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読売新聞は本当に開眼したようだ (その2)

以前、『読売新聞はついに目覚めた?』と題したエントリでもご紹介しましたが、同紙は地球温暖化問題について日本の多くのメディアがタブー視してきた部分に踏み込んだ社説を展開するようになりました。5月4日付の社説『地球温暖化 科学的な根拠の検証が急務だ』は、例のクライメート・ゲート事件以降の流れに触れ、日本のメジャー紙としては極めて画期的と評すべき内容になっています。

地球温暖化 科学的な根拠の検証が急務だ


 地球温暖化の科学的な信頼性が揺らぐ中、日本の科学者を代表する日本学術会議が初めて、この問題を公開の場で論議する会合を開いた。

 だが、会合では、専門家がそれぞれ自説を述べるだけで学術会議の見解は示されなかった。このまま終わらせてはならない。

 取り上げられたのは、「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が過去4回にわたってまとめてきた温暖化問題に関する科学報告書だ。次々に、根拠の怪しい記述が見つかっている。

 報告書の作成には、日本人研究者も多数関与している。

 しかも、この報告書は、日本をはじめ各国の温暖化対策の論拠にもなっている。学術会議自身、これをもとに、早急な温暖化対策を求める提言をしてきた。

 どうして、根拠なき記述が盛り込まれたのか。国連も、国際的な科学者団体であるインターアカデミーカウンシル(IAC)に、IPCCの報告書作成の問題点を検証するよう依頼している。

 国際的に多くの疑問が指摘されている以上、科学者集団として日本学術会議は、問題点を洗い直す検証作業が急務だろう。

 IPCCは3~4年後に新たな報告書をまとめる予定だ。学術会議は、報告書の信頼性を向上させるためにも、検証結果を積極的に提言していくべきだ。

 現在の報告書に対し出ている疑問の多くは、温暖化による影響の評価に関する記述だ。

 「ヒマラヤの氷河が2035年に消失する」「アフリカの穀物収穫が2020年に半減する」といった危機感を煽(あお)る内容で、対策の緊急性を訴えるため、各所で引用され、紹介されてきた。

 しかし、環境団体の文書を参考にするなど、IPCCが報告書作成の際の基準としていた、科学的な審査を経た論文に基づくものではなかった。

 欧米では問題が表面化して温暖化の科学予測に不信が広がり、対策を巡る議論も停滞している。

 日本も、鳩山政権が温室効果ガスの排出量を2020年までに1990年比で25%削減する目標を掲げているが、ただでさえ厳しすぎると言われている。不満が一層広がりはしないか。

 欧米では、危機感を煽るのではなく、率直に論議する動きが出ている。この10年、温室効果ガスは増える一方なのに気温は上がっていない矛盾を、温暖化問題で主導的な英国の研究者が公的に認めたのはその例だ。参考にしたい。


(C)読売新聞 2010年5月4日


前回取り上げた朝日新聞の社説が語る理想とは、CO2温暖化説という仮説を土台としたものです。が、読売新聞の社説に書かれているように、それには幾つもの綻びが生じています。土台がアチコチ崩れてきたのなら、まずは総点検を最優先すべきです。ロクな点検もしないまま崩れているのは末端のごく一部で全体は堅固なものだと判断するのは危険です。その上に楼閣を築きあげようと急ぎ、それが完成してから脆い砂の上に建てていたことに気付くといった愚かなことは避けなければなりません。

こうして朝日新聞と読売新聞の社説を見比べますと、各々の視野が決定的に違うことが明らかになってきます。朝日新聞も一般記事のほうではクライメート・ゲート事件をいち早く伝えたりIPCCの評価報告書に記載されたヒマラヤの氷河消失に科学的根拠がなかったことを報じたり、五大紙の中ではなかなか良い動きを見せていました。が、論説委員はこれらの記事を無視してよいものと判断したようです。

一方の読売新聞は情報鎖国状態の日本にあって、クライメート・ゲート事件以降の世界的な動きをキチンと捉えています。本来であればこれが当然というべきで、取り立てて褒めることではないかも知れません。が、他の殆どのメディアの腰抜けぶりを見ていると、ここまで社説で踏み込んだというところに「勇気」を感じてしまうほどです。

各紙で極めて軽く扱われたクライメート・ゲート事件などの記事も大抵は海外メディアが伝えたそれを孫引きしただけで、まるで他人事のようでした。しかし、社説は自分たちの考え方を主張する場ですから、外電として扱う情報とは大きく異なります。読売グループに対する私の個人的な印象は決して良いものではありませんが、地球温暖化問題に対する読売新聞の論説委員のスタンスは日本の主要メディアの中では模範的と感じます。

この社説でも「報告書の作成には、日本人研究者も多数関与している」と指摘されていますが、こうした点を他のメディアはどのように考えているのでしょう? 以前ご紹介した『WEDGE』の4月号の記事には、ヒマラヤの氷河消失に関して日本の国立環境研究所参与だった人物も査読を行って問題点を指摘したものの、「間違いに気付いていたが、その方がインパクトが強くなる」という理由で無視されたという経緯が伝えられています。

こうして日本人も関わった部分が出鱈目な状態で掲載されたわけですから、関係者はIPCCに対してもっと毅然とした態度で洗い直しを迫る必要があります。また、読売新聞の社説に「この報告書は、日本をはじめ各国の温暖化対策の論拠にもなっている」と述べられているように、ここで間違いがあれば日本の政策も間違った方向へ進んでしまう可能性が低くないのです。こうした由々しき問題を看過するのはジャーナリズムとして極めて無責任な態度といわざるを得ません。

例えば、不二家のシュークリームの原材料に賞味期限を過ぎた牛乳が使われていたことが発覚したとき、「他の製品にも同じような問題はないのか」と、メディアはしつこく追求しました。TBSに至っては勢い余って捏造報道までやらかしました。しかし、IPCCの評価報告書にいくつもの問題が生じていても不二家のように追求などされず、他人事のようにあしらうという有様です。これは価値判断基準の倒錯というより、もはや茶番というべきかも知れません。

ところで、今回の本筋から少し逸れますが、この読売新聞の社説でも「この10年、温室効果ガスは増える一方なのに気温は上がっていない矛盾を、温暖化問題で主導的な英国の研究者が公的に認めた」と書かれているように、CO2温暖化説を支持する人たちは少々旗色が悪くなってきました。

こうした脆弱な仮説を吹聴して回ってノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア氏もこのところ少しずつ軌道修正を始めています。化石燃料の燃焼によって生じた煤煙によるアルベド効果も温暖化には大きな影響を及ぼしており、CO2による影響は40%程度とする仮説もあるのですが、彼は昨年くらいからこの仮説を支持するようになってきたんですね。

思えば、1960~1970年代に「地球は寒冷化している」「氷河期に突入するのではないか」と騒がれたとき、そのトレンドに乗っていたスタンフォード大学のスティーブン・H・シュナイダー氏ら(後にCO2温暖化説へ転向)が寒冷化説の要因として化石燃料の燃焼によって発生する煤煙のエアロゾル効果を唱えていました。

かつてのシュナイダー氏が唱えていたように煤煙そのものが太陽光を妨げたり、それが核となって雲が生じやすくなることで気温を引き下げるという仮説は正しいのでしょうか? それとも最近のゴア氏が支持しはじめた黒い煤煙が太陽光を吸収して気温を引き上げる方向に作用するという仮説のほうが正しいのでしょうか? 実際に煤煙ごときが気候を左右するような力を持っているのでしょうか?

それは気候モデルをやっている研究者たちの間でも意見が分かれているようですから、そう簡単に決着はつかないでしょう。要するに、答えが出るまで時間がかかる問題を掲げ、「答えが出るまで待っていたら手遅れになる」とし、これまでと同じように脅すつもりなのでしょう。

煤煙説を絡ませても、それを鵜呑みにしたり便乗したりする人たちが多数派を形成すれば、CO2説と同じように「低炭素化」という流れを維持することが可能です。これからの地球温暖化問題はCO2に加えて煤煙もクローズアップされるようになり、これらを組み合わせてより複雑なプロセスが語られるようになるかも知れません。

もし、こうした流れになれば困る人もいます。例えば、国立環境研の江守正多氏などは人為的温暖化説の根拠について「近年の気温上昇が異常であるからではなく、近年の気温上昇が人為起源温室効果ガスの影響を勘定に入れないと量的に説明できないから」と主張してきました。その誤りを認めなければこうした流れに乗ることはできません。ま、そのときになれば彼もまた都合の良い理由を付けながら軌道修正して人為的温暖化説を唱え続けるのは間違いないでしょうけど。

地球温暖化問題は企業の「金儲けの道具」としても政治家や官僚たちの「駆け引きの道具」としても科学者が研究費を獲得する「研究テーマ」としても絶大な威力があります。こうした便利なツールを手放したくない人は山のようにいるでしょうから、何とかしてこれを堅持したいという思惑が働いているのは間違いないと思います。もっとも、どんな仮説を唱えようとも、気温が上がらなければ温暖化そのものを信じる人は減っていくでしょうけど。

いずれにしても、この問題は感情論や政治的な思惑などを完全に排除し、科学的な検証を徹底してもらいたいものです。読売新聞の「科学的な根拠の検証が急務」とする主張はまさに正鵠を射貫いています。彼らも以前は朝日新聞などと同じように仮説を盲信して論を進めていましたが、クライメート・ゲート事件以降の情勢でついに開眼したようです。

(おしまい)

コメント

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  • 2010/05/10(月) 10:53:32 |
  • |
  • #
  • [ 編集]

そのとおりですね。

石墨様。
 仰るとおりです。 でも、石墨様の本ブログは、新聞社より先んじて正論を掲載されているのですから、先見の明はこちらが先でしょう。 こうしたHPは本当に少ない情報源として貴重です。 
 欧米には、相当な規模で反温暖化論を発しているHPがありますが、日本では、殆ど個人的な努力と義の精神で頑張っておられるところばかり。 頭が下がります。
 これからも我々の精神の拠り所となる本HPを継続されますように祈念いたします。


とら猫イーチさん>

仰るとおりで、人為的温暖化説に疑いを持っている人は日本にもそれなりにいるのですが、そうしたスタンスで情報を扱う人は非常に少なく、個人レベルでの活動が殆どといった印象ですね。私の場合は海外メディアや内外の個人サイトなどをウォッチしていますが、特に後者は玉石混淆でどこまで信頼できる情報なのか、常に冷静に捉える必要があります。

日経新聞も科学面や電子版のコラムなどには見所のある記事が扱われることもあるのですが、本紙の論説委員は典型的な科学音痴で人為説を盲信するところから始まっています。たまたま今日(5月13日)の社説(http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE2E5E0E7E2E6E0E2E3E1E2E7E0E2E3E28297EAE2E2E2;n=96948D819A938D96E38D8D8D8D8D)で一連の問題を取り上げていますが、冒頭から

“科学者も間違えることはある。しかし、ことは地球温暖化という極めて重要な問題だ。粗雑な過ちや誇張の結果「二酸化炭素(CO2)などが温暖化の主因」という基本的な認識を否定する議論を招いていることは憂慮される。”

などと、人為説を無条件に擁護するスタンスですから、問題の根本を履き違えています。

人為的温暖化説はあくまでも仮説に過ぎないのですから、それが科学的に証明されない限りは常にこれを否定するような議論にさらされて当然です。こうした証明が難しい(というよりまず不可能でしょう)問題は肯定的なデータばかり並べて「基本的な認識」を定めてしまうのは間違いです。反証主義で様々な試練を課し、それでも否定し得ずに生き残ったら、これは正しいと見なしても良いと考えるべきなんですね。

以前にもご紹介しましたが、ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英氏は「科学とは、肯定のための否定の連続」と述べています。科学というのは本来そういうものなんです。このような基本的な科学哲学も解さない日経の論説委員が“科学の信認を取り戻せ”というのですから、笑止千万です。

当blogは私にとって備忘録のようなものでもあります。散在している情報を纏めておいたり、それに対して自分がどのような意見を持ったかを書き残しているような感じで、それほど気概みたいなものはありません。これを読んで参考にして頂けるのは嬉しいことですし、逆に「何を莫迦なことを」と思う人もいるでしょうが、それはそれで良いと思っています。

そんなわけで私自身は「義」とか大層なことは全く意識していませんが、何かお役に立てているのであれば、それは望外の名誉だと思います。

  • 2010/05/13(木) 21:35:38 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

>石墨様

今日ご紹介いただいた日経の社説、ほとんど江守正多氏の意見の引き写しですね。論説委員自身が自分の頭で考えることを放棄しているんだから、救いようがないと思います。

科学リテラシーは「疑う心」から・・・これは、つい最近読んだ内田麻理香氏の近著『科学との正しい付き合い方 疑うことからはじめよう』(DIS-COVERサイエンス)の中の章題ですが、本社説は、いわば疑うことを否定しているわけで、科学とは対極にあるといわざるを得ませんね。

  • 2010/05/14(金) 00:27:50 |
  • URL |
  • わちゃちゃ #JOOJeKY6
  • [ 編集]

わちゃちゃさん>

反証主義が完全無欠かといえばそうでもありませんが、科学の基本的なスタンスとしてはできる限りそうあるべきだと思います。少なくとも、IPCCや人為説支持者たちが好きなコンセンサス主義は科学などではありません。

朝日も日経も、日本を代表するリベラル紙は一般記事や電子版では見所のある記事を載せることがあるのですが、どちらも社説は非常に偏狭で、特に環境問題に関しては勢いイメージ先行であったり精神論になってしまったり、救いようのないことを書かれていることが非常に多いという印象ですね。当blogでは過去に何度も批判してきましたが、彼らには進歩とか成長というものが見込めないのでしょう。

(関連記事)

『発電所は急に止まれない』
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/blog-entry-197.html

『孤立しているのは日本のメディアのほう』
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/blog-entry-296.html

『今年も妄想癖は止まらない』
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/blog-entry-315.html

『温暖化対策は魂の問題』
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/blog-entry-340.html

『朝日新聞も原発活用へ転身』
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/blog-entry-389.html

  • 2010/05/17(月) 00:05:07 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

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