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環境問題を語る人たちは何でこんなに視野が狭いの? (その3)

環境問題に限らず、物事の実態を知るためのデータを集めるときには須く共通することですが、ごく一部の例外的な要素が全体の傾向として影響しないよう、相応の配慮が必要になります。そうした配慮が出来ていないデータは偏向している可能性を踏まえ、情報の価値として低いものだという認識を欠かすべきではありません。

例えば、私がまだ学生だった頃、とある民放の情報番組で非常に莫迦げた調査結果が報じられていました。当時は携帯電話が普及する前で、ポケットベルが携帯メッセージツールとして活躍していました。低価格化によってビジネスマンだけでなく、学生など若者の間でも普及するようになり、こうした新しいコミュニケーション手段をテーマにしたテレビドラマ『ポケベルが鳴らなくて』が日本テレビ系列で放送され、同名の主題歌もヒットしたという時代です。

で、そのお莫迦な情報番組では渋谷のセンター街で遊んでいる女子高生に片っ端から声をかけてはポケットベルを持っているかどうかを聞いていました。47都道府県を均等に調査したわけではなく、ただ渋谷のセンター街だけで声をかけて調査したのみです。結果、その番組が出した結論は「女子高生のポケベル普及率80%」というものでした。

渋谷のセンター街で遊んでいる女子高生といえば、当時もいまもその種のアイテムにはかなり敏感なハズで、特に普及し始めたばかりの時期においては全国平均とかなりのギャップがあるだろうということを予期している必要があります。が、その番組のコメンテーター諸氏は「イマドキの女子高生はみんなポケベルを持っているんですねぇ」などと驚いていました。

私は「“イマドキの女子高生”じゃなくて、“渋谷のセンター街で遊んでいる女子高生”だろ!」とブラウン管に向かって突っ込みを入れ、この莫迦な番組とそれに出演しているコメンテーター(世間一般には有識者とされているような人たちばかりでした)を嘲笑し、こんな下らない番組に付き合ってしまったことを悔いたものです。

そうした点では、かつてフジテレビ系列で放送されていた『トリビアの泉』という番組にあった「トリビアの種」というコーナーはなかなかのものでした。統計学の専門家にどのようなサンプリングを行えば信頼できる調査結果が得られるかといった助言を求め、47都道府県に跨って偏りが生じにくいような調査を行っていました。調査するネタそのものは他愛のないものばかりでしたが、それをあれだけの規模で真面目に調査するというところが逆に面白く、バラエティ番組として成功していたと思います。

一昨年に起こったクライメートゲート事件で明らかになったデータ開示拒否の問題(イーストアングリア大学のフィル・ジョーンズ氏らが作成した気候変動のグラフについて、どの観測ポイントのデータをどのように集計したのかという情報開示請求を事実上拒み、「渡すくらいなら消去する」と仲間に語ったメールが流出しました)も、まさにこうしたデータの偏りがあったのではないかと疑われました。開示を拒否したのは持説に都合の良い数字ばかりを寄せ集めたからではないかということ強く匂わせるもので、欧米ではメディアにも大きく取り上げられ、大いに批判されたわけです。

東大の駒場キャンパス内だけで測定された浮遊粒子状物質のデータを「東京都心」のスタンダードであると誤解させるような扱い方をするのも全く同様の非常識なもので、メディアもこんな莫迦げた情報を垂れ流せば、却って読者をミスリードすることになってしまうでしょう。マトモなジャーナリズムなら、その情報の価値が明確に伝わるよう、調査の前提条件なども省略せず、受け手が公正に判断できるような材料は一通り整えておくべきです。

私はそこからさらに踏み込んで、東京と大阪の浮遊粒子状物質の大気濃度がどのように変化しているか調べ、グラフに纏めてみました。いずれも東京都や大阪府の公式サイト内に散らばっていた情報を集めたもので、自動車排ガス測定局(自排局)と一般大気測定局(一般局)の年平均の推移になります。

なお、測定局の数は年度によっても測定する成分の種類によっても増減しますし、測定を行っていても既定条件に満たない測定局はノーカウントになる場合もあります。平成20年度に浮遊粒子状物質を測定した東京の自排局は34、一般局は46、大阪の自排局は36、一般局は65でした。ちなみに、同年の全国では403の自排局と1422の一般局で浮遊粒子状物質が測定されていました。こういう専門的な調査は東大のアレのようにたった1箇所のデータで結論を出すような出鱈目なことはしないということです。ま、これが常識というものですが。

東京と大阪のSPM推移
国の規制は車両総重量で区分を設け、2年跨ぎで強化されることもあり、
平成10-11年規制は車両総重量12t以下が平成10年に、
12t超が平成11年に規制強化が実施されました。
内容は同等ですので、ここでは平成10年のみ表示しています。
首都圏の自治体による規制は平成15年に初めて実施された段階では七都県市、
平成18年にその基準値が30%引き上げられた段階では八都県市でしたが、
面倒なのでここでは全て現在の「九都県市」と標記しています。
平成8年以前の大阪のデータがないのは、単純に見つけられなかった
というだけで、測定はちゃんとなされていたハズです。


グラフを見ますと、大阪の減り方が東京に比べると若干緩やかな印象もありますが、東京も九都県市の規制がかかる前後を比べて減少率に違いは全くといってよいほど見出せません。九都県市が7年超の使用過程車に独自の粒子状物質排出基準を設けたことが、その削減に効果のあるものだったといえるのか、このデータを見る限り判断は不可能でしょう。

なお、大阪府は九都県市のような粒子状物質減少装置の装着を義務化していませんが、国のNOx・PM法による車種規制に準じ、その流入に制限をかける条例を設けています。といっても、国の平成10-11年規制適合車以降は対象外になりますので、現時点で10~11年以上前(猶予期間を含みます)に新規登録された古い車両のみが対象です。その絶対数はそれほど多くもないでしょうから、その効果も大したレベルではないと思います。

いずれにしても、東大が発表したような「7年で3分の1以下に減った」という状況には程遠く、東京全体でせいぜい2/3程度にしかなっていません。この2倍以上の差は東大が行った測定場所固有の環境要因が大きかったと考えるのが妥当でしょう。また、九都県市のように粒子状物質減少装置の装着を義務化していない大阪でも減少傾向に大きな差は見られませんから、その減少が自治体による取り組みの効果とした所見も妥当といえるのか大いに疑問です。

(つづく)

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