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80点主義なんてクソ食らえ!なカメラ (その7)

脇色彩研究所のRWカラーバランスシステムには手軽にグレイサンプルが撮れるディフューザーが付属しています。それは76×76mmですから、汎用の角形フィルターホルダーにセットするのが正しい使い方です。が、光源に向けてワンショットするくらいなら左手に持ってレンズの前にあてがうだけでも殆ど支障がありません。

かつてカラープリントに熱中していた時分の私は、これをフィルターケースの中にしのばせておき、光源の色温度などが微妙なときや初めて使うフィルムでデータがないときなどに取り出してはグレイサンプルを撮っていました。

同キットのカラーチャートと撮ったサンプルとを照らし合わせれば、フィルターの補正値も解るという非常に便利なシステムでした。といっても、実際にはチャートの指示通りの補正をしても完璧なニュートラルグレイが得られるとは限らず、微妙な追い込みは必要です。が、私の技量では何もないところから始めるよりテストプリントの回数をかなり減らせましたし、それは手間とコストの削減にも繋がりましたから、大いに意義がありました。

もちろん、人間が観賞するものですから完璧なカラーバランスに整えるより記憶色に従ったほうが自然に感じることもありますし、あえて特定の色を強調して演出するのも写真表現という世界では珍しくない手法ですから、その辺は焼く人間の自由です。自家現像は苦労も沢山ありますが、そうした自由があるだけに楽しかったりするわけですね。

で、こうした便利なアイテムもカラープリントをやっている趣味人の絶対数が非常に少ないですから、当時でもそんじょそこらでは売ってませんでした。写真専門誌でその存在を知ってアチコチ探し回っても見つからず、仕方ないのでヨドバシカメラに注文して取り寄せてもらったのですが、何だかんだと3ヶ月は待たされたでしょうか。ちなみに、当時はネット通販どころか個人がインターネットに接続することも事実上不可能な時代でした。

色転びしやすいDP2を購入したことで十数年眠らせていたこのアイテムを復活させたわけですが、プラスチック製ですから経年劣化でカラーバランスが狂っている懸念もありました(昔の樹脂は紫外線を受けて劣化し、黄ばみやすいものもありましたし)。そこで様々な光源の下で新品のグレイカードとの比較テストをしてみましたが、そのような傾向は一切見られませんでした。引出しの中という暗所で眠っていたからか、そもそも劣化しにくい素材が吟味されていたからなのか、その辺りは解りませんが。

上述のように、銀塩のプリントではこうしたツールを使ってもテストを重ねることが必要で、それだけに手間もコストもかかりました。が、デジカメはRAW現像ソフトの簡単な操作でもかなりのレベルで補正ができてしまいますし、かかるコストもパソコンを動かす電気代のみでタダ同然ですから、私にとっては全く負担になりません。

現像しなければ結果がわからない銀塩写真と違ってモニタで調子を見ながら補正できるのですから、トライ&エラーといってもたかが知れています。RAW現像ソフトやフォトレタッチソフトでアレコレ弄るのは暗室ワークに比べればカネはもちろん、手間のかかりかたも時間のかかりかたも桁違いです。

思えば、マイコン制御の恒温バットが買えなかった学生時代の私は、バイメタルという非常に原始的な機構しか持たないヒーターで何とか薬液の温度を管理していました。不退色のダイクロイックフィルターを装備したカラー引伸機を手に入れたのも社会人になってからですが、その前はモノクロ引伸機のフィルターポケットにマゼンタとイエローのラッテンフィルター(コダックのゼラチンフィルターです)を抜き挿ししていました。

カラー引伸機はダイヤル一発でフィルターを調整できます。例えばマゼンタを60から75に増やしたいと思ったらダイヤルを60から75まで15目盛捻れば済みます。が、モノクロ引伸機では濃さの違うフィルターを重ねてポケットに挿入しますから、いま40と20のフィルターを重ねて60にしているけれど、15はないから20を抜いて30と05を加えて75にするといった具合になります。こうして手持ちのフィルターの中で組み合わせながら調整していくわけですから、やはり面倒な作業になります。

もちろん、ちゃんとした暗室も持っていません。遮光カーテンくらいでは隙間から漏れてくる光が強すぎて昼間にカラーは焼けません。なので、遮光カーテンだけでもほぼ暗黒にできる夜間に集中してやらなければなりません。ま、「カネはないけど暇はある」学生時代だったからこそ、手間をかけ、四苦八苦しながらカラープリントに挑むことができたのでしょう。いま思えば我ながら良くやったと思います。

が、デジカメで育った世代、否、銀塩での経験が豊富でも現像やカラーリバーサルでちゃんとしたフィルターワークを経験したことがない人たちは1枚の写真を仕上げるのに手間がかかるのは信じられないことなのかも知れません。そういう人の中にはDP2のようにカメラ任せで撮って時々変な色が出てきたりすると許せないという人もいるのでしょう。私などはそれを補正する手間が少々かかっても、写真と戯れていると感じることができますし、そのプロセスも殆ど苦になりません。

DP2(というよりフォビオンセンサを用いたカメラ全般というべきかも知れません)は、かなりのじゃじゃ馬で、クセはあっても一定の傾向が保たれていることが多いフィルムよりも扱いにくいと感じることもあります。が、銀塩の現像に比べればRAW現像はあらゆる面で簡便ですから、トータルでいえばやはり銀塩の自家現像とは比べものになりません。

DP2はホワイトバランスを「オート」にしておくと微妙に転んでしまうことが時々あります。そういうときは「カスタム」にして件のディフューザーを被せて光源を狙い、ニュートラルを出してやると概ね無難なホワイトバランスが得られるようです。より万全を期すためにRAW現像でジックリと補正をかけるならホワイトバランスを「晴れ」(太陽光)にして撮影し、その際の光源でグレイサンプルを撮っておいたほうが良いと思います。

ちなみに、エツミが輸入している「baLens」(←リンク先はPDFです)もRWカラーバランスシステムのそれと全く同じ発想でレンズにディフューザーを装着してグレイサンプルを得ようというものですが、そのディフューザーをレンズキャップ一体にしてしまったというのはなかなか面白いアイデアです。

とはいえ、結構いい値段ですし、DP2に合うサイズのものがないのでこれだけ持って歩くのも何ですし、RWカラーバランスシステムのディフューザーとは比べものにならない厚さがありますから、私としてはあまり欲しいとも思いませんが。

なお、DP2は光源に由来するホワイトバランスとは関係のない色かぶりも時々起こります。これもサンプルの取り方次第で補正の目安は作れなくもないのですが、私の場合は上述のようにカラーの自家現像という「昔取った杵柄」がありますので、経験と勘で適当に対処するようにしています。色に対する感覚はブランクで多少鈍ってしまったかも知れませんが、手間をかけることに対する耐性はさほど失われていませんので、銀塩写真の現像とは比較にならないほど簡便なRAW現像ソフトでの補正は苦になりません。

こんな風に書いてしまうとDP2はとんでもなく面倒くさいカメラと思われるかも知れませんが、実際には普通のデジカメに比べると少々カラーバランスが不安定というくらいです(希に「少々」では済まないときもありますが)。普通のデジカメも常に完璧なカラーバランスが得られているわけではなく、程度の問題でしかありません。私がこのDP2を使ってきた限りでは派手に転んだり被ったりしたことは数えるくらいしかありませんし、中にはこうした不安定さも「個性」として楽しめる人もいるでしょう。

フォビオンセンサの素性を理解して使う分には実に楽しいカメラだと思います。ま、その個性がかなり強烈ですから、当然のことながら人によって「合う」「合わない」が分かれるわけですが。

(つづく)

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