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クライメートゲート事件を具体的に明かす貴重な和書 (その2)

『地球温暖化スキャンダル ― 2009年秋クライメートゲート事件の激震』の原著を記したスティーブン・モシャーとトマス・フラーの両氏はスティーブ・マッキンタイア氏らのblogなど、その種のサイトをこの事件が起こる何年も前から丹念にウォッチし続けていました。なので、彼らがどのように冷遇されてきたかという経緯も従前から熟知しており、そうしたエピソードが本書にはふんだんに盛り込まれています。

例えば、マッキンタイア氏はこの事件の中心人物であるジョーンズ氏らのレポートで用いられたグラフなどが適切に導かれたものか否かを確認するため、どの気候観測ポイントのデータを用い、どのようにそれを処理したのかといった情報開示請求を行ってきました。

データの扱いに錯誤があったり、単純な計算ミスがないとも限りませんから、第三者が検算して根拠を洗い直すのは科学分析の公正さを維持するのに当然の確認作業といえます。また、イギリスにはそうした情報を開示する義務を課した情報公開法がありますから、マッキンタイア氏らはそれに則って至極真っ当に情報開示を請求していたわけです。

しかしながら、ジョーンズ氏らはマトモに対応しませんでした。その顛末がマッキンタイア氏のblogで詳細に綴られていたわけですが、本書ではその記事とこの事件で流出したメールとを対比させています。

ジョーンズ氏らのメールには大学の情報開示担当者がイギリスの情報公開法について詳しく検討し、どの免責事由が適用できるかを確認していたことや、如何にして情報開示を拒むかといった相談が事細かに書かれています。さらには、先にも触れましたように「ここ英国にも情報公開法があると連中が嗅ぎつけたら、ファイルは渡すくらいなら消去する予定」とまでメールに書かれています。

一方、同じ時期に書かれたマッキンタイア氏のblogにはどのような理由で情報開示を拒まれたか、大学から来た回答メールを引用して具体的にその中身を伝えていました。本書ではこれらを並べて見せ、各々の内容が見事に繋がっているということを示し、正当な情報開示請求を不当に拒んできた様子を明らかにしています。

また、IPCCの評価報告書に採用されるには公表済みで査読付の論文であることなどが条件となっていますし、その締め切りもキチンと設けられています。が、彼らは自分たちに向けられた異論に反駁する論文の完成が遅れていたことから、締め切りまでに無理矢理査読付の公開論文とするため、学術誌の編集長に取り入るなどしてかなりアクロバティックな裏工作を行っていました。そのえげつない過程も全てやり取りされたメールを裏付けとして詳細に再現されています。

この事件を受けて「懐疑派が文脈を無視してメールの断片を曲解しているだけ」などと主張する人為説支持者は少なくありませんでした。が、そうした主張はメールの中身を確認していないからこそ言える全くの出鱈目で、極めて見苦しい言い訳に過ぎないと断言して良いでしょう。

本書は冷遇された懐疑派のblog記事や、実際に行われた手続の状況なども確認しており、それを電子メールという物証で裏付け、いずれもがキレイに整合していることを描き出しています。つまり、状況証拠も物証も整っているわけで、これは常識的に考えてかなり高いレベルで真実に近づいていると見るべきでしょう。そこで明らかになったのはジョーンズ氏らの科学を冒涜するような不正行為の数々と、科学者という以前に人間として恥ずべき醜態の数々です。

先のエントリでもご紹介しましたように、件のイーストアングリア大学は現在まで3回にわたってこの事件の調査結果を発表していますが、「科学者としての厳格さ、誠実さは疑いの余地がない」「IPCC評価報告書の結論を蝕むような行為のいかなる証拠も見出さなかった」といった結論を導いています。本書に書かれているような事実がなかったということを証明しなければ、その調査報告書こそ事実を隠蔽する悪質な捏造と見なさざるを得ないでしょう。

この日本語版に関しては、価格が2,310円でやや高めであることと、プロの翻訳家ではない東大の渡辺正教授による和訳があまりこなれていない感じ(原文のニュアンスを汲もうとして日本語のリズムが悪くなってしまったような印象を受けました)などが少々気になりました。

人物名や略称の一覧を設けるなど、この分野にあまり詳しくない人に対して一定の考慮がなされている点は良かったと思います。私も本書に登場する人物の半分くらいは知りませんでしたので、人物一覧は特に役立ちました。ただ、私の場合は積極的にこの方面の情報を得ようとしてきたという素地があったので難なく読めましたが、何も知らない人がいきなり読んだら整理しきれないのではないかと思われる点もあります。

本書は事件から1ヶ月程で書かれたゆえその後の余波には触れられていません。そのため、訳者の渡辺氏は、前回ご紹介した月刊『化学』に寄稿された同氏のレポートも併せて読んで欲しいとの旨を後書きで述べ、出版元である日本評論社のサイトに設けられているダウンロードコーナーのURL(http://www.nippyo.co.jp/download/climategate/index.php)が示されています。が、現在は「諸般の事情」(要するに著作権に関わる事情でしょう)で本書の正誤表しかなく、件のレポートは月刊『化学』の公式サイトへ当たるように書かれています。

ま、それ自体は仕方ないことなのでしょうが、せめて本書の後書きに記載されているURLから直接リンクを張っておくべきです。そのURLにアクセスしても何処から当たればよいのか全く書かれていません。同サイトの検索機能を用いるなどして本書の詳細ページにアクセスし、そこに張られているリンクを辿らなければなりません。極めて解りにくい不親切な状態で、私も最初は全く解りませんでした。この辺はもう少しキメ細かい対応をすべきでしょう。

とはいえ、この事件をこれだけ具体的に纏めたレベルの高い著述はそう多くないと思います。少なくとも日本語でここまで述べられているものは現在のところ類例がなく、非常に貴重な存在だと思います。原著が書かれた時期的な問題もあると思いますが、内容的にもかなり的が絞れていた分だけ主題が散漫にならなかったという点でも成功していると思います。

これまで日本の紙媒体においては一部の週刊誌月刊誌などで数頁の特集が組まれたくらいで、しかもIPCCの評価報告書で問題になったヒマラヤの氷河消失に絡む誇張など、事件後に次々発覚したレビュープロセスの杜撰さも纏めて総括するような内容でした。それらとは全く次元の異なる非常に内容の濃い情報が本書には詰まっています。

クライメートゲート事件についての詳細を欲している方にはもちろんですが、この事件を「懐疑派たちが無用に騒いでいるだけで取るに足りないもの」「懐疑派が仕組んだ陰謀で、人為説の信用を不当に落とそうとした卑劣な事件」などと誤認されている方にこそ読んで頂きたい一冊です。ま、盲目的な人為説信者や人為説が飯のタネで絶対にこれを手放したくない人たちには何を示しても無駄なのでしょうけど。

(おしまい)

コメント

またまたエコエコ詐欺の種が、、。

 クライメートゲートからアマゾンゲート、パチャウリゲート等々、とIPCCの出鱈目な「科学」の楽屋裏が暴露されましたが、彼らは、飯のタネを簡単には手放すことは無さそうです。 
 温暖化ビジネスは、排出権取引を頂点にした複合的な利権によって成り立っています。 排出権取引のことを、「カーボン・オフセット」とも言いますが、これは、もともと「生物多様性オフセット」(仮称)と一体になっていて、怪しげな環境経済学によって実体を飾られています。 その実は、サブ・プライムと同じで、先端的な金融工学によって成り立っている「デリバティブ」(金融派生商品)です。 日本では、殆ど知られていませんが、生物多様性オフセットも欧州では、実際に取引されています。 
 欧米は、既にポスト工業化社会になったところが多くて、英米のように金融が第一の産業になりつつあります。 彼らは、温暖化や生物多様性と言ったお題目でマーケット(市場)を創造しているのです。 恐ろしいまでのマネーの暴走です。 私は、今秋に名古屋で開催される生物多様性の国際会議では、日本政府が、京都議定書で詐欺にあったように、またまた騙されるのではないか、と心配しています。 既に、IPCCと同質の組織が、韓国での国際会議において成立しています。 日本では、まだ殆どが無警戒のまま、一部ではもうキャンペーンが始まっています。 温暖化と同じで、一部のまともな科学者が気がついた時には、日本は、既に取り込まれているでしょう。 

とら猫イーチさん>

仰るように生物多様性を巡る問題も地球温暖化と似たような匂いを感じますね。絶滅した生物種の数なんてホッケースティック曲線に酷似していますし。
http://www.cop10.jp/aichi-nagoya/biodiversity/index.html#now

ま、私もこの分野はまだまだ勉強不足で何とも言い難い部分はありますが、生物多様性オフセットなどはカーボンオフセット同様に現代の免罪符的な仕組みで実効性が疑わしいところですし、実際にカーボンオフセットは金融商品になっていますから、同じところをなぞることになるでしょうね。

こういうハナシは手を替え品を替え、繰り返されるのかも知れません。

  • 2010/08/18(水) 00:41:31 |
  • URL |
  • 石墨 #PxDbU/1w
  • [ 編集]

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