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何故インサイトのタクシーは存在しないのか (その2)

これまでにも何度となく触れてきましたが、インサイトの後部座席は天井が低く、かなりの圧迫感があります。私は中背(身長169.5cm)ですから、深く腰掛けても頭が天井に触れることはありませんが、頭上にあまり余裕がないのは確かです。

私より身長が10cmも高ければ標準よりかなり座高が低いか、背中を丸めて浅く腰掛けるような人でない限り、確実に頭が天井につっかえてしまうでしょう。もっとも、長身でも座高が低かったり浅く腰掛けたりしても、こんどは脚の置場が絶望的に窮屈な状態になると思いますけどね。

ルーフが後ろ下がりになっているインサイトの後部座席は、ドア開口部だけでなく、ルーフそのものの地上高も低くデザインされています。乗るときは特に上半身を一般的なセダンより深く屈める必要があり、普通の感覚で乗り込もうとすると頭をぶつけてしまうかも知れません。

インサイトの後席着座例

老舗自動車専門誌『カーグラフィック』の電子版にはインサイトのインプレッション記事が数本あります。上の写真に写っているのは同誌の編集長を務めたこともある熊倉重春氏で、インサイトにはかなり好意的なレポートを書いていますが、この写真には「後席のヘッドルームには余裕なし」とのキャプションを付し、本文でも以下のように述べています。

実用的なセダンとしては、後席の広々感が薄い。膝もそうだが、天井までの距離が最低限で、座高90cmを超える大柄の乗客にはキツいかも。髪が微妙に天井に触れるのは、想像以上にイラ立つものだ。

(中略)

リアドア自体はCピラーに深く食い込んでいるので、乗り降りに際して頭の邪魔になるものはないが、鴨居が低いのは要注意。


最後にある「要注意」という言葉は、裏を返せば「注意しないと頭をぶつける恐れがある」と読むべきでしょう。私も実車に触れたときそのように感じましたし、昨年の東京モーターショーに展示されていたそれに乗り込もうとして実際に頭をぶつけている人もいました。

他にも同サイトのブリーフテスト(上の記事とは別の記者によるレポート)ではインサイトの後部座席について★印を用いた5段階評価で最低評価の★1つになっており、以下のように酷評されています。

ドアの切り方やタイヤとの位置関係など色々な要素があるのだろう。乗降性がいまひとつの後席は、いざ乗り込んでみても、空気抵抗低減のため全高を下げた影響を如実に味わわされるハメとなる。身長177cmの筆者の場合、頭頂部はルーフに触れる

(中略)

正直、後席だったら短距離の移動以上のドライブの誘いは遠慮したい。この席で育った子供が将来クルマ嫌いにならないことを祈りつつ……。


実は、私の姉のところでも昨年プリウスを購入ました。そのときインサイトも比較検討していたそうですが、義兄曰く「インサイトのあの後部座席はねぇ・・・いまは子供が小さいから良くても、すぐに手狭になるだろうからアレではダメ」という理由で却下となったそうです。ま、普通の感覚ならみんなこうなるでしょう。これをタクシーにして客を乗せようという発想のほうが普通じゃないというべきかも知れません。

プリウスも3代目では改善されましたが、2代目はルーフ後部がかなり絞られています。それでもルーフの絶対的な高さがインサイトほど低くはありませんから、乗降性はそれほど悪くありません。ホンダ自身、インサイトの後部座席やそのドア周りはかなり割り切った上でデザインしているのでしょうから、「提案についてはコメントできない」という素っ気ないリアクションだったのはその辺を反映しているのかも知れません。

また、ごく短距離ではありますが、私もディーラーの試乗車でインサイトのドライブを経験しています。あの無意味に硬い足周りのお陰で、現代の乗用車として乗り心地は「かなり悪い」といわざるを得ない点もネックになるでしょう。タクシーにできるよう制度上の問題をクリアにしても、タクシー会社がこれを積極的に導入するとは非常に考えにくいところです。上田知事は一度でもインサイトに乗ったことがあってあのようなアクションを起こしているのでしょうか?

もし、インサイトをタクシーにアレンジしたら、プリウスよりも有利になる点があります。それは以前にも触れましたが、ドアの開閉機構に関係する部分です。

停車中は殆どアイドリングストップ状態となるプリウスは吸気負圧を利用した自動ドアが馴染まず、ドライバーのレバー操作による手動式にせざるを得ません。が、インサイトはセレクターをPレンジに入れると何故かエンジンが始動してアイドリング状態になってしまうという謎の仕様になっています。そのお陰で吸気負圧を利用した自動ドアが使えますから、その分だけドライバーの負担が軽減されることになります。

ま、この程度では大したメリットともいえませんね。それ以前に、駅前のタクシー乗り場などで付け待ちしているとき、すぐにドアを開けられるようにアイドリング状態にしておくのは環境面を考えても望ましくありません。

プリウスはエアコンのコンプレッサーが電動になっていますから、バッテリーの残量があるうちはエンジンを停止させていても冷房を効かせることができます。バッテリーの残量が不足してくると数十秒間アイドリングしては数分間のアイドリングストップを繰り返し、ちゃんと冷房が効きます。もちろん、外気温や日照条件などによってアイドリングと停止のサイクルは変わってきますが、それでもアイドリング状態を連続させなければ冷房が効かない普通のクルマより燃費と環境負荷の点で有利でしょう。

一方、インサイトは安く上げるために電動コンプレッサーを諦め、エンジンで直接それを回す普通のクルマと同じ構造です。なので、冷房を欠かさないようにするためにはずっとエンジンを回していなければなりません。イマドキのタクシーが冷房の効いていない状態で客を乗せるということはあまりないでしょう。タクシーのような使い方ではプリウスとインサイトの性能差はより大きく出るように思います。もちろん、タクシー会社にとって特に重要な燃費に関してもプリウスのほうが有利でしょう。

記事には「HVタクシーの普及を後押しし、環境保護につなげることを提案理由に挙げる」とありますが、制度を弄ってまでインサイトに固執する必要はないでしょう。ホンダにはシビックハイブリッドだってあるのですから、何故そちらではダメなのかという理由も用意しておく必要があると思います。また、トヨタは2代目プリウスを「プリウスEX」として継続販売しており、その価格はインサイトの最廉価グレードと全く同じです。なので、車両価格云々という理由も通用しません。

ちなみに、シビックハイブリッドのタクシーについてはその実例がホンダの公式サイト内にある「働くシビックハイブリッド~環境を考える企業の取り組み~」という記事で紹介されていました。シビックハイブリッドなら特区などというイレギュラーな手段を講じなくても普通にタクシーとして運用できるということです。もしかしたら、上田知事はシビックハイブリッドの存在を知らないのかも知れません。

シビックハイブリッドもプリウスと同じようにエアコンのコンプレッサーが電動化されており、付け待ち時の空調を考慮すればインサイトより有利です。もちろん、乗降性や居住性、乗り心地など、あらゆる面でシビックハイブリッドはインサイトよりタクシーに向いていると見て間違いありません。

トヨタに独占させたくないのならこのシビックハイブリッドを用いれば済むことですし、価格がネックならプリウスEXを用いれば済むことです。わざわざ特区にしようと画策してまでインサイトを依怙贔屓する理由が私には理解できません。どうしても特区にしてインサイトをタクシーにしたいというのであれば、こうした疑問に対する合理的な説明が必要になるでしょう。

政治家には深く物事を考えずに大衆ウケするようなイメージ重視の行動や言動を平気でする人が少なくありません。民主党もそうして昨年の総選挙で大勝し、政権を奪取することに成功しました。が、実務ではその無能ぶりをさらけ出し、メディアからも世論からも集中砲火を浴びている昨今です。元民主党員の上田知事もそういうタイプなのかも知れません。

ま、それでもあまり望まれていないオリンピックの招致に失敗して巨額の損失を出したり、1000億円の税金を投入して欠陥だらけの銀行を作り、当然のようにその経営が傾くとさらに税金を注ぎ込んだり、そういう大迷惑なことを続けている某知事に比べればカワイイものですけどね。

(おしまい)

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