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80点主義なんてクソ食らえ!なカメラ (その4)

昔のデジカメは動作が鈍く、電源を入れてから撮影が可能になるまで時間がかかり、10秒以上待たされるというのもザラでした。私が前に仕事用として使っていたカシオのEXILIM EX-Z3は当時の世界最速である2秒弱という起動時間を実現し、シャッターのタイムラグやデータの書き込み、再生画面の切り替え速度などにも注力され、「サクサク動くデジカメ」という路線を示したモデルでもありました。(関連記事『デジカメ代替え』)

近年ではごく当たり前となった「機敏な動作」という面でもシグマDPシリーズは大きく劣っており、ありとあらゆる点がスローで、かなり前時代的な使用感です。DP1に比べてレンズの繰り出し量が大きいDP2の起動時間が約4秒と遅めなのは仕方ないにしても、ピント合わせもかなり遅いといわざるを得ません(この原稿の執筆をモタモタやっている間にマイナーチェンジ版のDP2sが発売され、DP2の半分くらいの時間で合焦するように改善されているそうです)。

何より遅いのはデータの書き込みで、最もファイルサイズが大きくなるRAWでは1ショット約7秒という遅さです。もちろん、バッファメモリもありますからRAWでも3ショットまでなら連続撮影できます。が、3ショット連写すれば、それが書き込み終わるまで20秒くらい待たされますから、どちらにしても連写は苦手です。

私は公称30MB/sで書き込めるサンディスクのSDHCを奢ってみましたが、安価なトランセンドのClass6(実質8~9MB/s程度になるようです)でも大差ありませんでした。やはり、全般的な処理速度が遅いのでしょう。その原因がハードの問題なのかソフトの問題なのか両者ともに問題なのか解りませんが、大手メーカーほどの総合力を持たないシグマのウィークポイントといわざるを得ないでしょう。

また、イメージセンサの物理的な感度が非常に低いようで、これもまたかなり前時代的だと思います。マトモに使えるのはISO400くらいまでで、それ以上はかなり画質が荒れます。それゆえ薄暗いところは大の苦手で、感度を高めに設定しようが、低めに設定して露光時間を長くしようが、何をしてもノイズまみれとなります。夜景はもちろん、夕景でも辛いと感じる場面がしばしば巡ってきます。

今日ではコンパクトデジカメに当たり前の装備となった手ブレ補正も備えていませんが、個人的にはこの種のマニアックなカメラに手ブレ補正など不要で、むしろシンプルであるほうが好感が持てるくらいです。そもそも、上述のように暗いところが非常に苦手なカメラですから、手ブレ補正が威力を発揮するような場面では初めから割り切る必要がありますし。

取り急ぎ改善してもらいたいと思うスペックは液晶モニタの解像度です。約23万画素でも構図の確認には支障ありませんが、被写界深度の確認にはかなり辛いものがあります。一眼レフではEOS kiss x3のようなエントリーモデルでさえ約92万画素という高精細モニタ(x4ではアスペクト比が3:2となって、横方向が拡大され、当代随一といえる約104万画素になりました)を搭載している昨今です。このカメラを好んで使う人たちの多くはそうした改善のためのコストアップなら受け容れるでしょうから、是非とも検討してもらいたい部分です。

もっと細かいところでいえば、起動時にレンズを繰り出す際、「ウィヨ~~ン!」という盛大なメカニカルノイズが鳴り響くのもどうかと思います。電源OFF時に沈胴するときは何故かずっと静かなので、同じように静かに作れなかったものかと思ってしまいます。バッテリーやSDカードのスロットがある底蓋を開けた部分もプラスチック表面に質感を持たせるような加工が何も施されていないため、トイデジカメのように色気がありません。

DP2とDMC-FX35のスロット部比較
LUMIX DMC-FX35とDP2のスロット部比較
写真では解りにくいかも知れませんが、
LUMIX(上)は普段見えないスロット部も
表面に梨地のシボ加工が施されており、
凹モールドでSDカードやバッテリーのマークを
あしらうなど、見られることを意識した仕上げです。
一方、DP2(下)のスロット部は完全にノッペラボウで、
バッテリーやSDカードの挿入方向はスロット内側の側面に
ステッカーを貼付することで示しています。


よく見ますと、DP2のほうは単にノッペラボウなだけでなく、フローマークが生じていますね。赤い矢印で示したところが特に解りやすいかと思いますが、年輪のような縞模様になっています。これは金型の中を溶けた樹脂が流れるときに生じるもので、金型に熱を奪われて樹脂が固まりかけながら圧入されると起こる現象です。この写真の場合、向かって右から左に材料が流れていった様子が解ります。

凹凸になっているわけではなく、色ムラになっているだけなので、見た目が悪いという以外に問題はありません。が、見られることを意識している場合はキチンと温度を管理して樹脂の流動状態をコントロールし、こうしたフローマークが生じないように仕上げるものです。LUMIXなどはわざわざシボ加工を施して見られることを意識していますから、それと比べてしまうと如何にも等閑な感じです。こうした細部の仕上げが徹底されていないと、やはり安っぽい印象に繋がってしまうものですね。

ちなみに、自動車の樹脂バンパーなどは大きな部品ということもあってフローマークが生じていることも多いのですが、乗用車の場合は塗装してあるのが普通で、それが解らなくなっています。ただ、商用車の場合は無塗装が当たり前ですから、こうしたフローマークが見られることも多く、特に経年で表面が劣化してくると非常に目立つようになってきます。

ハナシを戻しましょうか。バッテリーは常識的なリチウムイオン電池ですが、消費電力が大きいのか、近年の常識的な感覚では持ちが悪いといわざるを得ません。これをメインで使うなら最低でも1つは予備が必要でしょう。ま、純正でも実勢価格が2000円足らずで比較的リーズナブルですから、それほど大きな不満ともいえませんが。(DP2sでは電源のマネジメントをDP2よりきめ細かくし、この点も少し改善されているそうです。)

で、このDPシリーズ(というより、同じイメージセンサを用いているシグマのデジカメには共通すると思います)において上述の「感度が低い」という欠点に並ぶ大きな問題点が「カラーバランスが崩れやすい」というものです。いずれも「フォビオン」という他に類例が殆どない特殊な構造のイメージセンサを採用していることと深い関係があるのでしょう。逆に、このフォビオンセンサの特性がこのカメラの大きな魅力にもなっており、功罪相半ばする(罪のほうが多いかも知れませんが)イメージセンサというべきでしょうか。

フォビオンというイメージセンサはCMOSセンサの一種で、アメリカのフォビオン社が開発したものです。生産はアメリカのナショナル・セミコンダクタ(2004年にイメージセンサ部門をコダックへ売却)、韓国のハンビジョンなどが行ってきたようです。採用実績は非常に少なく、いまフォビオンセンサを用いたカメラで普通に入手できるのはシグマ製だけでしょう。

かつてはポラロイドx530というカメラにも採用されていたそうですが、日本では発売延期が繰り返されている間に正規代理店のHNJが倒産し、日本では幻のカメラになってしまいました。アメリカではちゃんと発売され、ネット上には作例も見つかりますが、商業的にはやはり失敗だったと見て間違いないでしょう。ちなみに、このポラロイドx530については『デジカメWatch』で河田一規氏がレポートしています

このフォビオンセンサの特徴は、何といっても各画素が3層構造になっており、1画素で3原色を分解するという仕組みに尽きます。

ベイヤーセンサ
一般的なベイヤー配列のイメージセンサ

普通のデジカメは上図のような「ベイヤー配列」と呼ばれる配列でカラーフィルタを設け、1画素で1つの原色しか受光せず、周囲の画素と色の情報を補完し合っています。こうした方式では色が切り替わるところにある画素が不適切な情報を得てしまい、本来とは違った色を再現してしまう「偽色」の発生に繋がります。特に細かい縞模様などではモアレ(干渉縞)が発生してしまいますから、こうした現象を抑えるため、通常は撮像素子の前にあえて像をぼかす「ローパスフィルタ」というものが設けられています。

フォビオンダイレクトセンサ
フォビオンX3 ダイレクトイメージセンサ

一方、フォビオンセンサは1つの画素が3層に分かれており、画素毎で完結しています。周囲の画素と色の情報を補完し合う必要がないため、原理的に偽色が生じません。上述のように普通のデジカメのイメージセンサは像をぼかすローパスフィルタを設けないと偽色が発生しやすくなりますが、フォビオンにはその必要がなく、それゆえ解像感の高い画質が得られるというわけです。その魅力に取り憑かれた人たちには他に代え難い特性で、DPシリーズ最大の魅力もここにあるといって良いでしょう。

(つづく)

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