酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

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テスラへの出資はやはりイメージ回復が目的? (その4)

トヨタにリチウムイオン電池などを供給しているパナソニックEVエナジーは「パナソニック」を冠していましたが、実際にはトヨタの子会社です。今年4月に実施された第三者割当増資を全てトヨタが引き受け、パナソニックが持つ株式の一部もトヨタが買い取りました。その結果、出資比率はトヨタが80.5%でパナソニックが19.5%となったんですね。ま、それ以前からトヨタ:パナソニックの出資比率は6:4でしたが。

この4月の増資段階で既に社名変更が検討されていたようですが、6月2日付でパナソニックEVエナジーは「プライムアースEVエナジー」に変更されました。この新社名は従来の略称「PEVE」をそのまま使えることも考慮されたといいます。ちなみに、「PEVE」を社名にする案もあったそうですが、フランス語で「交通違反」を意味する言葉(スラング?)に当たるので避けたのだそうです。

昨年5月、ダイムラーがテスラから電気自動車仕様のスマート用にリチウムイオン電池ユニットを1000セット調達する契約を結ぶと共に、10%の株式を取得する旨が報じられました。今般のトヨタは2%程度といわれていますので、その約1/5に過ぎません。トヨタはPEVEのような子会社を持っている以上、ダイムラーの投資とは全く意味が違うと見るべきです。

トヨタのテスラに対する出資額はたかだか5000万ドルですし、それも早期の株式公開といった条件が課せられているようですから、かなり慎重な印象です。また、ダイムラーがテスラから調達するバッテリーユニットもわずか1000セットという小規模にとどまっています。

いずれも電気自動車の展開を進める動きには見えますが、数字を見れば至って冷静なもので、大手自動車メーカーとしてみた場合の本格的なビジネスには程遠い規模に過ぎません。やはりトレンドに乗ったイメージ戦略的な動きと見るのが妥当なのかも知れません。これらに比べますと日産の動きは少々無謀ではないかと心配されるレベルに達しています。

度々余談になって恐縮ですが、日産は電気自動車への投資を驚くほどのペースで加速させています。先月26日にはテネシー州スマーナ工場の隣接地にリーフ用の電池工場の起工式が行われました。2012年の生産開始を目指し、同工場の車体生産設備と合わせて電気自動車関連に総額1500億円を投資する計画だそうです。

また、2013年にはイギリスのサンダーランド工場でもリーフの生産を開始する予定です。日産はその資金を調達するため、まずは今年4月21日に機関投資家を対象として1000億円の普通社債を発行すると発表しました。が、日産は今夏までに償還期限を迎える社債が2000億円近くありますから、それほど余裕があるわけでもありません。

ま、恐らく償還期限となった社債は新たな社債発行で借り換えるつもりでしょうけど、そんな中でハイリスクな事業投資を強気に進めていくのはどうかと思います。トヨタは3ヶ月以内に現金化できる金融資産が6兆円あるとされ、「トヨタ銀行」などといわれるほどの資金力がありますが、それでも電気自動車に関して日産のような強気の投資は控えていますから、両者の動きは実に対照的です。

先日、ゴーン社長は2012年までに「全世界で年間50万台の電気自動車を販売する」という意向を示しました。「技術革新や新技術に直面し、ますます強気になる人もいれば、ますます弱気になる人もいる」「50万台という数字は自動車市場のわずか0.8~0.9%にすぎない」と述べ、アナリストや他社の論評によって「思いとどまることはない」と主張しました。

全世界での販売台数が50万台/年という数字は荒唐無稽であると私は考えます。何故なら、この数字は現在のプリウスに匹敵する規模に達するものだからです。プリウスがこのレベルにマーケットを拡大するのに10年余りの歳月を要しました。インフラには全く懸念がなく、通常のクルマより車両本体価格が多少割高という以外に大きなマイナス要因がないハイブリッド車でこの状況です。同じハイブリッド車でもインサイトのように中途半端なものはこの1/4がやっとというのが現実です。

日産リーフは政府が支給する高額の補助金を受けても同クラスのガソリンエンジン車の2倍にならんとする高額です。航続距離や充電時間などの性能もインフラも問題だらけの未成熟な電気自動車で2年後には現在のプリウス並みのマーケットを獲得するとゴーン社長は豪語しているわけです。彼が広げたこの超特大の風呂敷は民主党のマニフェストも真っ青の現実無視と言わざるを得ません。もし、こうした発言が投資家を惑わせてしまうようであれば、これはもはや詐欺の領域に近いというべきかも知れません。

ゴーン社長の電気自動車イケイケ路線は冷静な判断によるものとは見なし難く、日米欧で進められている生産体制の整備は常軌を逸しているように見えます。補助金の支給が必須という現段階でこうした急速な事業展開を推し進めると、補助金の支給が中止されたり減額されるだけで破綻の危機に直面します。高額な補助金は台数が増えるほどに財源の確保が難しくなるという現実が彼には見えていないのでしょう。

補助金が支給されなければ事業として成り立たないということは、要するに「他力本願」の事業ということです。また、充電インフラの整備は自動車メーカーだけではどうにもならない領域です。いまの段階で電気自動車の本格的な普及を推進している人たちはそうした認識が甘すぎるように感じます。特にゴーン社長は上述したプリウスとの比較からも明らかなように、独善的というべき数字の解釈で電気自動車事業を急拡大させています。社内に彼の暴走を止めようとする人はいなかったのでしょうか?

などと書いていたら、イギリスの前政権がサンダーランド工場でのリーフの生産に2070万ポンド(約28億円)の補助金を支給するとしていた件について、キャメロン新首相が「明確な答えを持っていない」と述べ、反故にされる可能性が出てきたというニュースが入ってきました。ま、生産設備の構築に要する総費用に照らせば大した金額ではありませんから、大勢に影響はないかも知れません。が、1台毎に支給される補助金がこのようなことになったら目も当てられなくなるでしょう。

私はメディアや日産が吹聴しているような急激な電気自動車の普及はないと読んでいますので、日産の動きにはかなりのリスクがあると感じています。ゴーン社長は日産の経営状態をV字回復させた救世主のように語られることもありますが、このまま無謀な電気自動車の拡大路線を推し進めていけば、逆V字を描かせることになってしまうかも知れません。

同様に、テスラの将来も決して楽観できるものではありません。彼らは確固たる収益基盤がないまま、投資によって何とか存続できている極めて脆弱な企業です。その投資も将来に向けた「期待感」に依存する部分が大きいわけですから、少しでも足踏みの時間が長引けば、それだけでも危機的な状況に直面しかねません。私の目にはやはり実体が伴わないバブル状態に見えます。

テスラ・ロードスターのような少量生産のスポーツカーなどマニア向けのクルマだけではいつまで経ってもニッチなマーケットにとどまり、これまでかき集めてきた資金に見合う利益を出せるような状況には至らないでしょう。少なくとも、彼らが本格的な大量生産を目論んでいるモデルSの発売を急ぐ必要があります。

モデルSのシャシーは全くのオリジナルと言われていますが、デトロイトではなくシリコンバレーに居を構える門外漢の彼らが開発した初めてのオリジナルシャシーに社運をかけるというのも非常にリスクが大きいと感じます。が、彼らは一刻も早くこれを量産して利益が見込める筋道をつくらなければ、存亡の危機に立たされる可能性が一段と高くなるでしょう。

tesla_model_s.jpg
TESLA model S
2012年に発売予定とされているモデルSは
容量違いで3つのバッテリーを用意しているそうです。
航続距離は各々160マイル(約257km)、230マイル(約370km)、
300マイル(約483km)と謳われています。
ご覧の外観と動力性能でスポーティ路線を堅持しているようですが、
驚くべきことに、ラゲッジルームには折り畳み式の座席があり、
7人乗りのミニバンにもなるという何でもありのパッケージングです。
こうして仕様を欲張るほどいずれの性能も中途半端に終わりがちですが、
経験の浅い彼らには恐れるものなど何もないということなのでしょう。
ベースプライスの4万9900ドルで本当に商売になるのでしょうか?


NUMMIの一部を獲得できるというハナシは、テスラにしてみればGMの経営破綻から巡ってきた棚ぼたのようなものでしょう。トヨタにとってもイメージ回復を狙った企業広告を露骨に展開するより、こうした行動で話題を提供し、自然に群がってくるメディアを通じて好印象を振りまいたほうがよりスマートで、コストもそれに見合うと判断したのかも知れません。

ま、これはあくまでも私の個人的な想像に過ぎません。状況から導いた勝手な解釈でさしたる確証もありません。が、少なくとも「トヨタがテスラの技術を欲した」などというような報道ほど的は外していないと思います。

もし、テスラがコケてもトヨタはそれほど大きな痛手を被らない範囲で彼らとの関係に線を引いているのは間違いないでしょう。でなければ、出資の条件に早期の株式公開を絡めることもなかったハズです。この一件も電気自動車バブルに浮かれている大衆メディアがイメージしている夢や希望を膨らませたストーリーよりも、もっと現実的で生臭い関係がその裏には渦巻いていると見たほうが良さそうです。

(おしまい)

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  • 2010/06/14(月) 10:37:27 |
  • |
  • #
  • [ 編集]

はじめまして

電気自動車のキーワードで検索していて、ここにたどり着きました。

大正13年にドイツ製のSB号という電気自動車が300台日本に輸入されたそうです。
その内の30台は広島に輸入されました。
祖父の知人が輸入し販売を試みたのですが失敗しました。
祖父はその方の保証人だったので、大きな負債を抱えてしまいました。
我が家のアルバムに数枚の写真が残っているだけで、詳しいことはわかりません。

伯母も叔父も子供の頃のことで、しかも高齢ですから断片的な話が聞けるだけです。

どのような車だったのか知りたくて調べておりますが、よくわかりません。

電気自動車の歴史の片隅の私的出来事ですが、もし、何かご存知でしたらご教示下さい。

よろしくお願いいたします。

岡尾 孝 さん>

はじめまして。

私も最近の電気自動車を巡る動向については興味もあって色々情報収集していますが、その歴史についてはまだまだ勉強不足で、お役に立てるような情報は持っていません。

ただ、少し気になったので調べてみましたところ、同じ大正年間に山梨の中込商店という会社がやはりドイツ製の「SB小型電気自動車」の販売を手掛けていたという情報を得ました。現在は株式会社ダイタという不動産業を営んでいる会社になるようですが、同社の沿革の頁(http://www.daita.co.jp/control/history/index.html)にその写真がありました。

岡尾さんが仰る「SB号」と同じものかどうか解りませんし、それ以上の情報もつかめませんでしたので、あまりお役には立たないかも知れませんが。

私の会社の人間から聞いたハナシですが、親戚のおじさんが高度成長期のマイカーブームの時、電気自動車の輸入販売をしていたそうです。ま、それほど本格的なビジネスとしてではなく、副業として細々とやっていたようなものだったようで、それほど酷い損失を出す前に諦めたようですが。

同じようなケースは恐らく沢山あると思います。今般のブームでもゴルフ場のカートに毛の生えたような電気自動車を自動車整備工場兼サブディーラーみたいな事業者が輸入して売り込もうとしているハナシをテレビやらネットやらで何例か見ましたが、現状ではなかなか難しいと思います。

特に日本ではシティコミューターとして短距離用と割り切っても大都市圏では駐車場の問題もありますから、現段階では電動バイクのほうが遥かに現実的ではないかと思います。いま原付自転車を近距離の移動用に使っている人たちの多くが電動に乗り換えるといった状況にならなければ、四輪車も電動が本格的に普及することはないでしょうね。

  • 2010/06/20(日) 00:31:18 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

ありがとうございました。

石墨さん、ありがとうございました。
ダイタという会社のホームページを見てみました。
我が家の写真は黄ばんで不鮮明ですが、同じ車のようです。
いろいろ調べてくださってありがとうございます。
今後、何か発見があったらお知らせしたいと思います。
とりあえず、お礼まで。

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