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テスラへの出資はやはりイメージ回復が目的? (その2)

トヨタが本気を出せばテスラより洗練された高性能な電気自動車を作れるのは間違いないでしょう。現在手持ちのコンポーネンツを組み合わせるだけでもテスラ・ロードスターより乗車定員や荷物の積載スペースなどで実用性が高く、航続距離の長い電気自動車を作ることは可能だと思います。

例えば、燃料電池車のFCHV-advから燃料電池スタックと高圧水素タンクを降ろし、プラグイン・ハイブリッド仕様のプリウスに用いているリチウムイオン電池を大量に搭載、回生ブレーキシステムもプリウスなどと同等のものに変更するといった方法でもテスラ・ロードスターより実用性も完成度も高い電気自動車になるでしょう。ベースとなったクルーガーはエリーゼなどよりずっとスペースに余裕がありますから、より多くのバッテリーを積むことができるでしょうし。

トヨタFCHV-adv
TOYOTA FCHV-adv
昨年の東京モーターショーの写真の使い回しで恐縮ですが、
トヨタもこのFCHV-advをホンダのFCXクラリティと同じく
環境省などへ毎月83万円×30ヶ月のリースを行っていますので、一応は市販車です。
現状では燃料電池スタックや156Lにもなる高圧水素タンクなどとの兼ね合いで
バッテリー容量を大きくしにくいゆえ、回生ブレーキはかなり控えめだそうです。
が、それらを大量のリチウムイオン電池に換装すれば自動的に容量の問題は解決し、
プリウスと同等の回生ブレーキシステムを導入することができるハズです。
それだけでもテスラよりずっと洗練された電気自動車になるでしょう。


しかしながら、トヨタのような大メーカーはコストを二の次にした市場性の低い商品を手掛けるような立場にありません。FCHV-advやFCXクラリティなどのように官公庁や企業向けのリース販売で様々なデータをとるといった方法がせいぜいでしょう。個人向けにやるとしたら、やはり補助金を受けてユーザーの負担額が300万円前後にとどまる価格帯を狙い、結局はi-MiEVやリーフなどと同レベルの性能に抑えるしかないのが現状だと思います。

そもそも、テスラ・ロードスターは少量生産のスポーツカーで、アルミ製のシャシーにCFRPボディというおよそ大衆車には採用できない構成です。あの航続距離は大衆車の価格帯に抑えるなど絶対に不可能な高コストの素材と大量のバッテリーを用い、大衆車のユーザー層にはとても受け容れられないような効率最優先の不自然な回生ブレーキから成り立っています。こんなクルマはフェラーリやポルシェなどとも比較し難いところですが、大衆車と同じ尺度で測るなどナンセンスの極みというものです。

ただ、これだけ贅沢な素材を用い、リチウムイオン電池もあれだけ大量に用いているわけですから、9万8000ドルほどの車両価格はむしろ安いと見るべきでしょう。が、それは無理に無理を重ねた価格設定といったところでしょうか。テスラはこのロードスターを昨年末まで937台、その後も何十台か売って1000台余りに達しているとのことです。ということは、1億ドル程度の売上になっているハズですが、彼らは常に資金難に喘いできました。

テスラは創業から7年を経た現在に至っても利益を出せるような状態には程遠く、かき集めた資金を食いつぶしながら期待値の高さだけが命綱みたいな、ベンチャー企業にありがちなパターンにはまっています。2007年には先行きの見えない経営状態を投資家から咎められた創業者のマーク・エバーハンドCEOが解雇され、その後も2年足らずの間にCEOが3人も入れ替わりました。

現在、同社のCEOを務めているのはイーロン・マスク氏で、ネット決済サービスのPayPalを立ち上げた人物でもあります。同氏はその株式を売却して莫大な富を得、投資家として宇宙開発関連などに入れ込んできたようです。そうした嗜好から電気自動車のような近未来をイメージさせるビジネスにも惹かれたのでしょう。テスラの創業時からかなりの額を投資してきたようです。

現在のテスラはマスク氏が奔走して経営状態の回復を期しています。昨年6月には米エネルギー省から融資を取りつけたり、今年1月には米証券取引委員会に新規株式公開計画を届け出たりして、さらなる資金調達を目論んでいます。エネルギー省から受ける融資の総額は4億6500万ドル、株式公開で調達が見込まれる資金は1億ドル程度と試算されています。

テスラがこれまでどのくらいの資金を集めたのか情報が錯綜していてどれが正しい数字なのかよく解りません。が、日経新聞の報道によればトヨタが出資を予定している5000万ドルは全体の2%程度と見られるようです。だとすれば、これまでテスラは25億ドルに上る資金をかき集めてきたということになるわけですね。

しかし、テスラ・ロードスターによる売上(利益ではなく、あくまでも売上です)は1億ドル程度、ダイムラーにEV仕様のスマート向けバッテリーパックを供給するハナシもどこまで進んでいるのかあまり続報が伝わってこないのでよく解りませんが、大した規模にはなっていないでしょう。

現状において彼らはビジネスの実態に見合わないレベルのカネを集め、現在も営利事業として全く軌道に乗っていない状態というわけです。こんな会社が7年間も存在し続けることができ、しかも政府から5億ドル近い融資が受けられるのですから、色んな意味でアメリカは凄い国だと思います。

トヨタをしてこのような状況のテスラと組む気にさせたのは何かと考えますと、やはり要になっているのはNUMMIの存在ではないかと思われます。

当blogでも以前に何度か触れましたが、NUMMIはGMが日本式の合理化を学ぶため、トヨタは北米での現地生産の足掛かりとするため、双方の思惑の一致が生んだ共同事業でした。GMが1982年に閉鎖したカリフォルニア州の工場を1984年にトヨタとの合弁で復興させたのがNUMMIです。ま、その背景には日本車がアメリカのマーケットを席巻し、その反感から巻き起こったとされるジャパンバッシングも浅からぬ因縁となっていたでしょう。

いまからほぼ1年前にGMが経営破綻して国費を投入した再建策が講じられたわけですが、その際にGMはNUMMIから撤退しました。トヨタもまた単独でのNUMMI存続を諦め、閉鎖に至ったわけですね。一方、テスラは昨年の夏に政府に対して新工場を建設するための融資を申請していたといいます。ここでまた双方の思惑が重なったのでしょう。

トヨタはNUMMIを閉鎖するに当たって約7500人の従業員を全て解雇し、再就職先が決まらなかった約4700人が失業したことから批判が高まっていました。元々GMとの合弁でやっていた工場からGMが撤退し、トヨタも同様に身を引いたわけで、トヨタだけが責められるのはどうかとも思います。が、その背景にはトヨタの言い分が反感を買ったという側面もあったのでしょう。

NUMMIはアメリカ中西部の物流拠点から遠いという立地の悪さに加え、設備の老朽化も進んでいました。また、トヨタは北米への設備投資を過剰に行ってきたツケで、かなり深刻な余剰生産問題を抱えていました。こうした状況を実直に説明し、それまでの事業展開に非があったことを認めた上でNUMMIの閉鎖を表明すればあそこまでの批判は浴びなかったように思います。

が、トヨタは「GMによる合弁の解消という決断が工場の経済的存続を著しく損ない、一気にこの状況を招いてしまった」とコメントしてしまいました。当時、NUMMIでのGM車の生産比率はわずか15%に過ぎない状況でしたから、こうしたトヨタの主張はGMに責任を押しつけるものと受け取られても仕方なかったでしょう。

例のリコール騒動も時期を同じくしており、それと相乗的に煽られていたような印象もあります。が、いずれの問題もトヨタの態度が生意気に見えてしまったという感情的な摩擦も少なからず影響していたように思います。アメリカでの過剰なトヨタ叩き(特にリコール騒動)は魔女狩り的な印象もありましたが、トヨタも同時多発的な問題に対して基本姿勢を保身に傾けすぎたことが火に油を注いでしまったといったところでしょうか。

とはいえ、フォードとブリヂストン・ファイアストンの問題のようにとりあえず謝ってしまうと全ての責任を押しつけられる恐れもありますから、その辺は慎重に対応を考慮しなければならない難しさはあるでしょう。トヨタは例の騒動以来、アメリカでクレーム対応の部門を強化しています。彼らのことですから、同時に訴訟などを見据えた対策方針の意思決定についても相応の人材なりマニュアルなりを準備をしているかも知れません。

GMの経営破綻を受けてNUMMIの先行きが不透明になっていた頃、プラグイン・ハイブリッドのスポーツカーを展開するフィスカーもこれに興味を示していたといわれています。結局、フィスカーはデラウェア州ハミルトンにあるGMの工場を買収することになり、身の振り方が決まらなかったNUMMIは今年3月末に閉鎖されました。

テスラは予てから新工場建設とそのための融資を求め、奔走を続けていました。当然、NUMMIも興味深い物件だったに違いありません。恐らく、水面下ではかなり前から交渉が重ねられていたのでしょう。閉鎖から2ヶ月足らずでその一部をテスラが買収する運びとなったのは、それまでの交渉で条件が折り合わなかっただけと考えたほうが自然かも知れません。ま、いまでもちゃんとハナシが纏まっているわけではないようですが。

当初はテスラによるNUMMIの一部買収にかかる費用が明らかにされていませんでしたが、その後の報道で4200万ドルになるとされました。トヨタの出資予定額が5000万ドルですから、800万ドルのノシを付けてNUMMIの一部をテスラにプレゼントするという格好にも見えます。ま、悪い立地と老朽化が進んだNUMMIを売り払うにしても、どの程度の回収ができるかということを考えれば、ネームバリューだけは高いテスラに提供してみせるほうがメリットがあると考えたのかも知れません。

(つづく)

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  • 2010/06/05(土) 18:20:59 |
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