれば、それでいい。そのためにはどう動けばいいのかということしか頭にない。エネルギー問題とか環境問題とか、最初から本気で考えていないんだよ」というのも核心を突いていると思います。

これほど「うんうん」と頷きながら読める記事は普通のメディアではなかなかお目にかかれませんね。たくき氏の著書にも俄然興味がわいてきました。

  • 2010/03/04(木) 00:14:06 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

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