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テスラへの出資はやはりイメージ回復が目的? (その3)

アメリカではカネのある企業が社会に貢献するようなカネの使い方をしないと、批判の的になる傾向があるようです。1980年代のジャパンバッシングも日本企業がアメリカで利益をむさぼる一方、アメリカ社会に還元しなかったところが大きな反感に繋がっていました。

あの一件はそういう筋書きで世論を煽動しておいて、地に墜ちていたアメリカのメーカーが回復するまでの時間稼ぎがなされたと見る向きもあります。ま、そうした意図の煽りが入っていたにしても、それにメディアと多くのアメリカ国民が反応したということは、企業の社会貢献にシビアな目が向けられる傾向があるからでしょう。

先般のトヨタバッシングもGMやクライスラーの経営破綻から半年程度しか経っていなかったことを思えば似たような力を感じます。が、ここで深追いしても意味は薄いでしょう。いずれにしても、1980年代のジャパンバッシングを経、日本のメーカーは如何にしてアメリカ社会へ溶け込むかに心を砕いてきました。現地の部品メーカーを使い、現地に工場を構え、現地の人たちを雇い入れることで、アメリカ社会に貢献しているというスタンスを示してきたわけです。

結果、例のトヨタバッシングの際にもトヨタの工場がある3州の知事らはトヨタを擁護しました。逆に、NUMMIの閉鎖決定を受け、主力車種のカローラとタコマは他州へ、それ以外は海外の生産拠点へ移管されるという事態に至ると大いに批判されました。雇用の流出には断固反対というのがオバマ政権にとって重要な票田でもある全米自動車労働組合の意向ですから、アメリカのメディアもそれに鋭く反応した格好だったのでしょう。

余談になりますが、日本にはそういう視点が全く存在しないようです。昨年1月、『主力車種の海外流出第一号』と題したエントリで取り上げましたように、日産の主要車種であるマーチの生産を今年発売になる新型からタイへ移管し、逆輸入することになりました。が、私の見聞きした範囲でこれを批判的に報じているメディアは皆無でした。

マーチの逆輸入は日本国内でその生産を担ってきた追浜工場の仕事がタイへ流出するということを意味します。日産は追浜工場で電気自動車のリーフを生産するとしていますが、それがマーチの実績に匹敵することはまずあり得ないでしょう。ゴーン社長は電気自動車のことになると何かに取り憑かれたかのように強気ですが、現実をシッカリと見据えればマーチの穴をリーフが埋めるなどということは考えられません。

一昨年、例の派遣切り騒動の際にこの追浜工場でも数百人規模の派遣切りがありました。上掲のエントリでもご紹介しましたように、このとき極めて批判的な記事が書かれましたが、その主要車種の生産が海外へ流出してもそれが意味するところを日本のメディアはリアルに理解できていないようです。

あるいは、ゴーン社長の言葉を鵜呑みにしてリーフがその穴を埋められると本気で信じているのかも知れませんが、リーフは追浜工場だけでなく欧米でも生産される予定です(詳しくは次回に)。リーフがガソリンエンジン車の人気車種並みに売れるというとんでもないミラクルが起こらない限り、追浜工場の仕事は確実に減ります。彼らの狭い視野ではこうした簡単な状況判断もできないのでしょう。

ハナシを戻しましょうか。トヨタはリコールを巡る騒動とほぼ同時期にNUMMIの処遇を巡る問題でも大いに批判され、アメリカでの評判を大きく落としました。後者は日本のメディアであまり伝えられませんでしたから、ご存じない方も多いでしょうし、日本のメディアもこうした状況を詳しく把握していないでしょう。今回の提携に関する報道でも極めて軽く触れられるにとどまったのもそのせいだと思います。

しかし、私は今回のトヨタとテスラの提携話は、NUMMIを巡る問題も含めてそのイメージ回復を図ろうというのがトヨタの主たる目的なのではないかと考えています。工場が再開されればその分だけ雇用も生まれますし、電気自動車は世間一般に好感度が高いですし、強まっていた風当たりを抑えるのにも相応の効果があるでしょう。発表の際にシュワルツェネッガー知事が列席したのもNUMMIの再興あってこそでしょう。

テスラ・モデルSの前で談笑するシュワルツェネッガー知事と豊田社長
テスラ・モデルSの前で談笑するシュワルツェネッガー知事と豊田社長
NUMMIの閉鎖時に解雇されたのは約7500人、うち再就職先が決まらなかったのは約4700人、
テスラが再雇用するという従業員数は約4500人にものぼりますから、
要するに、NUMMIの閉鎖で失業した人の殆どを引き受けるというわけですね。
トヨタとテスラの提携発表会見の会場にシュワルツェネッガー知事が駆けつけたのは、
ひとえにこうした再雇用を伴うNUMMIの再興計画があったゆえでしょう。


トヨタはハイブリッドシステムや燃料電池など、将来に向けた技術開発に年間9000億円程度の投資を続けてきました。トヨタがテスラに出資するという5000万ドルはこの9000億円のコンマ5%に過ぎない微々たる数字です。トヨタが本気で電気自動車の性能向上に期待をかけた出資だとしたら額が小さ過ぎると言わざるを得ません。

一方、テスラは新規株式の公開に向けた申請書類の中で、トヨタと「協力する意向を表明した」としているそうですが、トヨタが合意した総額5000万ドルの出資は年内にテスラが株式を公開できなかった場合、実現しない可能性があることも明らかにしているそうです。こうした条件はトヨタのリスクを大幅に減じるものと考えられます。

ま、第一報から少々軌道修正されていますので予断は禁物ですが、トヨタの出資にこのような条件が絡んでいるというのであれば、NUMMIの一部売却を含めてトヨタにもそれなりに旨みのある提携話といえるでしょう。テスラの株式が公開されればそれなりの高値が付くと見られていますから、トヨタが取得するであろうテスラ株も相応の含み益が見込まれます。

逆に、テスラが株式公開を果たせず資金調達も行き詰まり、経営状態がさらに悪化していったとしても、トヨタが批判されることはないでしょう。また、株式公開が果たせなければ出資もなしというのなら、トヨタは大した実害を受けることもないでしょう。こうした点も踏まえますと、やはり話題づくりにテスラを利用できる間は大いに活用しようというのがトヨタの思惑であるように私には感じられます(あくまでも個人的な憶測です)。

(つづく)

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