酒と蘊蓄の日々

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80点主義なんてクソ食らえ!なカメラ (その6)

自転車が趣味という人の中にはパーツを自分で交換する人も少なくありません。フレームセットを買ってきて、好みのパーツで1台組み上げるということも、工具が揃っていればそれほど難しいことではありません。どの程度に仕上げられるかは技量の問題ですが、ロードバイクくらいなら上級者でなくてもとりあえずカタチにすることは可能でしょう。

が、完組みホイールが当たり前となった今日にあって、リムとハブを買ってきて、所定の部位を測定した結果からスポークの長さを計算して(ピタゴラスの定理と三角関数が出てきます)適切な長さのそれを用意し、自分でホイールを組んでしまうという人は割合的にかなり少ないと思います。プロショップでも完組みホイールの販売が手組みを下回るところなど滅多にないでしょう。そうした流れのせいか、パーツの選択肢が減っているのは残念ですが。

写真の現像にも似たようなことがあります。中学あるいは高校レベルの部活でもモノクロの現像くらいは普通にやっていると思いますが、カラープリントを経験している人はそれほど多くないでしょう。写真専門学校でもカラープリントを必修科目にしているところはあまり多くないと思います。カメラ好きで知られるTHE ALFEEの坂崎幸之助さんも「モノクロは自分で現像できるけど、カラーは難しいのでできない」というようなことをラジオで語っていたのを聞いたことがあります。

カラープリントの敷居が高いのは現像液の温度管理がシビアだったり、セーフライトもアンバー系のかなり暗いものしか使えなかったり、カラー用の引伸機が高価だったり(次回に詳しく述べますが、モノクロ用でも手間を厭わなければカラーを焼くことは可能です)、他にも色々な要素があります。が、やはり一番の障壁は適切なカラーバランスに整えるための補正が難しいというところに尽きるでしょう。

三原色といいますと、光の三原色である「赤/緑/青」をイメージされると思いますが、これは「加法混色」の三原色です。絵の具などのように特定の波長の光を効率よく反射する物質を混ぜて色を再現する要領は「減法混色」といいまして、その三原色は「シアン/マゼンタ/イエロー」になります。カラープリンターのインクもそれに準じているわけですね。銀塩写真のカラープリントもこの「シアン/マゼンタ/イエロー」三色のフィルターでカラーバランスを調整するのですが、通常はシアンを固定しておきます。

これは平面を水平に整える作業をイメージして頂けば解りやすいでしょう。例えば、テーブルは最低3本の脚があれば天板を固定できます。天板を水平にするために脚の長さを調整するとき、3本とも適当に延ばしたり縮めたりしていたのでは高さも角度も定まりにくくなります。そこで、1本を基準にして残りの2本の長さを調整してやれば、天板の高さも狙ったところからさほど狂わず、水平も得やすくなります。

LPL_C7700のヘッド部
カラー引伸機のヘッド部
これは私が所有しているLPL C7700というカラー引伸機で、
普段は固定しておくシアンの調整ダイヤルが向かって左側、
頻繁に調整するマゼンタとイエローのダイヤルが右側にあり、
右利きの私には非常に使いやすいレイアウトだと思います。
ちなみに、モノクロを焼くときはシアンの調整ダイヤルの下にある
黄色いレバーを引いてカラーフィルターをキャンセルします。


写真のカラーバランスも同じで、テーブルの天板の高さは即ち露出に相当し、その水平が得られているかどうかはカラーバランスに相当すると理解すればよいでしょう。シアンを固定しておいて、マゼンタとイエローの2色のフィルターを調整し、色の水平を得ようというわけです。

が、これは言葉でいうほど簡単ではありません。まずはテストプリントをしてみて、全体にどの色に偏っているかを確認し、それを見ながら補正を行います。どの色相にどの程度偏っているかを見抜き、その色をマゼンタとイエローの2色で補正していくのですから、色彩に関する知識と色を判別する鋭い感覚がないと殆ど手探り状態の作業になります。なかなか一筋縄ではいかないわけですね。

例えば、赤に偏っているとすれば、マゼンタとイエローを同量、偏っている分だけ足してやります。青に偏っていればイエローを減らし、黄緑に偏っていたらマゼンタを減らしてイエローを足すといったことをするわけですね。色相環が頭に入っていて、ある色の補色がどれに当たるのか、そのバランスや量についてもすぐに見当を付けられる職人的な感覚が必要になってきます。

ま、カラーアナライザーという道具もありますが、これはやはり機械的です。サービスプリントなどはこうしたアナライザーを装備したオートラボでプリントされますが、画面に占める割合の多い色の補色に偏る「カラーフェリア」と呼ばれる現象が生じたりします。

例えば、画面に赤い色が多く占めていると、その中にいる人物の肌の色が青ざめた感じになってしまうといったことがあるんですね。これはデジカメでも起こり得ますが、最近は画像処理エンジンが賢くなってきたせいか、それなりのレベルで補正されるようになったと思います。

フィルムはメーカーが異なればもちろん、同じメーカーでも銘柄が変われば同じ補正で正しい色が出せるとは限りませんし、下手をすれば同じ銘柄でも生産ロットによって微妙に違う場合もあります。いうまでもありませんが、撮影時の光源によっても大きく変動します。なので、私は初めて使うフィルムや、光源の状況によっては補正の基準となるグレイサンプルを撮っておいたものです。

グレイサンプルといいますと、グレイカードを撮れば良いと考えがちですが、そこにはちょっとした落とし穴があります。グレイカードの中には反射式メーターで露出を測るために反射率18%に整えてあっても、カラーバランスがちゃんとニュートラルグレイになっていないものがあるようなんですね。銀一のシルクグレーカードやコダックのR-27ようにカラーバランスもニュートラルに整えられたものならともかく、そうした性能を謳っていないグレイカードは露出判定用と考え、カラー補正の参考にはしないほうが無難でしょう。

また、グレイカードはA4判やエイトバイテン(8×10インチ)などが一般的で結構嵩張ります。小さくカットしても良いのでしょうが、画面一杯に写し込みたいと思っても色々制約が生じやすく、何かと面倒だったりします。なので、私は脇色彩研究所の「RWカラーバランスシステム」というキットに付属していた専用のディフューザーを用いていました。これは18%グレイカード(もちろん、カラーバランスがニュートラルなもの)を画面いっぱいに写しこんだのと同じコマが撮影できるというスグレモノです。

RWカラーバランスシステム
RWカラーバランスシステム
カラーの自家現像をサポートするために開発されたもので、
写真手前右に見えるCCフィルタの補正値を示すカラーチャートなどと
キットで販売されていました。(当時でも入手しにくいキットでしたが。)
グレイサンプルを撮影する白色半透明の専用ディフューザーは
ケンコーのSQフィルター用マルチホルダーでの使用が推奨されていました。
ちなみに、左のほうに見えるヒョウタン形のギザギザした黒い物体は
ハンザの露光判定ツールで、グレイサンプルを焼くとき
印画紙の上でコマのように回すと中心に向かって順に露光時間が短くなり、
適切な露光時間の判定をするのに便利というアイテムです。


前述のように、シグマDP2は色分離が悪いフォビオンセンサの宿命ゆえか色転びしやすいのですが、光源に由来するホワイトバランスを補正するにはグレイサンプルを撮っておくとかなり楽になります。カラープリントに入れ込んでいた学生時代には当たり前のように撮っていたグレイサンプルですが、社会人になると忙しさにかまけてカラープリントは殆どやらなくなり、このキットも引出しの奥底に眠らせていました。まさか、こんなカタチで復活させることになるとは夢にも思いませんでした。

(つづく)

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