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ホンダの首脳陣は案外正直者かも (その2)

ホンダに電気自動車の発売を決意させたのは、伊東社長が述べたことからも明らかなように、カリフォルニア州の規制が強化されるからに違いありません。北条取締役が述べたように採算度外視で、ビジネス的には実のないものというわけですね。こうした規制さえなければ、現段階ではさほど有意義と言い難い電気自動車の市販にホンダは余計なリソースを裂く気などなかったと思います。

そのカリフォルニアは全米随一というべき狂信的な(そしてかなり偽善的な)環境保護政策を進めています。ホンダがあまり乗り気でないのに電気自動車を発売することになったのも、トヨタがテスラと組んでRAV4ベースの電気自動車を発売する予定なのも、同州の「ZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)規制」が年々強化されていくゆえでしょう。この規制は州内年販6万台以上の大手メーカーに対し、電気自動車や燃料電池車などZEVの販売比率を高めるよう求めています。

具体的には、州内の販売総数に対するZEVの比率をフェーズ1(2009~2011年)で11%、フェーズ2(2012~2014年)で12%、フェーズ3(2015~2017年)で14%、フェーズ4(2018年以降)で16%としなければなりません。ただし、販売総数に対して単純にこの割合を当てはめるわけではなく、航続距離などの性能差が考慮されており、以下のようなカテゴリーが設けられています。

・タイプ0: 50マイル未満の近距離用電気自動車→1クレジット/台
・タイプ1: 50~75マイル走る電気自動車→2クレジット/台
・タイプ1.5: 75~100マイル走る電気自動車→2.5クレジット/台
・タイプ2: 100~200マイル走る電気自動車→3クレジット/台
・タイプ3: 200マイル以上走る電気自動車または100マイル以上走る燃料電池車→4クレジット/台
・タイプ4: 200マイル以上走る燃料電池車→5クレジット/台
・タイプ5: 300マイル以上走る燃料電池車→7クレジット/台

航続距離が長いものほど多くのクレジットが与えられ、少ない販売台数で規制をクリアできるようになっているわけですね。燃料電池車が電気自動車より優遇されているのは、エネルギーの充填時間が短いという点が考慮されているからのようです。いずれにしても、実用性の高いZEV(その分だけ高価になりがちです)ほど有利になるようカテゴライズされています。

カリフォルニア州のZEV規制は、これまでも現実の壁にぶち当たって当初の高い目標から何度も緩和策が講じられ、半ば骨抜きになっていきました。従来はハイブリッド車や燃費の良いガソリンエンジン車などにも別枠でクレジットが与えられ、それでかなりの部分を補填することも出来ました。

が、昨今の電気自動車ブームなどが追い風となったのか、これまでに比べると彼らもかなり強気になっているようで、今後は必ず一定のクレジット分だけZEVを売るよう迫っている状況です。不足分1クレジット当たり5,000ドルの罰金を支払わなければならない規定は変わりませんが、従来に比べると緩和策の幅が大きく狭められているようで、そのことが各メーカーにとって頭痛のタネになっているようです。

2008年までのZEV規制では総数250台以上の燃料電池車を販売することとされ、ホンダは48台が割り当てられていました。本当は同州での販売シェアに準じて分担されるハズですが、1990年代から続いてきたZEV規制で販売した電気自動車の獲得クレジットで補填することができるという仕組みになっていたようです。電気自動車からは早期撤退していたホンダの保有クレジットが少なかったゆえ、販売シェア(12~13%程度)より少し大きく割り当てられたというわけですね。

このとき、ホンダは水素ステーションが比較的多く設置されている南カリフォルニアを中心として一般消費者向けにFCXクラリティを3年リースで販売しており、そのリース料は月額600ドルというとんでもない破格でした。これは日本での官公庁や企業向けリースが概ね同じ条件で月額80万円であることを考えれば極めて異常な安さです。

1台1億円ともいわれるこのクルマを600ドル×36ヶ月=21,600ドルでリース販売したのですから、残価設定がどうなっていようともホンダとしては大変な出血大サービスだったわけですね。これを取り違えて「燃料電池車が現実的な価格で買えるようになるのも間近」と報じていたメディアもありましたが、ま、そういう勇み足の記事はこの分野ではよくあることです。

このときホンダはテスラのように小規模でZEV規制にかからないメーカーからクレジットを購入したり、罰金を払ったりするくらいなら、その分のコスト+αでFCXクラリティをリース販売したほうがイメージアップにも話題づくりにも繋がり、オマケにリースアップした車両を回収すればデータの収集にも活用できると考えたのかも知れません。

が、今後の台数増加にこんな大出血サービスのリース販売でFCXクラリティをバラ撒いていったら、ホンダは莫大な損失を計上することになってしまいます。実際、ホンダはフェーズ1の自力クリアを諦め、テスラから「655台分のクレジット※」を購入したと伝えられています。(※これはブルームバーグによる報道ですが、「655台分のクレジット」というのが655クレジットを意味しているのか、テスラ・ロードスター→タイプ3→4クレジット/台×655台分=2620クレジットなのか、そこまでは書かれていませんでした。)

こうしたカネで解決する方法を続けるとイメージダウンに直結していくでしょう。ホンダが電気自動車を発売する方針を打ち出したのは、要するにそれを避けることと、コスト面との兼ね合いによる判断なのでしょう。

ホンダが電気自動車の発売を予定している2012年にかかるのはフェーズ2の12%です。2009年のカリフォルニア州内での新車販売台数は100万台強で、そのうちホンダは13%程度を占めていました。フェーズ2の適用期間もその規模を維持するとしたら、毎年15,600クレジット分のZEVを売らなければなりません。

毎年7,800万ドル(円高の現在でも約66億円)もの罰金を支払いながら企業イメージを低下させていくか、1台約1億円といわれるFCXクラリティ(タイプ5→7クレジット/台)を毎年2,230台売るか、i-MiEVクラスの電気自動車(タイプ2→3クレジット/台)をつくり、それを毎年5,200台売っていくか、どれが最も無難かといえば、これは誰が考えてもだいたい同じ結論に至るでしょう。

実際にはハイブリッド車なども全く考慮されないわけではないようですから、ここまでたくさん売る必要はないと思います。が、どちらにしてもi-MiEVクラスの電気自動車で良いのなら1台当たりの販売価格は400万円程度に収まるでしょうから、FCXクラリティとの価格差は桁違いとなります。これはそのままハードルの高さにも繋がるわけですから、電気自動車を選択するのは必然ということになってくるわけですね。

(つづく)

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