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ホンダの首脳陣は案外正直者かも (その3)

差し当たって電気自動車しか推すものがない三菱自動車の益子修社長はi-MiEVの国内発売の折に「2010年代半ばまでに顧客の負担額が200万円を切るレベルを実現したい」と語っていました。あえて「顧客の負担額」と断っているのは、つまり補助金抜きではビジネスが成り立たないということの裏返しで、5年くらいでは自力で採算ベース乗せることなど不可能であると暗に認めているだけ正直だったと思います。

ホンダはご存じのようにハイブリッド車を採算ベースに乗せており、燃料電池車にも熱心ですから、先進性をアピールする道具としての電気自動車など必要ないでしょう。伊東社長の「現実にはほかの課題もある。米カリフォルニア州の法規制だ」という言葉や、北条取締役の電気自動車で「採算は取れない」という発言も、現実をありのままに伝えたものに違いありません。そうでなければ、こんなマイナスイメージに繋がりかねないことは言わないでしょう。

ホンダの福井前社長は「バッテリー嫌い」などとも言われており、「500km以上走れないクルマはクルマじゃない」というような発言で電気自動車に対してかなり否定的でした。プラグインハイブリッドにも消極的だった福井前社長は、それゆえプリウスのような2モーター式ではなく、ガソリンエンジンを主役としてそれをアシストする1モーター式のハイブリッドシステムに拘りがあったのかも知れません。

現在の伊東社長は電気自動車の発売を決めた方針転換について「私はそれほどでもない」と述べ、福井前社長ほど電気自動車やプラグインハイブリッド車に否定的ではないことを公言しました。とはいえ、現実問題として電気自動車の実用性が低いのは明らかですし、三菱の益子社長もビジネス面では自立できる段階にないことを認めているくらいですから、今後もホンダの軸足がハイブリッド車に置かれるのは間違いありません。

7月20日の会見でホンダが「いまは生産全体の5~6%だが、2014年にかけてHVのラインアップを増やし 、2015年には10%以上にしていく」と発表したのもそれゆえでしょう。彼らは既存車種のモデルチェンジに伴ってハイブリッド仕様を追加し、そのラインナップを拡充しながら生産比率を上げていく方向で考えているわけですね。

プリウスのようにパワートレーンの構成そのものが普通のガソリンエンジンだけで走るクルマとは大きく異なっていると、こうした展開は難しいでしょう。が、ホンダの簡易的なシステムはフライホイールを薄型モーターに差し替え、トランスミッション以下のコンポーネンツも従来のものを応用できるレトロフィットに近いものであるゆえ、既存車種への展開が比較的容易に行えるようです。

こうしたシステムなら生産面でのハードルも決して高くないハズですから、今後5年で10%以上という数字はむしろ謙虚であるように感じます。もしかしたら、これはインサイトの販売実績が物語っているように、ただ作っただけで売れるとは限らないということを痛いほど思い知らされたからかも知れません。そう考えれば、この5ヶ年計画はかなり堅実なものと理解できます。

そこへいきますと、2020年には世界の自動車需要の10%が電気自動車になると豪語し、プリウスでさえ12年以上かかった年産50万台規模を電気自動車で2012年までに実現させる計画だと吹聴している日産のゴーン社長は、もはやペテン師に近いというのが私の個人的な印象です。日産とルノー合わせて年産50万台ということは、両社が生産する乗用車の8%以上が電気自動車になるということを意味します。

同じく電気自動車を推す三菱は「2020年までに当社の生産台数の20%を電気自動車、およびプラグイン・ハイブリッド車にする」と計画しており、ホンダのハイブリッド車倍増5ヶ年計画より遙かに野心的ですが、その三菱と見比べても日産とルノーの2年で8%強という電気自動車の生産計画は突飛すぎます。

ゴーン社長はこのように無謀ともいうべき大袈裟な数字を振りかざして電気自動車推進を唱えてきました。その一方でハイブリッド車は「世界需要の2%に過ぎないニッチ商品」などいう詭弁で散々扱き下ろし、またハイブリッド車では「地球温暖化問題の根本的な解決にはならない」といった旨も度々述べてきました。

そこまでハイブリッド車を悪し様に言うのなら何故フーガを電気自動車仕様ではなくハイブリッド仕様で発売するのか大いに疑問です。要するに、都合の良いことだけ言いたいように言っている独善者ということなのでしょう。

こうしたゴーン社長の発言を日本のメディアの多くは全般的な状況などに照らして妥当なものなのか否か検討もせず、大いなる期待感と共に伝えてきました。が、事情が解っている業界関係者はもちろん、欧米のメディアにも冷ややかな反応は少なくないようです。

例えば、メールマガジン『自動車ニュース&コラム』9月13日号の日替わりコラム「電気自動車を作る意味って?」(寄稿者はアメリカ在住の元自動車エンジニアの方)によりますと、アメリカの自動車雑誌に「どんな流れでリーフができたか」という主題の記事があったそうで、44%が「カルロス・ゴーンのエゴ」と書かれていたそうです。

昨年行われたリーフの発表会や東京モーターショーでゴーン社長は電気自動車について熱く語っていましたが、そのときから「10年で自動車の世界需要の10%が電気自動車になるなどという数字は何を根拠にしているのか?」といった疑問をはじめとして、業界内では懐疑的な声で溢れていました。そうした声に対してゴーン社長は「これは地球を守るということだ。我々が最初から懐疑的であれば、何も実現しない」などと宗教的とも取れるようなスタンスで反論する始末です。

広げてしまった風呂敷があまりにも巨大すぎたため、もはや自分でこれを畳むことが出来ない状況に陥ってしまい、完全に開き直ってしまったようにも見えます。そうした彼の発言に疑いの声が上がると、彼は子供のようにムキになり、さらに意固地になっていくというスパイラルに陥っているようにさえ見えます。

先月、フジテレビの『LIVE2010ニュースJAPAN』で「EVが拓く“エコカーの未来”」という特集が放送されましたが、そのインタビューでも彼の暴走はとどまるところを知らないといった感じでした。

「我々は、EVに関するすべてに携わる唯一の会社なのです。政府や街にどのようにインフラを構築すべきか、消費を促す補助金システムがつくれるか、EVに興味を持っている世界の街に指標を提供することができます」「リーフは大成功するだろう。バッテリーや車本体も機能が向上し、コストもどんどん下がっていくだろう。EVは今、長い物語の始まりに立ったにすぎないのです」

ま、電気自動車が「長い物語の始まりに立ったにすぎない」という点については否定しませんが、ハナシの内容はいずれも具体性に欠けており、説得力のカケラもありません。インフラ面でもテネシー州の大都市を結ぶ幹線道路に充電ステーションを設置する計画や、イスラエルでルノーと共に例のベタープレイス社と提携したバッテリー載せ替え方式のインフラを展開する計画を発表していますが、「計画」なら何とでも言えます。

日本やアメリカで全国を網羅するような急速充電器の整備計画がなされているわけでもありませんし、現段階で特筆するような実績があるわけでもありません。「EVに興味を持っている世界の街に指標を提供することができます」というような台詞は、それなりの実績を重ねて比較的早期に採算が見込めるビジネスモデルくらいは示してからいうべきことです。

(つづく)

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