欧米のメディアがこのスキャンダルを大きく取り上げてきたのとは対照的に、日本の主要メディアは極めて小さな扱いでお茶を濁しただけでした。世界の流れからすれば日本のメディアの反応のほうが異常というべき状態で、1月に読売新聞の社説で触れられたのは極めて画期的な出来事だったと評すべき状態でした。
先日ご紹介したWEDGEは販路が特殊なマイナー誌ゆえ、毅然とした編集方針が貫かれたのかも知れませんが、週刊新潮の最新刊(4月8日発売)にも『「地球温暖化」を眉つばにした「世界的権威」のデータ捏造!? ――根拠が消えた「CO2原因説」と巨万の「CO2ビジネス」』という記事が掲載されました。
4ページという限られた紙幅の中でクライメート・ゲート事件の経緯を綴り、その後に次々と明らかになったIPCCの失態についても概要が纏められています。それゆえ、取り立てて目新しい情報はありませんでしたが、主要メディアがごく表面的な部分に触れるだけで他人事のように報じていたのとは異なり、肝心な部分をそれなりに抑えていると思います。何より、誰でも知っている週刊新潮というメジャー誌でここまで扱われたのはかなり画期的といえるでしょう。
もっとも、週刊新潮はこれまでにも誤報や問題のある報道を繰り返してきただけに、『「地球温暖化」を眉つばにした』という彼ら自身が眉唾で見られている恐れがあるというところがネックではありますが。
人為説支持者には「横浜国大の伊藤、東大の渡辺、中部大の武田、結局コメントしてるのはいつものメンバーじゃねぇか」と言われそうですが、人為説の脅威を吹聴しているメンバーも江守氏をはじめとした国立環境研の人たちや東北大学の明日香氏、前東大総長の小宮山氏、東工大の蟹江氏といった具合で顔ぶれはいつも同じようなものですから、それはお互い様というべきでしょう。
ところで、件の記事にはこう書かれています。
これまで懐疑派はマイナーな存在だったが、クライメートゲート事件で風向きが変ってきた。例えば、ドイツの世論調査で、06年は調査対象の62%が“温暖化が怖い”と回答したが、現在は“怖くない”が58%だという。
2001年に第三次評価報告書が発行されたときもホッケースティック曲線が問題となり、欧米のメディアにはその捏造疑惑が大きく扱われ、論争も巻き起こっていました。その論争の中で、ドイツのハンブルク大学気象研究所のハンス・フォン・シュトルヒ氏はホッケースティック曲線を「ガラクタであり、ゴミだ」と述べたというのは以前にもご紹介したとおりです。
アメリカは言わずもがなですが、ドイツでもIPCCの評価報告書や人為的温暖化説そのものに懐疑的な人たちは少なくありませんでしたから、「これまで懐疑派はマイナーな存在だった」というのは世界的に見ればチョット違うでしょう。それは日本のメディアが偏向してそういう報道を避けてきたゆえの印象なのだと思います。
とはいえ、やはり人為説を信じている人のほうが多数派であるのは間違いないでしょう。日本や韓国のように約9割が信じている状態が異常というべきだと思いますが、ドイツでこのような世論調査の結果が出ている理由をよくよく考えるべきです。
日本のメディアはドイツを環境先進国だと崇拝し、彼らを見習うべきだとする報じ方を度々します。ま、実際にはそれほどでもなく、GDP比でのCO2排出量は日本より4割くらい多いのですから、日本のほうがエネルギーの利用効率が高いという点で彼らより勝っているんですね。風力発電や太陽光発電といった子供騙しのエネルギー政策にすっかり感化されているに過ぎないというのが私の個人的な感想です。
ただ、この記事で紹介された世論調査からも解るようにドイツの人たちも人為的な地球温暖化という仮説に対してはそれなりに冷静な受け止めかたをしていることが伺えます。彼らがこうした回答をしているのは、ひとえに日本よりも情報のバランスが取れているからでしょう。見習うべきなのはむしろこうしたところです。
そういう意味でも、週刊新潮には続報を期待したいところですね。