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クライメートゲート事件を闇に葬ろうとする人々 (その2)

UEA(イーストアングリア大学)がいわゆるクライメートゲート事件を調査した結果には呆れることだらけですが、中でも飛び抜けて酷かったのは、前回(2回目)の調査結果報告書が出されたとき委員長のオックスバーグ卿が以下のように述べていたことです。

「批判家たちによって要求されたような環境データの管理に対して英国政府がどこでも用いられているような政策を導入したことは不適切であり、この動きは研究者間でのデータの流れを妨げた。」

しかし、実態は全く異なります。UEAの気候研究所所長であるフィル・ジョーンズ氏ら本件の中心人物たちは「ここ英国にも情報公開法があると連中が嗅ぎつけたら、ファイルは渡すくらいなら消去する予定」などといったメールをやり取りし、都合の悪いデータが懐疑派に渡らないよう腐心していました。

彼らは自分たちのレポートで用いたグラフなどの元データやその解析方法の開示を拒み続け、データの解析過程を第三者が検証できないように画策するメールを交わしていたのです。つまり、どれほどインチキなデータ処理がなされ、結論に都合の良い集計がなされていても、チェックのしようがない出鱈目なレポートが大手を振って発表され、それが人為説の根拠の一部として扱われてきたということです。

スティーブ・マッキンタイア氏ら懐疑派の急先鋒たちはデータの扱いに間違いがないか確認したいと訴え、再三に渡ってジョーンズ氏らにどの観測ポイントの値を用いたのかといった元データとその解析方法について開示を求め、イギリスの情報公開法に則った請求を重ねてきました。が、煙に巻くような返答しか得られないという状態が何年も続いてきました。

マッキンタイア氏らが望んだように第三者がデータ処理を再現し、その妥当性を確認するのは科学分析の精度を維持するために不可欠なことです。逆に、どのようなデータをどのように処理したかも明らかにせず、結果だけを以て一方的な理屈をこねるのは似非科学そのものです。しかし、マッキンタイア氏らがしつこく情報開示を請求したことについて前回の調査委員長であるオックスバーグ卿は「迷惑行為に及んでいたかもしれない」と言ってのけました。

データを精査したいという当然の請求を「迷惑行為」といい、その開示を拒んできたジョーンズ氏らには問題がなかったとし、そのうえ、イギリス政府が2005年に導入した情報公開法の対象に大学の研究データなども組み入れたのは「不適切」だったというわけです。どのように曲解すればここまで酷い錯誤に陥ってしまうのでしょうか?

今回(3回目)の調査報告ではUEAの情報開示が不充分で「理にかなった情報要請」への対応は「役に立たず、身構えた」ものだったということを認めました。「適切な度合いの開示を怠るという一貫したパターン」があったことを報告書の中で批判していたのはそれなりに前進したといえるかも知れません。が、前回のオックスバーグ卿の「迷惑行為」発言に対する批判の集中を緩和するために譲歩した結果と見るのが妥当なところでしょう。

実際のところ、ジョーンズ氏らがマッキンタイア氏らを侮辱しながら情報開示を拒み続けてきたことが流出メールを追えば確認できます。また、マッキンタイア氏のように冷遇された人たちはUEAからの回答メールも引用しながらその顛末を自身のblogに綴っていたのですが、その記事と件の流出メールでやり取りされた内容がキレイに整合していますから、これも事実であることは疑いの余地がないでしょう。

彼らは学内の情報開示担当の専門職員と共に、どうすれば開示請求を退けることができるか、どの免責事由が利用できるかといった検討を重ねてきました。今回の報告では「開示を怠る」とされ、単なる怠慢であったかのように伝えていますが、実際には極めて積極的に開示拒否の方策を練っていたと見て間違いありません。(こうした経緯は次のエントリで紹介する本に詳しく書かれていますので、そこで改めて触れることにします。)

いずれにしても、UEAが発表したこれらの調査報告では全体として問題がなかったという結論を導いていますから、不正の隠蔽を全面的に支援する以外の何ものでもありません。要するに、UEAは外部の人間に調査させ、疑いが晴れたといいながら、実際には保身のために都合の良い結論を出させただけで、人選の段階から大いに問題があった何の役にも立たないゴミ同然の報告と見なして良いでしょう。

いま角界が野球賭博や暴力団絡みの騒動で袋叩きにされていますが、相撲協会がその調査委員会の委員長に大相撲の後援会関係者を選んだり、相撲協会を擁護するような発言をしたメディア関係者、元相撲協会職員などをメンバーに含めていたら当然のように中立性が疑われ、火に油を注ぐような状態になっていたでしょう。実際、暴力団へのチケット譲渡に関与したボクシングジムの最高顧問がこの調査委員の一人になっていたことがメディアに大きく報じられ、程なく解任される騒ぎになったくらい潔癖さが求められています。

クライメートゲート事件を巡ってはこうした疑義を押し潰してでも事を収めようとする雰囲気を感じます。その報告書をストレートに「報道資料」として垂れ流した環境省も(悪意の有無はともかく)彼らと同じ側にいると考えて差し支えないでしょう。

少なくとも、環境省はUEA側の「研究協力者の嫌疑が晴れたことが広く報道されることを望む」というコメントを載せておきながら、WSJが報じたように調査そのものにバイアスがかかっているのではないかという懸念は伝えない一方的なものです。ついでにいえば、この事件そのものや調査報告を殆ど黙殺した日本のメディアの多くも同じ側にいると見なせます。

こうして多数派が形成されると日本ではその空気に流されてしまいがちですが、多数派工作をしても真実を隠し通せるとは限りません。環境省もメディアもその辺を弁えて身の置き場を定めないと、いずれ大恥をかくことになるかも知れません。

(おしまい)

コメント

アメリカのメディア

アメリカのメディアでは温暖化はClimategate及びIPCC-Gateで科学として破綻し、上院での温暖化対策法案の成立阻止によって政治的にも終わったという認識です。
Forbesが社説で『地球温暖化ムーブメントの死』として取り上げており、滅茶苦茶な科学・政策を強行した十字軍(温暖化脅威派)は滅びる運命にあったと書いています。
また脅威派のNY Timesでさえ社説で『もはや万策尽きた』と敗北を認め、懐疑派に寝返ったMcCain上院議員らを臆病者呼ばわりしていました。

http://www.forbes.com/2010/07/28/climate-change-movement-harry-reid-opinions-columnists-shikha-dalmia_print.html
http://www.nytimes.com/2010/07/26/opinion/26krugman.html?_r=1

アメリカではメディアも脅威派、懐疑派と主張が分かれるところが、健全な民主主義と言えるかもしれません。

  • 2010/08/05(木) 05:52:19 |
  • URL |
  • nytola #z8Ev11P6
  • [ 編集]

nytolaさん>

興味深い記事をご紹介頂き、有り難うございます。

これまでもアメリカではリベラル系が脅威論に準じ、保守系はそれに懐疑的というスタンスが一般的だったように思いますが、ここにきて脅威論の旗色がドンドン悪くなってきました。マケイン氏は基本スタンスを保守に置きながらリベラル寄りの政策にも消極的ではなく、先の大統領選でも共和党唯一の温暖化対策重視を示していましたね。彼も結局はこの旗色を読んで寝返ったのでしょう。

この流れは環境保護政策重視路線で世界の先頭を走ってきたドイツでも顕著で、メルケル首相率いるキリスト教民主同盟のある有力議員は太陽光発電について「ちっぽけな効果を挙げるために莫大な予算を吸い取る、われわれ自身がつくり出したモンスター」と語り、党内でも議会でも不安が高まっていると語っているそうです。

いずれにしても、日本は言論が統制されているかのような一方的な情報ばかりで、こうしたハナシはよほどアンテナを高く張っておかないと触れることができません。この不健全な状態はあの戦争の後も何ら進歩していないということを示すものですね。

  • 2010/08/08(日) 23:48:12 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

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