酒と蘊蓄の日々

The Days of Wine and Knowledges

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

チタンの耳かき

近年はCGを用いたアニメの製作方法が多用な表現を可能にし、日産ノートのテレビCMにも起用されて話題になった『The World of GOLDEN EGGS』のように先に音声を収録することで声優が自由にアドリブできるという「プレスコアリング」略して「プレスコ」と呼ばれる製作手法も増えてきました。

かつて、プレスコはディズニーアニメのミュージカル的な演出など、音楽に合わせてキャラクターが歌ったり踊ったりするようなシーンに用いられる程度でした。スタジオジブリの『おもひでぽろぽろ』は今井美樹さんと柳葉敏郎さんを声優に起用し、手間をかけてプレスコで製作されましたが、「キャラクターの顔までわざわざ役者に似せるくらいなら実写でも良かったのでは?」などという声も上がったものです。

アニメーターが原画を手描きする従来のアニメにおいてプレスコは猛烈な手間がかかり、製作費もマンパワーも相応に要求されます。が、CGならモデリングしたキャラクターを自在に動かせますから、低予算でマンパワーがなくても容易に用いることが可能になったわけですね。

従来のようなアフレコでは声優が映像に合わないことを言ったりタイミングを外したりすれば即刻NGとなり、アドリブも殆ど不可能でした。が、映像を後から製作するプレスコなら好きなタイミングで好きなことを言えますから、ノリで面白いことを言ってみたり、微妙な間の取り方なども役者に委ねることができます。

特に会話などのやり取りはお互いの呼吸もありますから、アニメーターが計算したとおりのタイミングで展開する従来のアフレコでは難しかった表現も容易になります。微妙な間合いが醸し出す雰囲気はプレスコでないと表現できないというケースも多々あるでしょう。

特に「脱力系」と呼ばれる『The World of GOLDEN EGGS』のようにコミカルなアニメでは微妙な間の取り方が面白さに大きく影響することがありますから、プレスコというアドリブし放題の手法を用いた作品は今後も様々なカタチで試みられていくのではないかと思います。

またぞろ前置きが非常に長くなって恐縮ですが、ここからが本題です。『Peeping Life』という脱力系プレスコアニメにチタン製の耳かきをプレゼントされたことを自慢するエピソードがありまして、ま、このハナシ自体は私のツボにハマったわけでもないのですが、何故か「チタンの耳かき」というアイテムについては妙に引っ掛かってしまいました。

そういう商品があるということは容易に想像が付いたのですが、「具体的にどんなモノがあるのだろう?」と思ってネットでザッと調べてみましたところ、意外に多かったのがスパイラルタイプでした。先端の方に螺旋状のリブが設けられ、それで掻き出すという方式ですね。

私もステンレスワイヤー製や硬質ラバー製など、いくつかスパイラルタイプを試してきましたが、掻き取るというより絡め取っている感じが個人的には今ひとつで、オーソドックスなスプーン状のものが好みです。そうしたオーソドックスな形状のチタン製耳かきも存在するのですが、ただチタンというだけで値段が高い割にコレといった特徴もなく、「こんなモノなら自分で作れるのでは?」などと思ってしまいました。

最初は本気で作るつもりなどなかったのですが、これまで何本となく耳かきを取っ替え引っ替えしても納得のいく一本に巡り会えなかったこともあり、「試しに作ってみようか?」という気分が何となく盛り上がってきました。

とりあえず、入手しやすい丸棒から削り出すとして、どのくらいの太さが良いかを検討しました。私は手が大きいので、あまり細いと持ちにくくなりますが、かといって太くなるほど削る工程が大変になります。色々検討した結果、手持ちの耳かきの中で最低限このくらいの太さは欲しいと思った5mmΦに決めました。

5mmΦのチタン丸棒はネット通販で容易に入手できました。私が購入したものは300mmで760円(税込み・送料別)です。長さも色々検討して150mmくらいが丁度良いと考えていましたので、300mmあれば2本分になります。ま、2本も作るつもりはありませんでしたが、とりあえず真ん中で切断しましたので、1本分の材料費は380円ということになりました。

最初はデザイン画でも描いて、それに近づけるように加工してやろうかとも思いましたが、工具も限られたものしかない中であまり工数が多くならないような工夫をしながらデザインするのは経験がないだけに却って難しそうな気がしました。また、実際に材料と格闘していくうち段々しんどくなってきて手抜きをしたくなることもあります。デザインに凝りすぎて挫折してしまうより、「作りながら適当に形を整えてやればいいや」と思い直しました。

そうと決まれば、とにかくヤスリで削り倒すだけです。

金工用ヤスリはニコルソンを愛用するようになってカレコレ10年以上経ちますが、切れ味の良さ、切削面の荒れにくさ、目詰まりのしにくさ、耐久性などを総合的に評価しますと、これ以外にはバローベくらいしか良い品を知りません。ま、職人さんが目立てしたような特別なものになるとよく解りませんが、ホームセンターなどでも比較的容易に入手できるものの中では、やはりニコルソンが一番無難ではないかと思います。(現在一般に流通しているブラジル製は以前ほどの品質が維持されていないようですが。)

で、完成した手作りチタン製耳かきがコレ↓です。

自作チタン製耳かき_1
やや粗めのヘアラインフィニッシュのほうが渋い質感になるので好みなのですが、
衛生面を考えるとミラーフィニッシュのほうが良いと思いましたので、
ペーパーは2000番まで用い、コンパウンドも3種類を駆使して
顔がハッキリと写るくらいまで磨き込みました。


もう少し細い材料だったら先端部分を作るのに叩いて延ばし、しかる後に曲げ加工を施すといった工程も必要だったでしょうが、上述のように5mmΦという太さに余裕がある材料を用いましたので、100%削り出しです。

未加工チタン丸棒との比較

未加工の丸棒との比較ですが、ご覧のように軸は先端部に向かってテーパーを付けてあります。写真では解りにくいかも知れませんが、このテーパーは直線ではなく、なだらかにカーブさせています。これは万力などで材料を固定せず、材料もヤスリも手に持った状態で削ったため、自然にこうなりました。

真っ直ぐ削るには材料を固定したほうが良いのですが、固定すると養生してやったつもりでも、余計なキズを付けてしまうことがありますし、力を込めすぎると変形させてしまいやすいため、その修正に手間を取られたくないと思ったからですが、結果的にこの曲線が見た目に柔らかい印象となり、造形として無機的になり過ぎることもなく、なかなか良い感じに仕上がったように思います。ま、手前味噌ではありますが。

このテーパーは手に持ったときの重量バランスも考慮しています。中指で支持するあたりが重心になるようにし、それに見合った重量バランスとなるようにテーパー加工を施していったわけです。が、これも予め重量分布を計算してテーパーを付け始める位置を割り出したのではなく(デザインも決まっていない状態でそんな計算などできるわけがありませんし)、様子を見ながら削っていくことで自然に位置が定まった格好です。

自作チタン製耳かき_2
自作チタン製耳かき_3

先端部分もヤスリの形状を利用しながら適当に形を整えていったため、見た目ほど手間はかかっていません。軸にテーパーを付けるほうが削る量が遙かに多く、断面があまりイビツにならないよう、できるだけキレイな楕円になるように注意を要したため、比べものにならないくらい手間がかかっています。が、初めにデザインを絞り込まず、臨機応変にカタチを創り上げていくことにしたのは正解だったように思います。

この原稿を書きながらいま気付いたのですが、予め厳密なシナリオを策定しなかったという意味で、この耳かきの製作方法はプレスコアニメに通じるものがあると言えるかも知れませんね。

で、肝心の掻き心地ですが、これは「まぁまぁ」といったところです。あまりエッジを立て過ぎると痛く感じたり、場合によっては皮膚に傷を付けてしまう恐れも生じてきますが、逆にダルくし過ぎると滑って上手く耳垢を捕えてくれない感じになってしまいます。絶妙な頃合いにチューニングするのは一朝一夕では立ち行かない境地なのでしょう。

ま、世の中には耳かき一筋という職人さんもいますから、全くの素人である私が生まれて初めて作っていきなりパーフェクトな耳かきが出来上がるなんて、そんなに甘いものではないでしょう。価値判断の基準が緩やかであまり高望みしない人ならこの程度でも満足できるかも知れませんが、私はいくらでも改善の余地があると思っていますので、まだまだ納得していません。

例えば、先端をもう少し厚めに加工して皮膚に触れる面積がもう少し大きくなるようにすれば、その分だけ圧力を分散できるでしょう。先端部手前側のエッジをやや立て気味に、反対側のエッジは厚さを生かして緩やかに加工すれば、耳垢を捕える感じと滑らかな使い心地を両立できたかも知れません。また、先端部の形状や角度も大いに検討の余地があると思います。

材料はもう1本分あるのですが、私の日常を超えた酷使で指先の皮膚がこれ以上の作業に耐えられそうにありません。頻繁にやっていれば皮が厚くなって問題ないのでしょう(昔、プラモデルをよく作っていた頃は指の皮が厚くなっていました)けど、現状では少々辛いものがあります。リューターやディスクサンダーなども持っていますが、この種のパワーツールを使うと不慣れな私の技量では軸のあの微妙な曲線を上手く出せないでしょうし。

また、今回の調整段階で耳垢を取り尽くしてしまったようで、何日か間を置かないと自分の耳で充分な確認もできそうにありません。なので、もうしばらくしてモチベーションが低下していなかったら、リトライしてみる気になるかも知れません。

コメント

はじめまして小林といいます この 耳かき棒 ほしいです つくれませんか

  • 2010/11/28(日) 16:27:27 |
  • URL |
  • #-
  • [ 編集]

小林さん>

初めまして。

>この 耳かき棒 ほしいです

そう言って頂けるのは大変光栄ですが、かなり手間と時間のかかるもので私自身のモチベーションが問題です。いずれ第二弾を製作しようと思っているのですが、それもいつになるか解りません。申し訳ありませんが、いまのところお約束することはできません。

  • 2010/12/01(水) 00:14:33 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/tb.php/586-606a45cd
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

まとめ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。