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80点主義なんてクソ食らえ!なカメラ (その5)

普通のデジカメの場合、画像を拡大していくと最終的に少しぼやけた感じになり、エッジ部分もクッキリと際立たないものです。それは偽色を抑えるために仕込まれているローパスフィルタのせいです。

EOS5D2の等倍サンプル
一般的なデジカメ画像の等倍表示

上の写真はEOS 5D MarkⅡを三脚に据えて厳密にピント合わせを行い、F11まで絞り込んで撮影したものです。A4にプリントしてもクッキリと鮮鋭な画像が得られているのですが、モニタ上で等倍表示しますと、ご覧のようにエッジが甘くなっています。ま、この画像は元の5616×3744画素から440×330画素を切り出したもので、ここまで極端なトリミングをすることなどまず考えられませんから、このレベルでの解像力を問うのもあまり意味はないかも知れませんが。

一方、各画素で三原色を分離し、画素間で情報を保管し合う必要がないフォビオンセンサは原理的に偽色が発生しませんから、ローパスフィルタも必要ありません。そのため、このイメージセンサがとらえた画像を拡大していってもぼやけた感じにはならず、非常にクリアな質感の画が得られます。

DP2の等倍サンプル
フォビオンセンサによる画像の等倍表示

こちらはDP2で撮影したものです。イメージセンサのサイズも画素数も大きく異なるカメラで撮った画像が等倍表示で同じように仕上げられるようにするのは非常に難しく、またコチラは絞り込むのを忘れたため、被写界深度がかなり浅くなってしまいました。が、ピントが合っている数字の「60」近辺の解像感の高さは一目瞭然ですね。ローパスフィルタが存在しないことのメリットがハッキリ認識できると思います。

もっとも、このフォビオンセンサの例も2652×1768画素から440×330画素を切り出したものです。有効画素数ではEOS 5D MarkⅡの1/4にも満たず、全体の情報量もそれだけの差があるわけですから、同じ画素数を切り出して比較するのはフェアではありませんし、逆に同じ撮影倍率で比較すれば解像感に対する評価もかなり違ってくるでしょう。

近年ではコンパクトデジカメでも1000万画素を超えるものなど当たり前で、一眼レフではAPS-Cサイズでも2000万画素に手が届きつつあります。画素が気になり始めるレベルに拡大したときの解像感が評価されることはそれほど多くないように思います。が、ここに拘るならば、やはりローパスフィルタは邪魔者という印象に繋がってくるでしょう。そうした視点ではフォビオンセンサの画質を好ましく感じるようになると思いますが、個々の趣味の問題でもあります。

また、世の中そんなに甘くないもので、前回軽く触れましたように、この3層構造のフォビオンセンサは3層であるがゆえの大きなデメリットがあります。普通のイメージセンサは前回示した図のようなベイヤー配列でカラーフィルタを用い、それで色を分離させます。必要な光以外はかなりの部分をフィルタが濾し取ってくれるわけですから、それだけ色分離が良いと考えられます。

一方、フォビオンセンサはシリコンの膜を光が透過していく際、波長の短い光から順に下の層へ届きにくくなるという性質を利用しています。一番上の膜は全ての光を受けますが、その下層には青やそれより波長の短い光があまり届かなくなり、さらにその下層へは赤やそれより波長の長い光以外は届きにくくなります。

各々の膜に届いた光のデータを引き算して三原色のデータとして扱うわけですが、光がシリコンの膜を透過するのとカラーフィルタを透過するのとでは能率やそのバラツキにかなりの差があるでしょう。色分離が悪く、感度が低いという欠点が生じているのは、こうした仕組みに因むと見てよいと思います。

シグマは頑張ってこのじゃじゃ馬のようなセンサを乗りこなし、明るいところなら非常に美しい画像が得られるところまで持っていきましたが、それでも色が転びやすく、薄暗いところではノイズまみれになるという欠点は克服できていません。ま、全般的に優れた特性でデメリットが殆どないなら、とっくの昔に他社もこうした多層センサを採用しているでしょう。

ベイヤー配列による偽色の発生やそれを抑えるためのローパスフィルタというのはデジカメ特有のクセに繋がるわけで、原理的にそれらを必要としないフォビオンセンサはより素直な画像が得られます。しかしながら、色分離の悪さが原因と思われるカラーバランスの崩れやすさ、それに加えて感度の低さという素人にも解りやすい欠点に弄されることになるわけですね。

偽色の発生などベイヤー配列の欠点は解像度を上げることで目立たなくなります。例えば、中判のペンタックス645D(645と名乗っていますが、本来の645判が55×41mmで35mm判の約2.7倍の面積になるのに対し、このカメラのイメージセンサは44×33mmで約1.7倍しかありませんが)などは約4000万画素数という高解像度ということもあって、ベイヤー配列のイメージセンサでもローパスフィルタを設けていません。

今後、35mm判やAPSなどでもこのレベルの画素数に至れば、ローパスフィルタレスという流れになるかも知れません。あるいは、画像処理エンジンによる誤魔化しのテクニックが向上していくかも知れません。ベイヤー配列のイメージセンサが持つクセはこれまでにも改善されてきましたし、現段階でも全く気にならない人は少なくないでしょう。

それに比べて、採用実績が極めて乏しいフォビオンセンサは弱点の克服やそれを目立たなくさせる術がまだまだ磨かれていないといったところでしょうか。同様の多層センサは富士フイルムやキヤノンなども開発を進めているという噂ですが、まだまだ技術的な課題が山積しているのでしょう。

現段階においてこうした扱いづらいセンサは、「80点主義」でトータルバランスを重視したら、とても採用に踏み切れる状況ではないというのが普通の大手カメラメーカーの判断なのでしょう。ま、かく言う私も1台で大概のことをこなす必要がある状況だったらDP2を選ぶということはまずありません。薄暗いところでも撮る必要があるなら迷わずEOS 5D MarkⅡを選びますし、長時間で体力が必要なときはEOS kiss x3に委ねるでしょう。

このシグマDPシリーズは特異な素性を理解した上で割り切って使う必要があるわけですね。個人的には明るい野外で散歩でもしながら、のんびりとスナップを撮るといったシチュエーションに丁度良いのではないかと思います。(あくまでも個人的な感想です。)

近年のカメラ、否、近年の日本の工業製品としてここまでメリットに拘り抜きながらデメリットを許し、それゆえに突き抜けたキャラクターを持つものは非常に珍しいと思います。が、どれもこれも同じような性能に子供騙しの付加価値を設けて差別化しようとする大手メーカーのそれに辟易している人には、未完成ながら極めて野心的なこのカメラのほうが面白いと感じられるでしょう。

(つづく)

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